人間の各器官の重さと消費カロリーが身体全体の中で占める割合を対比させたグラフを掲げた。

 全身に血液を送り出すため、非常に活発に働き続ける心臓は、重さは0.45%であるのに消費カロリーは10.7%と1割を越えているのに対して、筋肉は重さでは4割を越えるのに消費カロリーでは16%と相対的に小さい。

 内蔵の臓器は概して心臓と同様の位置づけとなる。体重割合を消費カロリー割合で割った相対比は心臓が24と最も大きいが、脳についても重さで2.1%なのに対して、消費カロリーで16.%と相対比は8で心臓ほどではないがやはり多消費型となっている。

「知能が高いと生活するのに便利であるはずだ。どうして、他の動物もみな脳を大きくしなかったのだろうか?それは、コストの問題である。脳は維持するのに、非常に高くつく器官である。脳の重量は、ヒトの成人の体重のわずか2%しかないが、全エネルギーの16%も消費する。脳を大きくしなければ、他のもっと直接繁殖に役立つ器官に栄養をふりむけることもできよう。また、脳が大きいと難産になり、出産に長時間かかると捕食者に襲われる機会が増える、武器やシェルターなどの道具、介護者の存在などの社会的支援がないと、脳をおおきくしたら絶滅ということにもなりかねない」(西田利貞(1999)「人間性はどこから来たか−サル学からのアプローチ」京都大学学術出版会、p.242)。

 なお西田利貞(1999)によれば、ヒトの脳が進化した理由としては、道具使用や果物食と関係づける「生態仮説」とグループサイズが大きな集団内の社会関係の調節、すなわち数多くの個体間関係の認識能力と関係づける「社会仮説」とがあるという。社会仮説と関連して、類人猿が社会関係を調整する手段としている「毛づくろい」には物理的な限界がありこれに代わって言語による調整が重要となる点、また、ヒト以外の霊長類ではグループサイズが150個体を越えることはほとんどない点が指摘される。

 NHKスペシャル「人類誕生」第2回(2018年5月)では、ネアンデルタール人はサピエンスと比べ、身体的に優勢で大型動物の狩も得意、知能や言語、文化は互角。にもかかわらず、サピエンスが生き残ったのは、知能が集団を大きくする方向に発達し、その結果、便利な物や方法が集団の中で伝わりやすくなり、アトラトルという投擲器など道具使用の優位性がネアンデルタール人を上回ったためとされていた。

 この点に関して社会脳仮説のロビン・ダンバー「人類進化の謎を解き明かす」(原著2014年)を引用すると「現生人類では前頭葉と側頭葉が大きくなったのに対して、ネアンデルタール人では感覚系と後頭葉が大きくなった。この結果、現生人類は社会的認知能力が大幅に増加し、維持できる共同体の規模は劇的に36パーセント増加した。...彼ら(ネアンデルタール人)の脳は全体から見れば不釣り合いなほど視覚に特化したために、社会認知にきわめて重要なはたらきをする脳の前方領域がおろそかになったのだろうか?」。「ネアンデルタール人の共同体規模が同時代の現生人類のそれ(150人)よりかなり小さかった(ほぼ3分の2)のみならず、交易したり原材料を交換したりした距離が1桁小さかった。より広い地理的地域をカバーする大規模な社会ネットワークがあることによって、現生人類はネアンデルタール人には手の届かなかった友人の助けを借りることができ、局所的絶滅を免れたのかもしれない」。

(2018年6月2・3日収録)


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