日本近海は世界の中でも最も生物多様性に富んだ海域であることが報じられた。ここでは、Costello MJらによる米科学誌「プロスワン」の電子版の論文により、世界の各海域の生物種(真核生物)の数をグラフにした。

 独立行政法人海洋研究開発機構は2010年 8月 3日に以下のようなプレスリリースを発表し、各紙が取り上げた。

日本近海は生物多様性のホットスポット
〜全海洋生物種数の14.6%が分布〜

日本近海の総出現種数は、バクテリアから哺乳類まであわせると33,629となりました。出現種数では、軟体動物、節足動物の甲殻類が多くなっています。また、66門のうち上位10門で総種数の85%を占めました。日本近海の容積は全海洋の0.9%にすぎないにもかかわらず、日本近海からは全海洋生物種数約23万種の14.6%が出現することがわかりました。これは世界的に見ても高い種多様性であり、日本近海は生物多様性のホットスポットであることが具体的な数値で示されました。日本近海の種多様性が高い理由は、地形、水深帯、水温、潮流、気候区分など環境が多様なことに起因すると思われます。 (日本からの米科学誌「プロスワン」電子版への発表論文

 新聞各紙は、日本近海の海洋生物の種数は世界1と報じた。「調査は各海域ごとに集計され、日本近海は26エリア中1位。ただ、バクテリアなどをのぞき、細胞核を持つ真核生物だけでみるとオーストラリア近海がわずかな差でトップになった。」(時事ドットコム8月3日)

 図録は真核生物のものなので日本の排他的経済水域EEZは、オーストラリアに次ぐ第2位となっている(もっとも差はほとんどない)。またインド洋の種数の記載がない。世界的に見て、アジア・オセアニア地域の海域は、全体として、最も生物多様性に富んでいることが分かる。日本と隣接する中国EEZの種数は日本、オーストラリアに次ぐ多さになっており、また中国、韓国のEEZの面積当たりの種数は世界で最も多くなっている。

 日本近海(EEZ)の種数が豊富なのは、南北に長い海域で気候条件、海底地形が多様、また南からの暖流である黒潮や北からの寒流である千島海流(親潮)が海域外から流れ込み、相互作用が加わって生物環境の複雑さを増しているからである。

 親潮域やオホーツク海がプランクトンに富み、世界でも有数な漁場となっている理由として、最近の研究は、アムール川が運ぶ大量の鉄分が運ばれてくるからだということを明らかにした( NHKスペシャル「日本列島」プロジェクト編「NHKスペシャル 日本列島 奇跡の大自然 」NHK出版、2011年)。鉄はアムール川流域に広がる湿地に主な起源を有し、アムール川河口から流れ出した鉄分は、凍結した海氷の下に沈み込み、南下する東カラフト海流の強い流れに運ばれ、千島列島にたまたま開いていた唯一の太平洋への深い出口であるブッソル海峡を通り抜け、親潮域へと到達し、その結果、日本沿岸にまで流れ着くという訳である。

世界の海域別真核生物の種数
海域名(NRIC regions) 海域種類 真核生物
種数
海底面積
(ku)
千ku当
たり種数
ハワイ EEZ 8,244 2,459,609 3.4
アラスカ EEZ 5,925 3,654,304 1.6
南極 海域 8,200 21,186,153 0.4
カナダ西岸 EEZ 2,636 317,363 8.3
米国カリフォルニア EEZ 10,160 1,053,172 9.6
フンボルト海流 EEZ 10,186 3,127,380 3.3
メキシコ湾 海域 15,374 1,518,057 10.1
熱帯西岸太平洋 EEZ 6,696 905,540 7.4
カナダ北極地域 EEZ 3,038 3,233,113 0.9
米国南東岸 EEZ 4,229 624,984 6.8
米国北東岸 EEZ 5,045 692,073 7.3
カナダ東岸 EEZ 3,160 823,799 3.8
カリブ海 海域 12,046 2,828,125 4.3
南米熱帯東岸大西洋 EEZ 2,743 604,068 4.5
パタゴニア大陸棚 EEZ 3,776 2,693,614 1.4
ブラジル大陸棚 EEZ 9,101 2,520,420 3.6
大西洋ヨーロッパ 複合海域 12,270 3,572,655 3.4
バルチック海 複合海域 5,865 411,218 14.3
地中海 複合海域 16,848 2,451,059 6.9
南アフリカ EEZ 12,915 846,463 15.3
中国 EEZ 22,365 831,966 26.9
韓国 EEZ 9,900 306,674 32.3
日本 EEZ 32,777 3,970,743 8.3
オーストラリア EEZ 32,889 6,819,501 4.8
ニュージーランド EEZ 12,780 4,073,895 3.1
(資料)Costello MJ, Coll M, Danovaro R, Halpin P, Ojaveer H, et al. (2010) A Census of Marine Biodiversity Knowledge, Resources, and Future Challenges. PLoS ONE 5(8): e12110.

 なお、日本における植生の豊かさについては、図録4337参照。

(2010年10月12日収録、2011年3月29日アムール川からの鉄分の流れのコメント追加)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 環境・災害
テーマ  
図録書籍 図書案内




既刊第1弾


既刊第2弾
アマゾン検索

 
(ここからの購入による紹介料を通じたサイト支援にご協力下さい)