統計数理研究所によって「日本人の国民性調査」が1953年以来、5年ごとに戦後継続的に行われている(同じ問を継続しているが問によっては必ずしも毎回聞いている訳ではない)。長期的な日本人の意識変化を見るためには貴重な調査である。この調査はすべて、全国の20歳以上(ただし2003年〜08年は80歳未満、2013年は85歳未満)の男女個人を調査対象とした標本調査である。各回とも層化多段無作為抽出法で標本を抽出し、個別面接聴取法で実施されている。2013年調査は10〜12月に行われ、回答者は、この問に関しては1,591人だった(回収率49%)。

 ここでは、日本人の自然観がどのように推移してきたかを見る。

 質問は、人間が幸福になるためには「自然に従わなければならない」か、「自然を利用しなければならない」か、「自然を征服してゆかなければならない」か、というものである。

 現在は「自然に従う派」が48%と半数を占めており、「自然を利用」派は41%、「自然を征服」派は6%と少ない。

 1953年からの変化をみると、利用派の割合は4割程度で変わらない一方で、征服派が減って、従う派が増えるという変化を辿ってきている。

 征服派は戦後すぐには2割強とそう多くはなかったが、経済の高度成長期には増大し、34%にまで達した。ところが、1973年には、2割以下へと急落したのが目立っている。その後も征服派の割合は低落し続けた。

 1968〜73年の大変化は公害問題が1970年前後にマスコミでも連日大きく取り上げられ、70年11月には公害国会(公害対策基本法における経済との調和条項の削除など14法案すべて可決)が開かれるなど爆発的な一大社会問題となったためである。1971年の環境庁(現環境省)発足の影響、1971年〜72年に新潟水俣病、四日市公害、富山県イタイイタイ病、熊本水俣病といういわゆる四大公害裁判の判決が続いた影響もある。自然を征服しようというのは人間のおごりではないかという考え方が急速に広がった訳である。

 一方、自然に従う派は公害問題を契機に増加したが、その後も、特定の企業等がひきおこす公害問題から大気汚染、水質悪化など国民生活一般がひきおこす環境問題、そしてそれがグローバルな温暖化につながるという地球環境問題へと自然との関わりについての人間の課題が深化・拡大するに伴って、さらに増加してきたのである。近年のいわゆるエコ・ブームもこうした長期傾向を背景としていることはいうまでもなかろう。

 なお、「自然との共存」か「自然の支配」かという国際アンケートでは、日本は他国と比べて最も「自然との共存」が多く、(図録9490参照)、これが日本人の自然観の特徴となっている。これまでふれたように、日本人も高度成長期の後半には、経済の成功につられて欧米型の自然観に近づいた時期もあったがその後従来の姿勢に戻ったということができよう。

(2010年3月13日収録、2014年10月31日更新)


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