日本のチョウ(蝶、蝶々)のうちの代表的な種を図示した。掲載したチョウの特徴は以下の通りである。

日本の蝶
名称 特徴
モンシロチョウ 身近な蝶の代表。幼虫はアブラナ科の植物(キャベツなど)だけをひたすら食べる。蛹の体液から「ピエリシン」という物質が見つかった。がん細胞を死滅させる作用があり、新しい抗がん剤の開発に向けた研究が続いている
キタキチョウ 成虫で越冬するため、春早くから見かける。冬は葉の陰などでじっとしている
ゴイシシジミ 国内のチョウの中で唯一、幼虫が完全な肉食性。ササにつくアブラムシを食べて成虫になる
ミドリシジミ 森の宝石。ミドリシジミの仲間は「ゼフィルス(そよ風の妖精)」と呼ばれる。近年は、豊かな自然の証しとして注目を集めている
ベニシジミ 30円普通切手の意匠となっているチョウ
ヤマトシジミ 幼虫がカタバミを食草としているので、主に平地の道端や耕作地周辺に生息し、人家周辺でよく見られる
アゲハ アゲハチョウの仲間は決まったルート(蝶道)を周遊する。幼虫の食草や蜜を吸う花などを通ることが多いとされている。幼虫はミカン科の植物だけをひたすら食べる。ようやく成虫になってもアゲハの寿命は約2週間
アオスジアゲハ 湿った地面などで集団で吸水しているチョウ。オスがほとんどで、ナトリウムやアンモニアを摂取して繁殖行動に役立てるという説がある
ギフチョウ 岐阜県祖師野村(現・下呂市)で発見されたため、この名が付けられた。発見したのは、名和昆虫博物館(岐阜市)の初代館長。春先に姿を現すため、「春の女神」と称される
オオムラサキ 日本の国蝶。チョウといえば花の蜜を吸っているイメージが強いが、実は樹液を”主食”とする種もいる。中でもオオムラサキはカナブンや蜂にも物怖じしない
アサギマダラ 海を越えて1000〜2000キロを旅する。マーキング調査が各地で行われている
ヒメウラナミジャノメ ギリシャ神話の神で100の目を持つ巨人アルゴスに由来する学名をもつ。ひときわ目立つ金環の付いた蛇の目紋をもつ
(資料)東京新聞大図解「チョウ」2014年4月27日ほか

 チョウとガはいずれもチョウ目に含まれており、チョウは昼間に飛び、ガの多くは夜間に活動するとされている。またチョウは翅を閉じてとまり、ガは開いてとまるともいわれる。こうした差はすべて便宜的なものであって画然と区別することはできない。たとえば翅を開いてとまるチョウも少なくないし,昼間飛び回り花のみつを吸いにくるガも多い。

 国内にチョウは約240種、ガは6000種が生息している。チョウは日本人を取り巻く自然の中の代表的な生き物のひとつとして親しまれている。最近では、チョウは他の動植物と比較して環境の変化の影響がいち早くあらわれることから自然の状態がどれほど失われてきているかの指標生物となっている。

 蝶には花から花へと飛び、みつを吸ってまわる華やかで気まぐれな存在というイメージがある(フランス語のパピヨンにはこうした含意)。また、どこからか急に現れ、ヒラヒラと舞う姿がこの世のものでない精霊や死者の霊が化したものであるかのように感じられることがある。中国の「荘子」に魂が蝶となって夢の中で遊んだ話があるのもこうした感覚にもとづいていると考えられる。日本では蝶が和歌に詠まれることは案外少なかったが、これは死者霊を想起させ不吉だからという説もある(丸谷才一)。蝶の読みの「ちょう」は音読みであり、訓にあたる読みはない。「かはひらこ」という和語があったが消えてしまった。

 江戸時代になると、荘子の胡蝶の夢の話がことに好まれ、夢から覚めた感覚をあらわす次のような俳句がよまれた。蝶は春の季語である。

 雪隠せっちんを出れば驚く小蝶哉 蕪村
 島原の草履にちかき小蝶哉  〃

 ここで島原とは京の遊廓のことであり、島原からの帰りに草履をはくとき、そこで遊んだ時間が夢のように感じらるという訳である。蕪村には、さらに、こうした感覚に加えて、蝶とはかけ離れた存在との対比が印象的な名句がある。

 伏勢ふせぜいしころにとまる胡蝶哉 蕪村
          *錣(しころ):兜から垂れた覆い
 釣鐘にとまりてねむるこてふ哉  〃

 さらにこうした想念をすべて含み込んだ次のような句もある。

 うつゝなきつまみごゝろの胡蝶哉 蕪村

 なお、蕪村俳句の季語ランキングについては図録3990a参照。

(2014年4月30日収録、2016年1月18日ルビ表示)


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