政府の地震調査研究推進本部の予測資料から、県庁所在地別(北海道支庁別)の大地震発生確率を図示した。ここで大地震発生確率とは、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率である。

 地震調査研究推進本部は1995年の阪神大震災が起きた後、創設された。関西で大きな地震が起こるとは思わなかったという声に応えて、注意喚起のためここで取り上げた予測地図が2005年に初めて作成された(東京新聞「こちら特報部」2016年6月18日)。2010年までは毎年更新、それ以降は活断層の評価を変更するごとに更新されている。

 従来から地震確率の低かった熊本で2016年4月に大きな地震が連続して起こり、2016年6月16日には確率0.99%の函館で震度6弱の地震が発生したことから、この地震確率はあくまで確率に過ぎない点が反省されている。日本には0%の地点はなく、そうであれば地震が全く起こらないと考えれる場所はないのである。また、地震確率の発表の効果として、地震確率の高い地域での防災への取り組み促進というより、低い地域での取り組み抑制という側面があるのではないかとも反省されている。

 なお、それぞれの確率がどの程度の確率かを判断するために、過去の地震動予測地図に参考資料として付されていた自然災害・事故等の30年発生確率の計算結果を示しておいた。

1.2017年版によるコメント

「政府の地震調査研究推進本部は27日、特定の地点が30年以内に地震に見舞われる確率を示す「全国地震動予測地図」の2017年版(1月1日時点)を公表した。建物が倒壊し始めるとされる震度6弱以上では、千葉、横浜、水戸市役所がいずれも8割を超えるなど、関東、東海から近畿、四国にかけての太平洋側が引き続き高かった。

 地図は、地震の起きやすさと地盤の揺れやすさの調査を元に作製した。30年以内の確率で、0.1%以上3%未満は「やや高い」、3%以上は「高い」とされる。昨年6月に公開された16年版と比べ、確率が全国で最も増えたのは、山口県山陽小野田市付近で、3.6ポイント増の17.1%。最も減ったのは岡山県井原市付近で、0.65ポイント減の9.56%。いずれも、中国地方の活断層を7月に再評価したデータを反映した。

 太平洋側では南海トラフ地震など海溝型地震の確率が微増。市役所の所在地でみると、千葉85%、横浜・水戸81%、高知74%、徳島72%、静岡69%の順に高かった。

 一方、熊本市役所は、熊本地震を引き起こした布田川断層帯・日奈久断層帯に依然、強い揺れを起こす恐れがある区間が残っているため、昨年と同じ7.6%だった。

 平田直・地震調査委員長(東京大教授)は「自分の所は安全だと思わず、日本はどこでも強い揺れにあう可能性が高いと考えて欲しい」と呼びかけている」(朝日新聞2017年4月28日)。

 250メートル四方ごとの確率や想定地震の内訳などはウェブサイト「地震ハザードステーションMAP」で確認できる。

大地震発生確率の高い地域   単位:%
    2016年版 2017年版
1 千葉 85 85 0
2 水戸 81 81 0
3 横浜 81 81 0
4 高知 73 74 1
5 徳島 71 72 1
6 静岡 68 69 1
7 浦河 64 65 1
8 根室 63 63 0
9 62 63 1
10 高松 61 62 1
    2016年版 2017年版
11 奈良 61 61 0
12 和歌山 57 58 1
13 大阪 55 56 1
14 大分 55 56 1
15 さいたま 55 55 0
16 甲府 48 49 1
17 釧路 46 47 1
18 東京都庁 47 47 0
19 名古屋 45 46 1
20 神戸 45 45 0
(注)(資料)同上

2.2016年版によるコメント

「政府の地震調査研究推進本部は10日、今後30年以内に強い地震に見舞われる確率を示す「全国地震動予測地図」の2016年版を発表した。建物倒壊が始まるとされる震度6弱以上の確率では、太平洋側の南海トラフ巨大地震の震源域周辺で、前回の14年版に比べ最大2ポイント程度上がった。

 確率はすべて今年1月1日時点。4月の熊本地震の被災地では被害の大きかった益城町で8%と比較的低かったが、マグニチュード(M)7.3の大地震が起きた。同本部地震調査委員長の平田直・東京大教授は「他より確率が低いといって安心できない。危険情報として考えるデータにしてほしい」と話す。

 地図は地震の起きやすさと地盤の揺れやすさの調査をもとに作製。3%以上は「高い」、0.1%から3%未満は「やや高い」とされる。南海トラフなどのプレート境界で起こる地震は内陸の活断層の地震より繰り返す間隔が短く、太平洋側の確率が高くなる。

 太平洋側では、巨大地震が起きず前回から2年経過した分、地震を引き起こす海側と陸側のプレート境界のひずみが増え、確率が上昇。静岡市で68%など確率が2ポイント高まった。

 主要都市では札幌市0.92%、仙台市5.8%、東京都47%、横浜市81%など。14年版とはプラスマイナス1ポイント以内になっている。」(朝日新聞2016年6月11日)

 2014年版からの変化としては、長野の13%から5.5%への大きな低下が目立っている。これは「活断層「糸魚川−静岡構造線断層帯」の調査結果を反映させたため、松本市周辺など長野県中部で確率が上がり、それ以外は下がった」という事情による(東京新聞2016年6月11日)。

 各地点の地震確率データの捉え方については以下の記事を参照。

「都道府県庁所在地の代表地点で最高だった千葉市の85%というと、約35年以内に1回程度の割合。ただし、85%は千葉市役所周辺の確率。市内でも数値は大きく異なる。函館市も事情は同じで、0.99%は渡島総合振興局の建物がある周辺の数値。政府地震調査研究推進本部の担当者は「震度6弱を観察した地点は3〜8%ぐらいだった」と説明した。

 250メートル四方ごとの確率や想定地震の内訳などはウェブサイト「地震ハザードステーションMAP」で確認できる。ホームページの左上の欄に知りたい場所の住所を入力すれば、その地点の情報が得られる」(東京新聞「こちら特報部」2016年6月18日)。

大地震発生確率の高い地域   単位:%
    2014年
予測
2016年
予測
1 千葉 85 85 0
2 水戸 81 81 0
3 横浜 82 81 -1
4 高知 71 73 2
5 徳島 69 71 2
6 静岡 66 68 2
7 浦河 62 64 2
8 根室 61 63 2
9 60 62 2
10 奈良 59 61 2
    2014年
予測
2016年
予測
11 高松 59 61 2
12 和歌山 55 57 2
13 さいたま 55 55 0
14 大阪 54 55 1
15 大分 54 55 1
16 甲府 50 48 -2
17 東京都庁 47 47 0
18 釧路 45 46 1
19 名古屋 44 45 1
20 神戸 43 45 2
(注)(資料)同上

3.2012年版によるコメント

 この予測は毎年更新されることになっているが、東日本大震災が実際に起こったことによる影響を見込むため2年ぶりの公表となった。

 基本パターンは静岡、三重がそれぞれ首位、2位である点など2010年版の予測と同じであるが、東日本大震災の影響を取り入れ、余震の可能性を考慮したため、東京で19.6%→23.2%と確率が上昇したほか、水戸市で31.3%→62.3%、千葉市63.8%→75.7%など関東地方を中心に大幅に確率が上昇した地域がある。

大地震発生確率の高い地域   単位:%
    2012年
予測
2010年
予測
1 静岡 89.7 89.8 -0.1
2 87.4 85.9 1.5
3 千葉 75.7 63.8 11.9
4 横浜 71.0 66.9 4.1
5 奈良 70.2 67.7 2.5
6 高知 66.9 63.9 3.0
7 根室 65.3 63.9 1.4
8 徳島 64.2 61.2 3.0
9 大阪 62.8 60.3 2.5
10 水戸 62.3 31.3 31.0
    2012年
予測
2010年
予測
11 甲府 55.4 55.3 0.1
12 和歌山 51.0 48.2 2.8
13 大分 50.2 48.6 1.6
14 釧路 47.3 46.3 1.0
15 名古屋 46.4 45.3 1.1
16 宮崎 45.5 45.2 0.3
17 高松 44.1 41.9 2.2
18 松山 35.7 34.2 1.5
19 さいたま 27.3 22.4 4.9
20 那覇 24.5 24.9 -0.4
(資料)地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図」(平成24年12月21日公表)

 この予測値をどう考えたらよいのかについて報告書は最後のしめくくりでこういっている。「確率論的地震動予測地図について注意が必要なのは、たとえ確率値が低くても、それは地震が起きないということを意味するものではないということである。たまたま活断層が見つかっていないなど、情報不足によって現時点では確率が低くなっているという可能性もある。また、平均活動間隔の長い活断層で発生する地震の発生確率は、地震発生直前においてさえも低い。これに加え、ある地点の地震発生確率が低かったとしても、そのような地点が沢山あれば、そのうちのどこかで地震が発生することになる。そして、ひとたび地震が発生すれば、地震の規模によっては、大きな被害が生じることになることに注意が必要である。このような、確率が低い領域における地震動ハザードをいかに表現するかについては、今後十分に検討を行う必要がある。」

4.2010年版によるコメント

 東海・東南海・南海地震は、南海トラフに沿って発生する危険性が大きい一連のプレート境界地震であるが、今後、30年以内の発生確率がそれぞれ87%、60〜70%、60%程度と予測されている(同資料)。

 図の中で発生確率が高い地域は、高い順10位までは、静岡、津、奈良、横浜、根室、高知、千葉、徳島、大阪、甲府となっているが、こうした予測には、東海・東南海・南海地震による影響が色濃くあらわれているといえよう。

 逆に最も大地震に襲われにくい都市は、県庁所在地の中では、盛岡市であり、これに福島市が続いている。北海道支庁まで含めると上川支庁が最も大地震が起こりにくい。

 もっとも2011年3月の東日本大震災では仙台、福島、水戸の震度は6弱だった。図上で他都市より確率が低いからといって地震に見舞われない訳ではない。

 30年確率といってもピンとこないので、参考までに、大地震以外の自然災害、あるい事故、病死等の30年確率を参考図に示した。

 各県庁所在都市及び北海道支庁の大地震発生確率の単純平均は、21.8%であるが、これは、30年間に交通事故で負傷する確率よりやや低い程度である。最も確率の低い県庁所在地盛岡市の大地震確率0.7%は、ほぼ、30年間に自殺してしまう確率と同等である。

 なお、参考図から分かることは、よく言われることであるが、「航空機事故で死亡する確率」は「交通事故で死亡する確率」よりずっと低い。データ的には前者の確率は後者の確率の100分の1である。

 最後に、上掲の地域別大地震確率データのもとになった「確率論的地震動予測地図」を以下に掲載する(より明解な図は、地震調査研究推進本部のホームページ)。


(2006年9月27日収録、2012年1月18日更新、12月22日更新、2016年6月11日更新、6月18日コメント追加、2017年4月28日更新)


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