駿河湾から九州沖まで延びる海溝、南海トラフではフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み、過去に巨大地震を繰り返してきた。ここを震源域とする巨大地震(東海・東南海・南海地震)について、国は今後30年間に発生する確率を60〜88%と推測している(毎日新聞2012年4月1日)。

 2003年に中央防災会議がM8.8の想定で被害を予測したが、津波は最大17mだった(高知県四万十町)。2012年には内閣府の有識者検討会が震源域を従来の東海、東南海、南海に加えて宮崎沖日向灘を加え約2倍、地震の規模を約3倍のM9.1として、各地の津波の最大の高さ(満潮時)を予測した(3月31日公表)。その後、同じ前提で、再度、津波の高さ(満潮時)の予測を見直すとともに浸水域、津波到達時間、物的被害、人的被害(死亡者数)についての予測も行った(8月29日公表)。これらは「最悪32万人死亡」と報じられて国民の大きな関心を呼んだ。

 今回の発表は3月時点の発表の反省にたっている。「3月末、6都県23市町村で20メートル超などとする津波高が公表された際の地元の反応は、国の予想以上にネガティブだった。(中略)住民には避難を諦めるような言動が出始める地域もあり、高知県では地下シェルター建設の議論さえ起こった。(中略)3月の公表では、局所的に最高となる地点を各自治体の津波の高さとして小数第1位まで明示。これによって、その高さの津波が次の地震で必ず起こり沿岸全域を襲うとの誤解を招いた。(中略)今回の予想津波高を1メートル単位としたのは、こうした意見を受けたものだ。また誤差が大きすぎるため市町村別の死者数も出さなかった。」(毎日新聞2012年8月30日)

 ここではこの8月29日公表の予測結果をグラフにした(3月31日公表資料により当初作成した図録の更新)。冒頭に各都道府県の最大津波と原発所在地の最大津波の高さグラフを掲げ、次に、これの元となった全市区町村の最大津波高さ想定の分布グラフを掲げた。2つのグラフを比べれば、各都道府県の最大津波がその地域で一般的なのか、それとも例外的なのかが判断できる。

 資料は内閣府報道発表資料「南海トラフの巨大地震に関する津波高、浸水域、被害想定の公表について」である。死者数の最大想定については図録4384参照。

 津波の高さは高知県土佐清水市及び黒潮町で34mと最大となり、高知県以外では、静岡県と東京都(島嶼部)で30mを越え、また愛媛県、徳島県、和歌山県、三重県、愛知県で20mを超えると予測されている。

 原発との関係では、中部電力が東京電力福島第一原発事故を受けて国が指示した緊急安全対策の一環で、海抜18m、長さ1.8キロの防波堤を年内完成を目指して建設中であるが、想定ではこの防波堤を更に1m以上(第1次予測では3m以上)上回る高さの津波が襲う可能性があるとされている。また周辺域の浸水が住民非難の妨げになる点も指摘されている(毎日新聞2012年8月29日)。

 冒頭のグラフで津波の高さ(最大想定)のデータ数字を掲げた市区町村を列挙すると図の並びの順に、沖縄県名護市・国頭村、鹿児島県屋久島町、宮崎県串間市、大分県佐伯市、熊本県天草市、長崎県長崎市など4市、福岡県北九州市門司区など7区市町、高知県土佐清水市、高知県黒潮町、高知県四万十町、愛媛県伊方町、香川県さぬき市、徳島県美波町、山口県山口市など5市町、広島県広島市中区など16区市町、岡山県倉敷市・笠岡市・瀬戸内市、兵庫県南あわじ市、大阪府大阪市住之江区など6市区、和歌山県すさみ町、三重県鳥羽市、愛知県田原市、静岡県御前崎市、静岡県下田市、神奈川県鎌倉市、東京都(島嶼部)新島村、東京都(区部)中央区など5区、千葉県館山市、茨城県神栖市、茨城県東海村である。

(2012年4月2日収録、4月6日(表題)これまで使われていた「東海・東南海・南海地震」を新聞等も使用するに至った「南海トラフ巨大地震」に変更、8月31日第1次最大想定(3月31日公表)から第2次最大想定(8月29日公表)に変更)



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