1.はじめに

 日本の経済成長率(実質GDPの伸び率)に関して、需要項目別寄与度の推移を示した。データは内閣府のSNAページによっており、具体的な数値についてはこちらを参照されたい。

 GDP(経済規模)は生産と支出と分配の3つの側面から計測されている(三面等価といって、この3つの合計は一致するものとされる)。支出面をあらわしたのが需要項目別GDPである。

 GDPを計算する場合、支出面のデータが早期に得られやすいことと短期変動の場合は支出面からの影響が大きいので経済変動の分析では、需要項目別GDPがまず着眼される(ニュースでもこれが大きく取り上げられる)。

 寄与度とは、実質GDPの伸びに占める最終消費(家計消費が中心)、民間総資本形成(住宅、企業設備、在庫への投資)、公的需要(公共事業など)、外需(輸出マイナス輸入)などの伸びの割合を示すものであり、寄与率がGDPの伸びを100%とした時の比率であるのに対して、寄与度はGDPの伸びを成長率そのものとした時の比率である。従って各需要項目の寄与度の合計は成長率に一致する。

 輸出の伸びはGDPの伸びとなるが、輸入が同じ額だけ伸びるとGDPに対しては中立となる。外需の伸びは輸出が輸入を上回って伸びていることをあらわす。

2.年次推移

 毎年の経済成長率の需要項目別寄与度をあらわした上の第2図を見ると、オイルショック後の1974年の成長率の落ち込みは最終消費がゼロとなり、民間投資や公的需要がマイナスとなって生じており、外需はむしろプラスであった。バブル経済崩壊後の1992〜93年の落ち込みの場合は民間投資の落ち込みが大きく、やはり外需はむしろプラスであった。1998年の落ち込みも同様である(この時は最終消費の落ち込みがきいた)。ところが、リーマンショック後の2009年の大きな落ち込みは輸出の大きなマイナス(輸入の減少を控除した外需のマイナス)の影響が大きい点がこれまでにない特徴となっている。2011〜12年も欧州債務危機と円高、及び原発停止による天然ガス等の輸入増により同様のパターンとなっている。

 2014年のゼロ成長は消費税上げによる民間最終消費支出の落ち込みが主因であることが分る。消費税上げは4月からなので前年度の駆け込み需要もあって年度ベース(図録4400)と異なりここで見ている暦年ベースではぎりぎりマイナスではない。

 2015年には円安効果で輸入が減ったため、輸出は前年より減ったが外需寄与度はプラスの0.5%と改善され、設備投資と在庫のプラス寄与もあったので企業活動的にはプラスだったのだが、巷間の説の通り賃金の伸びが弱いことなどから消費税のマイナス効果が消えた後も民間最終消費支出は寄与度がマイナスとなり、このため、全体でも1.4%の伸びに止まった。

 2016年、2017年は1.0%、1.7%と低空飛行ながらプラスが継続している。

 官公需は2003年からマイナスの寄与度を続けていたが、2009年以降には大型経済対策の影響もあってプラスとなった(図録50905165参照)。

3.四半期推移

「内閣府が8日発表した1〜3月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.2%減、年率換算で0.6%減となり、速報値と変わらなかった。マイナス成長は9四半期(2年3カ月)ぶり。先月発表の速報値で前期比0.001%減だった個人消費は0.1%減に下方修正された。一方、企業の設備投資は速報値の0.1%減から0.3%増へとプラスに転じ、住宅投資も2.1%減から1.8%減に上方修正された」(毎日新聞2018年6月8日)。

「内閣府が16日発表した2018年1〜3月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.2%減、この状況が1年間続いた場合の年率換算で0.6%減だった。マイナス成長は15年10〜12月期以来、9四半期(2年3カ月)ぶり。天候不順による野菜価格高騰の影響などで個人消費が落ち込んだことに加え、好調だったアジア向け輸出が伸び悩んだことなどが響いた」(毎日新聞2018年5月16日)。

「内閣府が8日発表した2017年10〜12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.4%増、年率換算で1.6%増となり、8四半期連続のプラス成長を維持した。速報値の年率0.5%増から上方修正された。内訳は、企業の設備投資が速報値の0.7%増から、1.0%増に上方修正された。個人消費は0.5%増で、速報値と変わらなかった」(毎日新聞2018年3月8日)。

「内閣府が14日に発表した2017年10〜12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.1%増、この状況が1年間続いた場合の年率換算で0.5%増だった。プラス成長は8四半期連続で、1986年4〜6月期から89年1〜3月期まで12四半期連続のプラス以来、28年9カ月ぶりの長さとなった。前期(7〜9月期、0.6%)から伸びは鈍ったものの、個人消費が回復したほか、企業の設備投資が堅調だった。(中略)17年の実質GDP成長率は前年比1.6%、名目成長率は1.4%とそれぞれ6年連続のプラスだった。名目GDPは546兆円となり、過去最大を更新した」(毎日新聞2018年2月14日)。

「内閣府が8日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算で2.5%増となり、7四半期連続のプラス成長を維持した。設備投資の伸びや在庫の積み増しを反映し、速報値の年率1.4%増から上方修正された。4〜6月期の2.9%増から伸びは鈍化した。7四半期連続のプラス成長は、現在の基準で比較できる1994年4〜6月期以降で初めて。速報値段階では7四半期連続成長は16年ぶりとしていたが、過去にさかのぼって季節要因などを反映させ、修正した。(中略)同時に発表された2016年度のGDP確報値は実質で前年度比1.2%増となり、速報値の1.3%増から下方修正された。名目GDPも1.0%増で、1.1%増から引き下げられた」(毎日新聞2017年12月8日夕)。

(参考)需要項目別GDPの内訳

需要項目別実質GDP
     実額(10億円)
(2000暦年連鎖価格)
ウエイト 
2009年
暦年
1980〜2009年
標準偏差
2009年
暦年値
1980〜2009年
標準偏差
国内総生産(GDP) 525,019 82,552 100.0 100.0
民間最終消費支出 304,749 45,087 58.0 54.6
  家計最終消費支出(個人消費) 298,098 43,710 56.8 52.9
同(除く持ち家の帰属家賃) 247,376 36,314 47.1 44.0
民間総資本形成 83,645 17,096 15.9 20.7
  民間住宅 13,151 3,405 2.5 4.1
民間企業設備(設備投資) 70,624 15,734 13.5 19.1
民間在庫品増加 -130 1,362 0.0 1.6
公的需要 118,498 19,255 22.6 23.3
  政府最終消費支出 98,327 17,369 18.7 21.0
公的固定資本形成(公共事業) 19,927 6,308 3.8 7.6
公的在庫品増加 244 855 0.0 1.0
財貨・サービス純輸出(外需) 16,137 6,778 3.1 8.2
  輸出 67,680 19,250 12.9 23.3
輸入 51,544 14,312 9.8 17.3
(注)暦年実額のウエイトは構成比であり合計が100となるが、標準偏差のウエイトはGDPの変動幅と比較してどのくらいかを表示しているのみであり、内訳の合計が100となるような性格のものではない。
(資料)内閣府SNAサイト(2010年4-6月期 1次速報値 <2010年8月16日公表>)

 GDPの需要項目別内訳としては、民間最終消費支出、その中でも個人消費が6割近くを占め大きくなっている。次ぎに公的需要が約2割、民間総資本形成が15%で続いている。公的需要は政府最終消費が大きいが公共事業もかなりある。民間総資本形成の中では設備投資が多くを占める。輸出、輸入は1割前後を占めるが前者から後者を引いた外需は3%に過ぎない。

 景気変動に占める需要項目の重要性は、実額のウェイトだけでは判断できない。各項目が大きく変動するような項目であるかどうかも重要である。上表では標準偏差が毎年のバラツキ(変動幅)の平均を示している。実額と標準偏差のウエイトを比較すると個人消費より設備投資や公共事業、外需の変動幅が大きいことがうかがわれる。これらは景気判断上は重要な項目といえる。

(2010年8月16日収録、8月17日四半期動向を対前年同期比から通常取り上げられることが多い対前期比(年率換算)へ変更、8月18日参考追加、9月10日、11月15日、12月9日更新、2011年2月14日・15日、3月10日、5月19日、6月10日、8月16日、9月9日、11月14日、12月11日、2012年2月13日、3月8日、5月18日、6月8日、8月13日、9月11日、11月12日、12月10日更新、2013年2月14日、3月8日、5月16日、6月10日、8月12日、9月9日、11月15日、12月9日更新、2014年2月17日、3月10日、5月15日、8月13日、9月8日、11月17日、12月8日更新、2015年2月16日、5月20日、6月8日、8月17日、9月9日、11月16日、12月8日更新、2016年2月15日、3月8日、5月18日、6月8日、8月15日、9月9日、11月14日、12月9日更新、2017年2月14日更新、3月6日<iframe>をページ内に統合、3月9日、5月18日、6月8日、8月14日、9月9日、11月15・16日、12月9日更新、2018年2月14日、3月8日、5月16日更新、6月8日更新、過去コメント削除)


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