高齢化が進んで、当初所得の所得格差が拡大しているが、所得の再分配で、実際の所得(再配分所得)の格差が如何に是正されているかを図録4667で見た。ここでは、所得の再分配が年齢間でどのように行われているかを見た図を掲げた。

 最初の図には、世帯主の年齢階層毎の当初所得と再配分所得の平均値、及び、当初所得と比較した場合の再配分所得の上回り率を再配分係数として掲げた。50歳代以下の各階層では、10%台のマイナス(負担超過)となっているのに対して、退職後の年齢である60歳以上では、再配分所得の方が多いためプラス(受給超過)となっている。しかも、60歳以上では、年齢が高いほど再配分係数は高く、高年齢ほど受給超過となっており、75歳以上だと182%、すなわち当初所得に比して、2.8倍の再配分所得となっている。稼ぎが少なくなっても、年金受給や医療・介護の現物給付などの受取が多くなるためである。

 このように若年層・中年層から高齢者層への所得移転が行われていることが明確である。

 次ぎに、年齢別の再配分係数の時系列変化の図を見ると、70歳以上では、1984年の37%から2008年の172%へと大きく増加しているのが目立つ。ところが、2011年にははじめて係数が低下した。所得の高い高齢者には少しは負担して貰おうという変化の表れだと思われる。60歳代では、やや低下気味であったのが1990年代後半から上昇傾向となっていたが2008年、11年には再度やや低下した。年金受給年齢の上昇が影響している可能性がある(60歳前半の再配分係数は2005年の21.6%から2008年、11年の7.1%、8.0%へと急落)。一方、50歳代以下の値はマイナスでほぼ横ばいとなっている。

 このように高齢者で受給率増、若年層で負担率横ばい、そして高齢者比率は上昇であるから、年齢平均(総数)の再分配係数は1993年まではほぼプラスマイナスゼロだったのが、1996年以降は上昇傾向となっている。すなわち、個人税収、社会保険料以外の財源(消費税、国債など)で高齢者の再配分所得が確保されている状況がますます鮮明となりつつある。その後、2008年に一時低下したが、11年には再度上昇した。

 年齢間の所得の再配分の程度が同じであっても、高齢者層の比率が多くなれば、全体としての再配分比率は多くなる。実態は、高齢者比率の上昇ばかりでなく、高齢者への再配分の程度自体の上昇によっても、全体としての再配分率は上昇しているのである。高齢者の再配分係数の上昇は、高齢者層相互の所得格差の縮小(図録4665参照)に結びついており、全体としての所得格差の縮小にもつながっていると考えられる(図録4663参照)。

 これでは、国の財政収支の不均衡は止めなくなるということで、2004年年金改革によって年金受給が物価スライド方式からマクロ経済スライド方式へ転換され、給付水準の抑制が図られることになり、また2006医療制度改革では所得のある高齢者の医療費自己負担の増が図られた。

 高齢者への再配分所得のうち、国の借金でまかなわれている分は、将来の就業年齢層がいずれ負担することとなるので、年齢間の負担と給付の不公平感を高じさせる(図録2910参照)。しかも高齢者の資産は若年層に比して、非常に多いのである(図録4690参照)。世代間の負担と給付のバランスをとる社会保障の抜本改革が急がれる。社会保障の充実自体が少子化を促進し、世代間の負担と給付のバランスを将来に向けますます悪くするいるとしたら(図録1586参照)、家族政策・子育て対策を含めた社会保障の抜本改革がなおさら求められているといえる。

(2006年4月14日収録、2007年10月9日更新、2010年9月27日更新、2013年10月11日更新、2016年9月15日更新)


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