世界的な原油・穀物高騰の影響、そしてその後の世界的な金融不安や景気後退の影響で物価の変動が世界規模での関心事となっていることから主要国の消費者物価指数の動きを比較することにする(物価の長期推移については図録4730参照)。

 比較対象としているのは、日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリア、中国、韓国の9カ国である。

 国際的な物価動向は、2013年上半期までは、3つのグループに分けられていた。@3%前後の高い物価上昇が続く英国、中国(2010〜11年頃に比べれば低い水準だが)、A上昇率1〜2%程度の中位的な動きの米国及びユーロ圏、Bデフレ傾向からなかなか脱却できない日本、である。

 日本が特異なのは、このようにインフレでない点では物価の優等生、デフレである点では物価の劣等生であることであった。資本主義経済システムが共通であるのにこのように日本だけ特異であるからには、通貨当局の日本銀行のパフォーマンスの特異さによっているとされたのも無理はない。

 ところが2013年9月以降にはついに日本も世界全体の水準並みあるいはそれを凌駕する水準となったことが図からうかがえる。デフレ脱却を目指した日銀の異次元緩和によるアベノミクスの効果があらわれたといえよう。

 また消費税増税の影響で2014年4月以降には他国を上回る上昇となったが、消費税増税の影響が消えた2015年4月以降は他国並み、あるいはその中でも最低水準となった。アベノミクスの効果も途切れたといえよう。ただし、以前のように、他国の水準からかけ離れた低水準と言う状況はなお脱しているままなので、効果が続いているともいえる。

(2011年6月の中国の物価上昇)

 東京新聞の上海からの情報によれば、中国の2011年6月の消費者物価上昇率は「3年ぶりの高水準となる前年同月比6.4%だった。最大の要因は豚肉の高騰。中華料理に欠かせない食材とあって、生活への影響が広がっている。今春、子豚に疫病が広がり、豚肉が品薄になった。高騰を見越した生産者が売り惜しみ、投機筋は買い占めに走った。流通量が激減した豚肉の価格は5月に40%、6月に57%上がった。6月のCPI上昇率6.4%のうち、1.4ポイント分が豚肉上昇によるものだ。中国政府によると、6月最終週の卸値は1キロ約24元(約300円)で、前年同期のほぼ2倍という。

 北京と上海で約20店を展開する老舗の上海料理レストランは今月、名物「豚角煮」の値上げに踏み切った。一人前58元(約700円)を、68元に上げた。責任者は「使う食材の総量の2〜3割が豚肉で、影響は深刻。値上げしたが、まだ赤字だ」と話す。日本のガイドブックで紹介されている有名店も、豚肉メニューの一人前の量を減らすなど、実質的な値上げに踏み切っている。

 食肉業者がひしめく上海市農産物市場では春先以降、流通する豚肉が半減した。豚肉店主の一人は「流通量が減ったが、一般家庭の買い控えも進み、逆に在庫を抱えている店が多い。政府は対策を急ぐべきだ」と話す。8日に市場を訪れた女性は、2カ月ぶりに買ったという好物の豚足を手に「月給二千元は据え置かれたままなのに、食品の値上げは止まらない」と不満をこぼした。
」(東京新聞2011.7.10)

 この物価上昇が中国国内で大問題だったことは図録8204参照。

(2007年頃からの推移)

 日本では2007年秋以降消費者物価が上昇しはじめたが、他の主要国でも、もとから上昇率の高かった英国を除くと、いずれの国も同時期あるいは前後して消費者物価がじりじりと上昇をはじめていた。国際的な原油高騰、穀物高騰の影響が出ていたと言えよう。

 消費者物価指数の上昇率の水準自体では日本の上昇率は他の主要国と比べると低いことがまず目立っている。2008年の夏頃を取り上げると、物価上昇率が高い水準にある中国は別格としても多くの国が3〜6%となっていたのに対して日本は2%前後であった。

 しかし、08年8月以降は、米国など連続して上昇率が低下している国が多く、中国なども一時期の高い水準から大きく上昇率が低下し、9月のリーマン・ブラザーズ破綻など世界的な金融不安・景気後退の影響が大きく出た。特に米国はデフレ的状況が著しく、08年12月には、ついに日本よりも物価上昇率が低くなった。また中国では09年2月には大きくマイナスとなった。09年3月には米英日中が揃って物価低下に転じている。世界全体で景気低迷の影響が物価動向にあらわれていたといえる。

 2009年8月以降は、それまでと一変して、対前年同月比が各国一斉に上昇に転じており、世界的な景気低落も底を打った感があったが、2010年にはいると、ギリシャ、アイルランドの財政危機などの影響でユーロ圏諸国を中心に再度対前年同月比は低下傾向となり、最近は横這いとなっている。

 一方、ユーロ圏以外の英国、中国、韓国では、インフレが続いている。2010年の年末、中国の複数の投稿サイトでは今年を象徴する漢字として物価上昇を示す「漲」が選ばれたという(東京新聞2010.12.28)。

 2011年4月には久しぶりにプラスとなったものの、09年8月以降の日本の動きは世界的な動きと比べてかなり低水準であり、再度、かねてからの日本の相対的に低い物価増減率水準が表面化してきている。こうした意味で日本ではデフレからの脱却が困難だと判断される材料の1つとなっている。

(2008年7月3日収録、7/25・8/29・9/26・10/31・11/20・12/26更新、2009年1/30・2/27・3/28・5/1・6/1・6/26・7/31・8/29・9/29・10/30・11/27・12/25更新、2010年1/29・2/26・3/26・4/30・5/28・6/25・7/30・8/27・10/1・10/29・11/26・12/28更新、2011年1/28・2/25・3/25・4/28・5/27・7/1・7/29・8/26・9/30・10/28・11/25・12/28更新、2012年1/27・3/2・3/30・4/27・5/25・6/29・7/27・8/31・9/28・10/29・11/30・12/28更新、2013年1/31・3/1・3/29・4/26・5/31・6/29・7/26・8/30・9/27・10/25・11/29・12/27更新、2014年1/31・2/28・3/28・4/25・5/30・6/27・7/27・8/29・9/26・12/11更新、2015年2/27・8/31・9/25更新、2016年1/29更新、8月26日2015年基準指数になってからのはじめての更新、12/27更新)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 物価
テーマ  
図録書籍 図書案内




既刊第1弾


既刊第2弾
アマゾン検索

 
(ここからの購入による紹介料を通じたサイト支援にご協力下さい)