世界的なグローバリゼーションの進展度をあらわす指標として、世界全体のGDPに占める貿易総額と海外直接投資額(FDI)をグラフにした。

 海外直接投資(FDI)の定義は世銀元資料によれば、「投資家とは異なる国で営業している企業に対する継続的な経営権の獲得(議決権付き株式の10%以上)を目指した投資(純流入)をいう。これは国際収支上のエクイティ資本、稼得の再投資、他の長短資本の合計である。」

 貿易額対GDPは1960年代の10%台前半から増加し、1980年代〜90年代前半にはほぼ18〜20%前後で推移していたが、2000年代後半には更に30%を越えた。ところが2008年秋のリーマンショック後の世界経済危機の影響は大きく、2009年には26.6%と10年前の水準に急落した。このような激しい低落は1970年以降はじめてである。その後、2010年以降は回復し、ほぼ30%前後となっている。

 直接投資対GDPも徐々に上昇していたが97年のアジア通貨危機とも関連して1990年代後半から大きく上昇することとなった。開発援助関係のデータとしてもこの点は同様である(図録0700参照)。2003年までにこうしたブームはいったん沈滞したが、その後もかつての0.5〜1.0%の水準とは比べものにならないぐらい海外直接投資の水準は大きくなっていた。2007年の水準5.2%は、やや過熱気味であり、2008年には世界金融危機に見舞われる結果となった。その結果、2008年は3.7%、2009年は2.2%にまで収縮した。その後、2010年以降は基調的には従来より高い水準を保ちながらほぼ横ばいで推移している。

 2015年は貿易規模が縮減し30%を下回った点で目立っている。これは中国経済の不振が影響しているが、世界各国の企業が現地生産を進めていることも貿易が伸びにくくなった背景とされる。実際、2015年の直接投資規模は貿易規模とは逆に前年と比較して大きく伸びている。東京新聞(2016年8月10日)によれば、ジェトロの2016年版の世界貿易投資報告では、2015年に世界貿易額(輸出ベース)が対前年比12.7%と6年ぶりに縮小に転じた点を明らかにし、この2つの要因のほか、「TPPなど大型のFTA発効が遅れていることも貿易停滞の一因となった」としている。国内供給力の増強による貿易停滞については、「中国は景気減速に加え、工業製品の内製化が進み輸入が18.4%減となった。ジェトロの石毛博行理事長は「中国の供給力が上がっている」と指摘し、対中輸出が伸びない理由として中国の生産力増強を挙げた。また日本の輸入は20.7%減、輸出は10.0%減だった。日米欧などの企業は需要がある海外現地での生産体制を既に築き上げており、自国からの輸出が増えにくい構図になっている」とされる。

 長期推移の図を見ると直接投資(現地生産)の規模が拡大した一方で貿易規模はピークを過ぎた感がある。商品のグローバリゼーションが資本のグローバリゼーションに代替されていく傾向となるのか、今後に注目したい。

 貿易規模について1820年からの長期推移を見ると(下図参照)、グローバリゼーションの歴史は一直線に拡大してきたわけではないことが分かる。戦前の世界恐慌の後、工業諸国がブロック経済を形成し保護貿易の度合いがまして、大きく世界貿易が後退した歴史があるのである。ラテンアメリカについては対GNPの貿易規模はなお戦前のレベルにまで回復していない。


 英国エコノミスト誌は、OECDの1820年以降長期世界動向レポートを参照しながら、グローバリゼーションの退潮と再興深化が世界的な格差構造にそれぞれ変化をもたらしたと論評している。「報告書によれば、1914〜70年のグローバリゼーションの退潮は、これ(国内格差の縮小)と対応している。グローバリゼーションが後退するにつれて、富裕国は内政に力を注ぐことができるようになり、貧富の差を狭めることに政策を向ける自由をより多く手にすることができた。1980年以降、再び、グローバリゼーションが拡大するにつれて、反対の状況が生まれた。報告書はこう結論づけている。「グローバリゼーションは国内の所得格差を拡大することにつながったが、同時に、それは国々の間の所得格差の縮小をもたらすことになった」」(The Economist October 4th 2014)。

(2008年3月16日更新、2009年11月13日更新、2010年7月6日更新、2011年2月25日・6月14日更新、2013年4月26日更新、貿易長期推移図追加、2014年10月14日更新、エコノミスト誌引用追加、2015年5月8日更新、2016年8月10日更新、10月6日コメント補訂、2017年4月20日既存年次データ更新)


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