国際収支統計では、経常収支は、

@貿易収支(輸出入の収支)
Aサービス収支(運賃、保険、旅行などの収支)
B第一次所得収支(投資収益など以前は所得収支と呼ばれていたもの)
C第二次所得収支(送金・仕送りなど以前は経常移転収支と呼ばれていたもの)

の四項目に分かれる。A〜Cは貿易外収支とも呼ばれる。なお、直接投資などの資本移転(資本収支)はここには含まれない。

 対米の貿易収支は基本的にプラス(出超)である。米国の対日貿易赤字は貿易摩擦の原因となったが、今では、米国の対中赤字も大きくなったので、日本だけが目立つということではなくなった。もっとも、下で触れたように、中国経由で日本の製造品を米国に輸出している側面もあるので、日本は中国を隠れ蓑にしているともいえる。

 対中の貿易収支についても、日本で見かける消費財は中国製が多くなっているが、中間財については日本から中国に多く輸出されているので、基本的にプラスとなっている。この中間財を使って中国で生産される最終製品は日本ばかりでなく米国を含む世界に輸出されるから、中国への中間財輸出は、中国から日本1国への輸出される消費財より金額が多くなるのである。もっとも、2012〜16年には、円安の影響もあって、対中赤字となっていた。

 対中貿易が対米貿易を上回って久しい点については図録5050参照。中国など世界各国の日本からの中間財輸入の割合については図録5380参照。

 貿易外収支の中では投資収益が大きいので、基本的には、貿易収支に投資収益の収支を合わせたものが経常収支となる。

 日本で稼動する米国資本の工場より米国で稼動する日本資本の工場の方が多く、日本で稼動する中国資本の工場より中国で稼動する日本資本の工場の方が多いことから分かる通り、日本の貿易外収支は、基本的にプラスとなっている。このため、対中、対米の収支は、貿易収支よりも経常収支の方がプラス幅が大きくなっている。このため、対中で貿易収支がマイナスになっていた時期でも経常収支はプラスを維持していたのである。

 貿易にせよ、投資にせよ、中国との取引は香港を経由していることが多いので、対中データは、中国と香港を合計した数字を使っている(香港からの対中投資が多い点については図録8580参照)。香港を含まないデータで対中経常収支の赤字を取り上げて、中国に経済的に圧倒されていると論じるのは誤りである。

 この点をいくら訴えてもなかなか分かってもらえなかった藻谷浩介氏のエピソードが興味深い。

「某大手出版社から久々に出す単著のあとがきに「日本は2016年、中国(+香港)から3兆円の経常収支黒字を稼いだ」と書いたところ、校閲から編集者経由で「政府統計等の裏付けを見つけられませんでしたので修正させてください」との知らせがあった。「中国+香港です。再度確認ください」と返信したら、「中国の統計(香港経由を含む)では対日赤字ですが、日本側では日本が対中赤字と言っています」と返って来た。「この校閲係は原数字を見ていないな」と気付き、財務省のホームページにある「国際収支状況」のアドレスを示して、ようやく先方の確認を得たのだ。

 それにしても「日本経済は中国に圧倒されている」という世の“イメージ”と正反対の事実を書いただけで、原数字の確認もなしに筆者の方が間違っていることにされたのは勉強になった。16年は、日本の経常収支黒字の最大の源泉は米国、2番目が中国であり、国内総生産(GDP)世界3大国の中では日本が独り勝ちだ。さらに日本は、韓国、台湾、英国、ドイツなどからも、大枚の黒字を稼ぎ出している。だがこうした事実は、「ダメな日本経済」という“イメージ”に反するからなのか、国民にまったく認識されていない」(毎日新聞2018年2月11日「時代の風」)。

(2018年2月28日収録、5月10日経常収支更新)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 貿易
テーマ  
図録書籍 図書案内




既刊第1弾


既刊第2弾
アマゾン検索

 
(ここからの購入による紹介料を通じたサイト支援にご協力下さい)