|

| このところ円相場の最高値更新が続いている。 2012年1月16日の東京外国為替市場は、米格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がフランスなどユーロ圏9カ国の国債を一斉に格下げしたことを受け、2000年12月以来11年1カ月ぶりの安値となる1ユーロ=97円02銭(気配値)まで下落した。 2011年10月31日のオセアニア(シドニー)の外国為替市場で円の対ドル相場は一時、1ドル=75円32銭と、27日のニューヨーク市場で付けた戦後最高値(75円67銭)を更新した(時事通信2011.10.31)。2011年10月27日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、日銀の追加金融緩和に対する失望感などから一時1ドル=75円67銭まで上昇し、26日にロンドン市場でつけた戦後最高値をさらに更新した。最高値は3日連続(東京新聞2011.10.28)。2011年10月21日には、ニューヨーク市場で円が急伸し、1ドル=75円78銭の円の戦後最高値を更新した(毎日新聞2011.10.22)。これらは欧州債務問題や米国の景気失速懸念を背景に比較的安全な円に資金が流入しやすい環境が続いている中での値動きによるものである。 2011年8月、欧米における財政危機を背景に、米国国債の格付けの引き下げが加わって、相対的に評価が高い円が買われ、一段と円高が進行している。米欧経済の減速懸念が一層強まる中、8月19日のニューヨーク外国為替市場は円相場が急騰し、一時1ドル=75円95銭を付け、東日本大震災直後の3月17日に付けた戦後最高値(76円25銭)を更新した。世界経済の先行き不安から、資金の逃避先として円が一気に買われたと考えられる(毎日新聞2011.8.19)。 2011年3月17日の外国為替市場(シドニー市場)で円相場が一時、1ドル=76円25銭に急伸し、戦後最高値を約16年ぶりに更新した。東日本大震災と福島原発事故とならぶトリプルパンチとされたが、18日の各国協調介入でその後戻したので大事には至っていない。震災後の急激な円高は「日本企業が外貨建て資産を売って手元の円資金を増やす」との観測を背景にした投機的な値動きだったといわれる(毎日新聞2011.3.30)。 2008年3月13日に欧州外国為替市場の円相場が米国景気の後退懸念からドル売り円買いが加速し、一時99ドル台となった(同日東京市場では一時100円02銭)。さらに08年9月のリーマン・ショック以降の国際的な金融不安、2010年のヨーロッパのギリシャ財政危機等により、日本の金融市場が相対的に安定しているため円高が進行していた。 ここで為替市場における月次(期間平均値)の円の対ドルレートを示しておく(資料はIMF, Principal Global Indicators (PGI))。第1図では2000年1月末以降の値、第2図では1973年以降の長期推移を掲げた。 図において上昇は円安、下降は円高である。 対ドルだけで円の通貨価値を測れるのか、また各国の物価水準を考慮しないまま為替レートで通貨価値を論ずるのは正しくないのではないかという考え方が当然生じる。そこで、ドルだけでなく貿易取引のある各国通貨との為替レートを総合し、かつ各国の通貨価値の変動を調整した後の実質実効為替レートが算出されている(図録5072参照)。 以下に当図録で示した円の名目上の為替レート(指数化した値)と実質実効為替レートの推移を同時に掲げた。これを見ると、日本の円は名目上は1995年水準を超え史上最高の値を示しているが、実質実効上は、かつてと比較してかなり円安の水準であることが分かる。 ![]() (2012年初の状況) 円高傾向は継続しており、ついにユーロも11年ぶりの安値となった。要因としては、@上述のような物価上昇率の違い、に加えて、A世界的に金利が低下傾向を辿る中で、もともと低かった日本との差が縮まってきており、海外投資から日本にお金がもどりつつあること、B欧州債務危機など世界的な景気低迷で日本の膨大な海外資産(対外純資産は世界一の約250兆円)からの利子・配当収入が現地で再投資されず、日本に還流してきていること、によるものとされる(東京新聞2012.1.11)。 ![]() (2008年下半期の状況) 米ドル、ユーロに加え各国の通貨価値との比較で円高の状況(対円レートの下落率の高い通貨ほど円高)を下図をみると韓国ウォンに対しては2008年の下半期4ヶ月間で38%以上の円高(ウォン安)となっている。このため、九州地方へのゴルフツアーなど韓国人の訪日はめっきり減少しているといわれる。全体的には対米ドル以上に円高になっている通貨が多い。これは、金融危機による邦銀の損失が比較的少ないため日本の円が相対的に「安全な通貨」と見なされているためといわれる。 ![]() また2002年以降の日本の景気回復を支えていた長期に渡る円安をもたらしていた「円キャリー取引」が解消されたことも、円の独歩高に拍車をかけていると考えられる。「円キャリー取引」とは金利の低い日本の円を元手に金利の高い国の通貨に変えて投資し、両者の金利差でもうける取引をさし、欧米のファンドなどがさかんに行っていたという。世界金融危機により資金の回収を急ぐファンド等がこの取引のいっせい解消に転じ海外通貨を円に変換したため、逆に、円高を加速したというわけである。 (2008年3月14日収録、4月4日更新、5月23日更新・対ユーロ追加、9/18・10/22・11/19更新、12/4日更新・各国通貨対円レート下落率図追加、2009年1/23・2/25・3/12・4/13・5/18・7/9・9/11・11/12・12/30更新、2010年3/3・5/7・6/9・7/13・8/11・9/15・10/8・12/22更新、2011年3/7更新、資料を月末値の日銀金融経済統計月報<金融1>から月間平均値のIMFデータベースに変更、4/4・5/4・6/8・7/8・8/3更新、8月11日・8月22日コメント更新、9月1日実質実効為替レートとの対比グラフを掲載、9/5・10/4更新、10/22・10/26・10/28円・10/31・11/4・12/7最高値更新記事、2012年1/5更新、1/11年初状況追加、1/15・1/17コメント更新、2/3更新) |
|
||||||||||||||||||||