2013年4月〜5月には円の実質実効為替レートが過去20数年間の最安値の水準となったので、世界中がこのデータを見ているとするとそろそろ円安傾向は止まるとも考えられる。実際、その後の推移はほぼ横ばいか反転である。

 日本円の対ドル・ユーロ為替レートの推移は図録5070に示したが、ここでは主要通貨の実効為替レートの推移、及び円の名目と実質実効の為替レート推移の対比を掲げた。

 円の対米ドル・レートだけを見ていても、円が本当に円安か円高かは分からない。すなわち、ドルに対して円とは別にレートが変動している欧州のユーロや韓国ウォン、中国元などとの貿易取引も多くなっているからである。

 そこで様々な国との為替レートを貿易取引のウエイトで総合した為替の指数が作られている。これを実効為替レートと呼ぶ。

 さらに、相手国とのインフレ度の違いが、名目の為替レートでは測れない通貨の実力の違いを生む。例えば、同じく1ドル=100円で不変であったとしても、日本ではインフレが進んでおらず米国ではインフレによってドルの価値が半分になったとしたら、日本円で半分の米国商品しか買えないのだから円の通貨価値はドルに対して実質半分になったと考えるべきであろう。実際、日本の通貨価値は長期的に米国やユーロ圏の通貨に比してインフレ度合いが低く推移してきている(図録4730参照)ので、見かけよりも円安が進んでいたのである。

 様々な通貨に対してこうした調整を行った後の実効為替レートを実質実効為替レートと呼び、調整前の値を名目実効為替レートと呼ぶ。

 データは指数で表され、指数が上昇するほど通貨の価値が高くなったこと(日本なら円高)を示している。

 実効為替レートは、各国の中央銀行(日本なら日本銀行)やBIS(国際決済銀行)が公表している。ここでは、日本円だけでなく、米国ドルやユーロ圏通貨(現在はユーロ)の実質実効為替レートを見るため、BISが公表している統計データからグラフを作成した。

 長期的な動きを日本円についてみると、1970年代から長期的に円高傾向を辿り続けた後、1995年を境に円安傾向へと転じ、リーマンショックで顕在化した世界金融危機まで円安傾向が続いていた。グラフを見ると、最近までの円安水準は、日本の円高を決定づけた1985年のプラザ合意前の程度にまで進んでいたことが分かる。2000年以降の円安は、一般には余り意識されなかった。というのもドルの実効為替レートも平行して下落しており、円の対ドル為替レートは余り変化がなかったからである(図録5070)。

 この大きな実質的円安水準は、海外と比べ極めて低い日本の金利水準と円で借金して海外通貨に替えて運用する投資行動に影響されており、産業の実力以上の円安であったとされる。このため、自動車産業を代表とする日本の輸出産業に輸出ドライブがかかり空前の好況を生んだ。ところが、昨年来の世界経済危機の影響で一気に円安から円高に転じ、また米国の消費不況の影響が重なって輸出が大きく落ち込んだため、これまで輸出産業の好調に支えられていた日本経済も大きく低迷することとなったと考えられる。

 米国ドルやユーロ圏通貨の実質実効為替レートの動きを詳しくここで解説することはできないが、日本円との関係では、米国ドルの実効レートが1990年前後までは日本円の実効レートと表裏の関係で動いていたのが、それ以降は、特にリンクがなくなり、近年では上述のように平行して低下傾向を示すまでとなった点が目立っている。かつて米国との貿易取引が中心だった時代は、対ドルの為替レートが支配的であり、またドル高やドル安の影響で円安、円高が決まっていた側面が強かったといえよう。

 近年では中国元やアジア諸国の通貨、また欧州ユーロとの関係が深まっている。2000年頃以降の円安傾向は、同時期のユーロ高傾向と表裏をなしているのが目立っている。2010年には、欧州特定国の財政危機を背景としたユーロ安が目立っており、ドルや円は逆に高くなる傾向である。その後、2013年に入るといわゆるアベノミクスで円安が進行している。

(2009年4月27日収録、9月28日更新、2010年7月30日更新、9月8日更新かつブロードベースの指数に変更、中国追加、10月23日更新、12月22日更新、2011年3月17日更新、7月20日インフレと円価値の関係の記述の誤り訂正、7月28日更新、9月1日名目と実質実効の為替レート推移対比グラフを新掲載、10月26日更新、12月7日更新、2013年1月4日更新、3月4日、6月10日、10月3日更新、2014年2/5・6/12更新)

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