(参院選勝利後安倍政権2016年8月経済対策)

 政府は2日夕、経済対策を閣議決定。リニア中央新幹線の整備を最大8年前倒しするなどのインフラ整備や、年金の受給資格の25年から10年への短縮などを盛り込んだ。安倍首相が参院選で訴えていた通りの「アベノミクスを最大限ふかす」ための中核とするため、財政投融資などを合わせた事業規模は28.1兆円に上り、過去3番目の規模。経済対策は「未来への投資を実現する経済対策」と銘打ち、国と地方の直接の歳出(真水)7.5兆円を投入する。国の支出は6.2兆円となる。複数年度の執行となり、4兆円を2016年度の2次補正予算案で、残りを17年度の予算案や特別会計で編成する。赤字国債の発行は見送り、公共事業などに使途を限る建設国債を4年ぶりに発行して財源を賄う。民間企業への融資にあたる財政投融資は6兆円を投じる(日経新聞2016.8.2夕など)。

 今回の事業規模を過去3番目としているのは2008年8月と10月の経済対策を一本化して捉えているからである。

(アベノミクス解散後安倍政権2014年12月経済対策)

 政府は12月27日の閣議で総額3.5兆円の経済対策(消費増税で冷え込んだ消費の喚起、地方経済の底上げの対策)を決定。自治体向けの交付金新設など地方の消費や生活を支援する施策が柱。実質国内総生産(GDP)を0.7%程度引き上げる効果を見込む。地方創生の5カ年計画である「総合戦略」も閣議決定し、地方で若者の雇用を30万人創出するなど2020年までの数値目標を設定した(毎日新聞2014.12.28)。

(安倍政権2013年12月消費増税による景気腰折れ防止対策)

 2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げるのに備え、経済への悪影響を緩和する総額5.5兆円の経済対策を閣議決定。財源は、2013年度の税収増2.3兆円、12年度予算の使い残し2.8兆円などで確保し、新たな国債発行はしない。消費増税の影響を緩和する給付として、市町村民税を課税されていない低所得者に1人1万円を支給する「簡素な給付措置」に3400億円、増税後の住宅購入者に最大30万円を支給する「すまい給付金」に1600億円、児童手当を1カ月分拡充して子育て世帯を支援する給付措置に1500億円を支出(毎日新聞2013.12.6)。

(安倍政権2013年1月対策)

 補正予算規模総額10.3兆円の「緊急経済対策」を1月11日に閣議決定した。第2次安倍政権が発足してわずか2週間余りのスピード策定。実質4.7兆円の公共投資。12年度1年分に匹敵する額を補正予算で新たに追加する形。新たに5.2兆円の国債発行。

(08〜09年度の緊急経済対策基金の使い残し)

 2008年度〜09年度補正予算で単年度で終わらない特定事業を実施するため設けられた都道府県などの基金の使い残しが約6割もあることが会計検査院の調査で分かった。「検査院は43都道府県の約2500基金を調査。10年度末時点で、基金を取り崩した額を国からの交付額で割った執行率は、08年度に設けた基金で47.8%、09年度の基金は32.4%、計約3兆4千億円のうち、使われたのは約1兆4千億円だった。」(東京新聞2011.10.18)「主な事業では、地域医療再生事業12%▽社会福祉施設耐震化事業28%▽高校生修学支援事業31%▽緊急雇用創出事業45%−−しか使われていなかった。」(毎日新聞2011.11.17)

(菅政権2010年10月対策)

 菅政権は2010年10月8日に「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」のステップ2として2010年度補正予算案に盛り込む「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を公表した。

 内容は新成長戦略、雇用対策もあるが、地方自治体によるインフラ整備などを後押しする「地域活性化交付金」(約3500億円)など公共事業中心となっており、参議院与野党逆転のねじれ国会を踏まえ、自・公案「丸のみ」と評価されている。

(菅政権2010年9月対策)

 民主党代表選の論戦において対立候補の小沢氏が予備費の2兆円を何故全額使わないのかという批判があるなか、菅政権は2010年9月10日に「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」のステップ1として「円高、デフレ状況に対する緊急的な対応」を公表した。

 内容は家電エコポント、住宅エコポイントの延長や重点分野での雇用創造事業の拡充などである。

 事業規模は9.8兆円であるが、国費は9,150億円であり、経済危機対応・地域活性化予備費を活用するとされている。

(鳩山政権の緊急経済対策)

 鳩山政権は2009年度の第2次補正予算の編成へ向けて、7.2兆円規模の「明日の安心と成長のための緊急経済対策」を決定した(2009年12月8日)。

 財源として、国民新党の財政支出規模拡大要求を受けた上積み1,000億円を賄う建設国債を含めて国債発行3.1兆円、及び麻生政権の1次補正予算の執行停止分2.7兆円を充てている。現政権は、1次補正予算に基づく公共事業約4,800億円を事業停止したが、今回の経済対策には、地方の公共事業を支援する交付金として5,000億円を計上した(毎日新聞2009.12.9)。このため、当初、「コンクリートから人へ」という鳩山カラーが薄められた上、公共事業への実際の支出時期が、来年の補正予算案議決後に延長され、年末に向けての直近の効果が見込めないというリスクがあるので、むしろ1次補正の執行停止の解除を優先せよと野党自民党は批判している。

(麻生政権「経済危機対策」)

 戦後最大の経済危機を乗り越えるための追加経済対策(経済危機対策)と財政出動は、事業規模56.8兆円、補正予算規模15.4兆円と、1998年小渕内閣時の緊急経済対策24兆円超、補正予算規模で7.6兆円の2倍以上の空前の規模となる。

 追加経済対策の裏付けとなる2009年度の補正予算は実に本予算の一般歳出約51兆円の3分の1に近い規模である。

 今回の経済対策の空前の規模は、経済危機の深刻さをあらわすと同時に、衆議院の総選挙を控えた政府・与党としての起死回生のための対策であり、また、ロンドンで開かれた先の金融サミット(G20、4月2日首脳宣言)で合意された来年までの各国景気刺激策総額5兆ドル(約500兆円)の先駆けとして日本が世界をリードしていきたいと考えたためでもある。

 金融サミットで各国のGDPの2%の財政出動を提案したIMF提案に欧州は消極的であり、総額を打ち出すに止まった。欧州各国は税負担率が日米と比べて高く(図録51005107)、すでに景気悪化と連動して自動的に減税対策を行っているに等しいためであると考えられる。貯蓄率の低い米国では国債の増加発行を海外に頼らざるを得ず、ドルの信認の面で余り巨額な財政出動はやりにくい。そこで日本の出番ということであろう。

 財源については、建設国債と赤字国債に頼らざるを得ない見通しであり、ただでさえ膨らんでいる政府債務残高の増大は避けられない(図録5103参照)。財政再建を優先させて経済の悪化が加速し、税収の大幅減に結びつけば財政再建そのものが危うくなる。しかし一方で「機関投資家の国債購入は増えているものの、ひとたび長期金利の上昇を招けば、企業の資金繰りを圧迫する。景気の底割れを防ぐ対策は、「もろ刃の剣」の要素も抱えている。」(東京新聞2009.4.9)金利上昇は国債の償還にも悪影響を及ぼすので、企業の資金需要が本格回復したら財政再建へ転じる必要がある。いずれにせよきわどい金融財政政策が迫られているといえる。

これまでの主な経済対策
策定時期 内閣 経済対策名 事業規模
(兆円)
補正予算
(兆円)
主要な内容
1998年
4月

総合経済対策 16超 4.6 ・公共事業
・雇用対策
・特別減税
1998年
11月

緊急経済対策 24超 7.6 ・金融システム安定化
・恒久減税
1999年
11月
経済新生対策 18程度 6.5 ・中小企業金融対策
・介護対策
2000年
10月
日本新生新発展対策 11程度 3.9 ・公共事業
・雇用対策
2001年
10月

改革先行プログラム 5.8 1.0 ・雇用対策
・中小企業対策
2001年
12月
緊急対応プログラム 4.1 2.6 ・公共事業
・IT推進
2002年
12月
改革加速プログラム 14.8 3.0 ・雇用対策
・中小企業対策
2008年
8月

安心実現緊急総合対策 11.7 1.8 ・防災対策
・中小企業金融対策
2008年
10月

生活対策 26.9 4.8 ・定額給付金
・高速道路料金引き下げ
2009年
4月
経済危機対策 56.8 15.4 ・低公害車・省エネ
 家電購入補助
2009年
12月

明日の安心と成長の
ための緊急経済対策
24.4 7.2 ・住宅版エコポイント
・地方交付税交付金減少分補填
2010年
9月
円高、デフレへの
緊急対応
9.8 0.915 ・住宅・家電エコポイントの延長
・重点分野雇用創造
2010年
10月
円高・デフレ対応のた
めの緊急総合経済対策
21.1 5.1 ・新成長戦略(レアアース対策等)
・公共事業(地域活性化交付金創設等)
2013年
1月

日本経済再生に向けた
緊急経済対策
20.2 13.1 ・復興対策
・国土強靱化
・民間と種々の基金(ファンド)設立
2013年
12月
好循環実現のための
経済対策
18.6 5.5 ・競争力強化対策
・復興、防災・安全対策の加速
・消費増税の影響を緩和する給付
2014年
12月
地方への好循環拡大に
向けた緊急経済対策
  3.5 ・地方向け新交付金(プレミア付商品券など自治体が工夫して実施)
・住宅エコポイント制度復活
・高速道路割引延長
2016年
8月
未来への投資を実現
する経済対策
28.1 7.5 ・インフラ整備(リニア整備前倒し、大型クルーズ船向け港湾整備等)
・簡素な給付措置(軽減税率導入前の低所得者対策)
・年金の受給資格の25年から10年への短縮
・保育士や介護士の処遇改善
(資料)東京新聞2009.4.9/4.11、毎日新聞2009.12.9、官邸公表資料

(2009年4月9日収録、4月11日更新、12月9月更新、2010年9月11日更新、10月9日更新、2011年10月17日基金使い残しコメント、2013年1月19日更新、12月6日更新、2014年12月28日更新、2016年8月2日更新、8月3日補訂)


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