サブプライムローン関連商品の損失で、米国シティグループがアラブ首長国連邦(UAE)などの政府系ファンドから約220億ドル、またスイスの大手銀行UBSもシンガポール系の政府ファンドから約120億ドルの資金提供を受けたことにより、産油国や中国の政府系ファンド(SWF:Sovereign Wealth Funds)が注目されている。また、こうした政府系ファンドがサブプライムローン関連市場から石油や穀物の先物市場にシフトしたため石油・穀物の最近の高騰がもたらされているという点も話題となっている(東京新聞などによる。以下同様)。

 政府系ファンドは国の資産拡大を目指し、巨大な原油収入(産油国)や外貨準備(中国)などを原資として株や不動産に投資する組織であるが、全世界で2兆8,000億ドルの資産規模を有し、さらに今後も資産規模が大きく拡大すると見られている。

 図には主な政府系ファンドの資産規模を示した。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁が最大であり8,750億ドルの資産を有する。日本円に直すと大手で数十兆円の規模である。図に掲げた政府系ファンドの資産合計は2兆5,222億ドルである。

 この他、20兆円の資金量をもつカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)も年金基金としては異例なほど積極的であり、新興国の株式やヘッジファンドへの投資なども行い、10%以上の高い運用成績をあげているといわれる。

 ロシアの安定化基金は2008年1月から「予備基金」と「次世代基金」(別名「国民福祉基金」)に改組された。

 政府系ファンドは国家戦略を背景に活動しているともいわれ、EUなどには警戒感が強い。電力・ガスや航空宇宙といった企業に対してファンドの支配力が強まれば、安全保障上の問題が起き、重要な秘密が流出するおそれもあるため、国際的な規制も検討されている。

 日本の外貨準備高が100兆円、公的年金積立金が100数十兆円あることを踏まえ、日本も、国益のため、こうした政府系ファンドを設立したらという意見もあるが、損失覚悟の国際資金運用には反対する声も強い。また、小国や地方政府の政府資金、あるいは予想外の石油高騰で潤った資金であるならともかく、G8諸国のような大国が世界の市場を大混乱させかねない収益第1のファンド運用に乗り出してよいのかという問題がある。最近の石油市場や穀物市場の価格高騰には投機的な側面が大きいと見られるが、大国が投機で売り抜けて自国の高齢者の老後に備えるというような行動に出た場合の影響の大きさも考えなければならない。

主な政府系ファンドの資産
国名 ファンド名 推定資産(億ドル) 資金源
UAE アブダビ投資庁 8,750 原油
ノルウェー 政府年金基金 3,412 原油
シンガポール GIC 3,300 その他
サウジアラビア サウジ通貨庁 3,000 原油
クウェート クウェート通貨庁 2,500 原油
中国 中国投資有限責任公司 2,000 その他
ロシア 安定化基金 1,444 原油
カタール カタール投資庁 400 原油、ガス
韓国 韓国投資公社 200 その他
チリ 銅ファンドによる新ファンド 148
ボツワナ プラファンド 68 ダイヤモンド
(注)モルガン・スタンレー証券、財務省資料から(ロシア安定化基金はロシア財務省より)
(資料)東京新聞2008.3.4、ロシア財務省(http://www2.minfin.ru/stabfond_eng/stat_eng.htm、2007.12.1現在残高)

(2008年7月24日収録、8月5日改訂・ロシア安定化基金)


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