1.警察官の多い国、少ない国

 世界各国の警察官の数が多いか少ないかについて、人数規模と人口当たりの人数(警察官密度)という2つの指標を掲げた。元データはEurostatなので基本的にはEU各国のデータであるが、米国、カナダ、オーストラリア、南ア、日本といったEU以外の主要国についてもデータが掲載されていたので国際比較ができた。

 米国の警察官が70万9千人と世界最大であり、トルコ34万2千人、日本25万2千人、ドイツ24万8千人と続いている(異例に数の多いロシアを除く−図の(注)参照)。

 人口千人当たりの警察官数については、多い少ないがあるが、ほぼ2〜5人の範囲に収まっている。

 人口千人当たりの警察官数が多いのは、トルコ、スペイン、キプロスといった国であり、ほぼ5人である。日本は2.0人で最も少ない部類に入る。その他、警察官が人口千人当たり4人以上と多い主要国で目立っているのはイタリア、ギリシャ、ポルトガルなどであり、南欧の特徴ともいえる。米国の警察官はテレビや映画によく登場するので多そうな印象があるが、実際のところは2.3人と少ない方である。

 人口千人当たりの警察官が2人前後と少ないことで目立っている主要国は日本を除くとカナダ、オーストラリア、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランド、フィンランド、ノルウェーなどであり、アングロサクソン系と北欧系の諸国である。

2.警察官密度と犯罪率

 次に警察官密度と犯罪率との関係を探ってみよう。下図はOECD諸国について警察官密度をX軸、犯罪率をY軸にとった相関図である。これを見ると警察官密度の高い国ほど犯罪が少ない傾向が認められる。当初、X軸とY軸を逆にして相関図を描いてみたが、犯罪率が高いほど警察官密度が低くなり不自然な図となったのでこちらに変更した(犯罪率については図録2788参照)。

 ニュージーランド、英国、カナダ、米国といったアングロサクソン系は自力救済の考え方からか警察官が少ないので犯罪も多くなっているのに対して、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、イタリアといったラテン系諸国では警察官が多いため犯罪も少ないといった状態にあると考えられる。

 日本についてはフィンランドとともに警察官が少ないにもかかわらず犯罪が少ないという理想的な状況にある。逆にアイルランドは警察官が比較的多いのに犯罪は図中の国の中で最も多いという矛盾した状態にある。


3.カリブ海諸国の警察官数

 以上はヨーロッパの先進国中心のデータであるので途上国の例もあげておこう。以下の図に、ラテンアメリカより警察官数が多いとされるカリブ海諸国の警察官数(実数と人口千人当たり)を掲げた(UNDP, Caribbean Human Development Report 2012による)。

 人口が相対的に多いジャマイカ、トリニダードトバゴ、ガイアナでは、人口千人当たり警察官数は4〜5人とヨーロッパ諸国と余り違わない水準であるが、バルバドス、セントルシア、アンティグアバーブーダといった小国では5〜9人とやや多くなっている。犯罪率との相関を見ると人口当たりの警察官数と比例しており、警察官が多ければ犯罪が減ると言うより犯罪が多いから警察官数を増やさざるをないといった関係にあることがうかがえる。これは先に見た先進国とは逆の傾向である。


カリブ海諸国の犯罪と警察官数
  警察官数
(人)
密度(人口千人
当たり警察官数)
犯罪被害率
(%)
犯罪を減らすためには
警察官を増やすべきだ
とする比率(%)
ジャマイカ 9,903 3.7 5.6 65.0
トリニダードトバゴ 6,302 5.0 10.2 53.1
ガイアナ 2,900 3.9 7.8 60.1
バルバドス 1,415 5.3 10.8 51.0
セントルシア 1,060 6.8 10.9 52.6
アンティグアバーブーダ 560 8.8 11.2 52.7
(注)警察官数、同密度はUNDPの推計(2011年)。犯罪被害率(昨年、何らかの犯罪の犠牲となった人の比率)等はUNDP Citizen Security Survey 2010による。
(資料)UNDP, Caribbean Human Development Report 2012

4.警察官密度と治安の不安度

 警察官密度と関係するのは犯罪率ではなく、むしろ、治安の不安度かもしれない。治安が不安と思っている国民ほど警察官の給料を多く払うことを厭わない可能性がある。そこで、以下に、警察官密度と治安の不安度の相関図を掲げた。

 これを見ると犯罪率との相関より治安の不安度との相関の方が相関度が高くなっている(R2値は、前者が0.249に対して後者は0.351)。これは、治安に不安を感じている国民が多いほど警察官が多くなる傾向があることを意味している(因果関係の方向を逆にして、警察官が多いほど治安が不安になるととらえるのは不自然なのでそう考えざるを得ない)。

 治安が不安なので警察官が増え、その結果、犯罪率は低下するのであるが、だからといって治安の不安感が残ったままであることが多い、と考えざるをえない。実際、犯罪率と治安の不安は相関していないのである(図録2788参照)。

 例えば、イタリアは治安への不安感が強く、また泥棒の多い国と自他共に信じている。おそらくそのために警察官数はOECD4位の多さとなっている。ところが、警察官が多く、また都市国家コミュニティが発達しているため、実際のところは、イタリアの犯罪率は低い、というのが実態ではないだろうか(図録2788g参照)。


5.対象国

 冒頭の図に掲載した39か国の国名を掲げると、米国、トルコ、日本、ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、英国、南アフリカ、ポーランド、カナダ、ギリシャ、ルーマニア、オーストラリア、ポルトガル、チェコ、ベルギー、オランダ、ブルガリア、ハンガリー、オーストリア、クロアチア、スウェーデン、スイス、アイルランド、スロバキア、リトアニア、デンマーク、ラトビア、ニュージーランド、フィンランド、スロベニア、ノルウェー、キプロス、エストニア、マルタ、ルクセンブルク、アイスランド、リヒテンシュタインである。

(2012年6月26日収録、2014年2月6・7日「4.警察官密度と治安の不安度」追加)

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