日本と諸外国の政治家の性格の違いを知るため、国会議員の出身職業をグラフにした。

 欧米と比較して日本の国会議員は、地方議会議員や政治家秘書が第1位〜2位を占め、政党役職員と合わせると50%以上がもともと政治家であり、他職業出身が少ない点が特色となっている。これは、図録5216でふれたとおり、日本の選挙システムが、各地域の個人後援会とこれを中心とした人的ネットワークからなる「地盤」と称されるものが基礎となっており、国会議員になるためには、市町村議会議員→県会議員→国会議員というルートを辿って自らの地盤を作りあげていくか、政治家である親・親族の地盤を引き継いだり(二世議員の場合)、秘書として仕えていた政治家の地盤を引き継ぐ場合が多いからだと考えられる。自由民主党は政党のかたちを取ってはいるが、実は、こうした地盤を形成・維持することが職業の自営業政治家が組合員となってつくる農協のような存在であるといってもよい。民主党の政治家も、「朝立ち」(通勤時間帯における駅前での定常的な顔見せ)によるアピールや労働組合に傾斜した団体支持という違いはあっても、自由民主党の地方議員・国会議員への対抗上、同様な自営業的な形態をとることが多い。図にある日本の国会議員の出身職業には、法曹界や実業界、報道関係もあるがそのうち一定部分は政治家の親の地盤を引き継ぐまで就いていた職業に過ぎないのである。

 欧米にも同様の形態がない筈はないと思われるが、出身職業に地方議会議員や市長等の政治家の区分がないようである。これは、たとえ国会議員以外の政治家(民主主義国では選挙で選ばれることを職業とする者のこと)が出身であっても、それは除外して出身職業を調べているためではないかと思われる。そうできる所が日本との違いであり、日本で議員や政治家秘書になる前の職業は聞かれたら答えようがない政治家も多いから、地方議員や政治家秘書という選択肢が入っているのであろう。

 なお、参考までに国会議員当選者ではなく立候補者のデータを以下に示したが、ここでも、地方議員や政治家秘書が多くなっている。政治家秘書や世襲候補を除いた会社員は非常に少なくなっており、このデータはこの点をテーマにした新聞記事から引いている。


 欧米諸国の特徴を見てみると、米国は、弁護士など法律専門職が多いのが特徴である。米国の場合、政府に法案提出権がなく、同じく議員提出権がない英国では実質上の政府提案を政府要職に就いている議員が提出するのとは異なって、実質上も、議員たちが数十人の秘書を抱えて、自ら法案作成にあたる(榊原2011)。もともと法律家が多いことに加え、こうした事情のため、米国の場合、特に法律専門家が出身職業として多くなるのだといえる。日本の場合法律案はそもそもほとんど政府提案であり、しかもキャリアの国家公務員が法律案をつくっている。政治家は「偉大な素人」(榊原2011)の目でこれを評価し、採択するのである。

 会社社長やビジネスマン、金融家が政治家になる場合が多いのも米国の特徴であるが、英国では、実業界出身が第1位となっているのでアングロサクソン系の特徴なのであろう。ドイツ、フランスでは会社員出身はそう多くない。

 ドイツでは国家公務員(上級)を出身とする国会議員が最も多い。フランスでも第2位である。これはドイツやフランスでは公務員と政治との関係が以下のように日本とは全く異なるからである。

「フランスやドイツで特徴的なのは、国家公務員の政治活動がかなり自由だという点です。フランスでも、さすがに勤務時間中の政治活動は禁止されていますが、時間外においては原則自由。公職への立候補についても、選挙運動中に休暇が付与され、給与も全額支給されます。州・県・市町村については、公務員としての地位を維持しながら議員を兼職することができます。さすがに国会議員になると兼職は出来ませんが、出向扱いになり、出向期間中も昇進や昇任は続くので、次の選挙で負けても元の職場に戻ることができます。国家公務員出身で首相になったミシェル・ロカールは首相辞任後、10年以上も前に在籍していた行政機関に戻っています。ドイツの場合も国家公務員の政治活動はかなり自由で、公職に公務員のまま立候補することもできます。選挙準備のための2カ月の休暇(無給)が与えられ、当選した場合には議員歳費以外に国家公務員としての給与のかなりの部分を付加的に給付され、議員在職中も国家公務員としての年金の権利を失うこともありません。」(榊原2011)

 日本の場合は、国家公務員を辞職しなければ議員に立候補できない。日本の国会議員の出身職業で国家公務員が第3位となっているのは、政治家志望の若者がまず国家公務員になるからに過ぎない。かつてのように事務次官や局長まで上り詰めてから政治家に転身する者は当選回数が重視される現在はほとんどない。

 フランスでは教育界が3割近くと一番多い。これは大学の先生が政治家に転身する場合が多いからである。米国でも8%とかなり多い。

 いずれにせよ、日本の場合は、いったん政治家になると元へ戻れない仕組みとなっており、他の職業との出入りが比較的自由な欧米と際立った違いがある。日本の地元密着型民主主義のためにはこうした自営業型の政治家システムを是と考えるか、政党主導の選挙、他職業との流動可能な政治家職という欧米型のシステムに代えていくのが是なのかは議論が分かれよう。

 自営業型の政治家システムを是と考えるとしても、2大政党制が定着し政権交代が定期的に起こるということはかなり有力な政治家でも何年に一度かは失職するのが通例となるので、政治家以外に定職をもっている者の方が長く政治家を続けられることとなり、そうした政治家が多数派を占めることになるかも知れない。そうなれば、やたらと地盤維持を重視し、そのために私設秘書を多く抱えておかなければならないためお金もかかるという日本の政治風土は変化するだろう(図録5216も参照)。

*参考文献

榊原英資(2011)「公務員が日本を救う〜偽りの政治主導との決別〜 」PHP(社会実情データ図録からの引用複数あり

(2011年8月25日収録、2012年11月8日参考図掲載)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 行政・政治
テーマ  
図録書籍 図書案内




既刊第1弾


既刊第2弾
アマゾン検索

 
(ここからの購入による紹介料を通じたサイト支援にご協力下さい)