1.核戦争や核テロの懸念

 現在、核兵器を保有していることを表明しているのは、米国、ロシア、中国、英国、フランス、インド、パキスタン、そして北朝鮮である。イスラエルは表明していないが保有確実と見なされている。

 核兵力使用の懸念としては以下のような可能性が指摘される(東京新聞2012.11.10)。

@局地核戦争としてはパキスタンとインドとの間が危険と思われている。「いきなり核戦争が始まることはなくても、小競り合いが加熱した場合、通常戦力で劣勢のパキスタンが先制核攻撃に踏み切る可能性が指摘されています」(日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター戸崎洋史主任研究員の言)

Aイスラエルがアラブ諸国から化学兵器で攻撃された場合、核兵器で報復

B核テロ(1)アルカイダのような集団による核兵器ないし核兵器原料(高濃縮ウラン、プルトニウム)入手・使用

C核テロ(2)核保有国の軍の一部の暴走による核兵器の乗っ取り・使用

2.米国オバマ大統領の包括的核戦略演説(2009〜10年コメント)

 米国のオバマ大統領は、欧州歴訪中の2009年4月5日、核兵器の廃絶を目指した「核兵器の削減」、「核拡散防止条約(NPT)の強化」、そして「テロリストの核兵器獲得防止」からなる新政権の核戦略について演説した。

 この演説では、核廃絶へ向けた取り組みに関して、米国には、「核兵器を使った唯一の国として行動を起こす道義的責任がある」とした。

 この発言は、「核への取り組みが、米国の指導力の再生や、「道義的な権威」を高めることになると考えている」(毎日新聞2009.4.23)からだと解されている。

 しかし、「核兵器を使われた唯一の国」である日本の国民の1人としては、よもや米国の政治指導者がこうした発言をするとは考えていなかったので、正直言って驚いた。ぎりぎりの発言であろうが、これを聞いて少し癒された感覚となったのは、私だけであろうか。

 大戦末期に核兵器の使用に関し、米国内でも、戦後の世界における米国のリーダーシップにとって長期的にマイナスとなるので(つまり、単純化して言うと、偉そうなことを言っても説得力がもてなくなるので)、取り止めようと言う議論があった。半世紀が経過して、米国の大統領は、この点の反省に立った取り組みを進めようとしているのであろう。やはり黒人の大統領でなければ、こうした常識感覚にたった発言は出来なかったのではないかと感じる。イラク戦争において、ならず者同士のけんかでもないのに、敗者となった敵国の軍隊を降伏させずに解体してしまって戦後の安定、治安維持がうまくいく筈がないことが理解できなかったブッシュ前大統領の非常識きわまりない態度とは全く対照的である(図録8050参照)。

 前置きが長くなったが、オバマ大統領のこうした発言を契機に、世界の核兵器の保有状況データが新聞に掲載されたので図録として更新した。最初にこの図録を収録したのは、2006年10月の北朝鮮による核実験の強行の直後であった。以下に、その時のコメントを掲げておく。

3.北朝鮮の核実験強行(2006年11月コメント)

 2006年10月9日午前10時35分頃、北朝鮮は、咸鏡北道の山岳地帯の地下で核実験を強行した。すでに北朝鮮は2003年1月に核拡散防止条約(NPT)から脱退、2005年2月に核兵器保有宣言、2006年10月初めには核実験を予告していた。この実験は、先の7月のミサイル発射と相まって、全世界、特に地理的に近く拉致問題を北朝鮮との間で抱える日本にとって深刻な脅威と受け止められている。そのため、国連安保理では、ミサイル発射に対して7月に行った非難決議とは異なり、国連憲章第7条に基づく核をはじめとする大量破壊兵器防止のための強制力を伴った制裁決議を5日後という早いタイミング、かつ全会一致で採択した。

 北朝鮮の核実験は東アジアの安全保障上の深刻な脅威であるばかりでなく、世界的な核拡散防止体制を大きく揺さぶっている。

 核拡散の枠組みは、1970年に発効した核拡散防止条約(NPT)と国際原子力機関(IAEA)による査察制度によっている。これによれば、核保有国は、米国、ロシア、中国、フランス、英国に限り、残る189の加盟国(2005年末)の核保有は禁じられている。

 ただ、NPTの外で、パキスタンとインドが核を保有し、イスラエルも事実上核を保有している。北朝鮮に核保有を強制できなければ、9番目の核保有国となる。NPT内でもイラク、リビア、イランが隠密裏に核を開発しようとし、また、テログループのような国家以外の団体による核保有も懸念されている。

 日本は、世界唯一の核被爆国であり、非核三原則・核兵器非保有が国際的に認知され、プルサーマル、高速増殖炉といった核燃料サイクルの研究開発が非核国の中で唯一許されている。日本が核兵器保有を目指すとすると、国際協力からの締め出し、ウラン調達難などを通じ、こうした平和的核開発、あるいは原子力発電などの平和的核利用自体に決定的な支障が生じるとともに、唯一の被爆国さえ核保有を目指すと言うことで、世界的に50近くあると言われる核開発可能国の核保有に対しての歯止めを日本が先頭に立って解除することになり、不安定な国家の核保有、またテログループにも容易に核が渡るという、核の恐怖に満ちた恐るべき世界に道を拓くことになるであろう。

 なお、核兵器保有の有無によらず包括的に核実験を禁止する条約(CTBT)が1996年に国連総会で採択されている。ところが、核技術を持つ44カ国の署名・批准が揃わず、いまだ発効していない。

 北朝鮮の「核実験」により、日本をふくめ、世界の核不拡散の体制、核廃絶に向けた動きに大きな揺らぎが生じている。

4.米国の欧州核兵器配備

 東京新聞(2010年10月31日)によれば、ヨーロッパ各国では軍事費削減が進行しつつある。NATOは11月に首脳会議を開 き、NATOのあり方を示す新概念を取りまとめることになっている。

 欧州には以下のように米国核兵器が配備されている。

米国の欧州核兵器配備数
英国 160〜120
ベルギー 10〜20
オランダ 10〜20
ドイツ 10〜20
フランス 300
イタリア 70〜90
トルコ 50〜90
(注)英仏は時刻核弾頭保有数。英国は削減計画中。

 新概念草案では米国の欧州戦術核の撤去にはふれなかったというが、フランスのよう に核抑止力低下をおそれ核兵器廃絶には反対なNATO諸国も多い中、米国核が配備されているドイツ、ベルギーオランダに、ノルウェーとルクセンブルクを加えた5カ国 は、2010年2月にはオバマ米政権の「核なき世界」構想を受けて米国に核全面撤去を求めたという経緯もある。

(2006年11月6日収録、2009年4月27日更新、2010年11月1日米国の欧州核兵器配備追加、2012年11月10日核戦力更新)


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