米国の調査機関であるピュー・リサーチ・センターが2015年1〜2月に日米同時に行った意識調査から第2次世界大戦についての日米両国民の意識について見てみよう。同じ調査における「経済的なつながりが重要なのは対中関係かそれとも日米関係か」についての日米両国民の意識は図録j019でふれている。

 まず、原爆投下の正当性についてである。太平洋戦争中に米軍が日本の一般市民に対して行った空襲(無差別爆撃、図録5226d)や原爆投下については、誰に聞いても、その正当性について何の疑問もないという者は少なかろう。しかし、日本でその正当性を自国の国民にきいたり、日本の調査機関が日米国民を対象に調査を行うということは、どのように公表しようが結果としては、面と向かって米国を非難することになることが明らかなためできない。そこで、米国側で行ってくれるこうした調査は貴重である。

 結果は、予想されたとおり、日本人で原爆投下が「正当化される」とした者は14%と少数派であるのに対して米国人では56%と半数を越えている。もっとも、「正当化される」とする米国人の割合は減ってきているという。

「米ギャラップ社が1945年の終戦直後に行った調査では、米国人の85%が原爆投下を支持。デトロイト・フリー・プレス紙の91年の調査で、63%が戦争を終結させる正当な手段だったと答えたのと比べると、正当化論が徐々に衰えていることもうかがえる」(毎日新聞2015年4月8日)

 米国人の中にも、日米両国の戦争被害をはやく終わらせるためとはいえ、一般市民を対象に核攻撃を実施したこと自体が許されない行為だと考える者、あるいは、世界ではじめてかつ唯一米国がそうした行動を取ったために、戦後の世界における米国の権威ある地位が損なわれたと考える者が一定数存在し、また増えていることが分る。実際、核兵器を使ったという過去がなければ、核軍縮や過激派の無惨なテロに対してどれだけ米国は毅然と対処できているかと感じざるを得ない。

 属性別の結果も図にあらわした。男性より女性、高齢者より若者、共和党より民主党、白人よりそれ以外で「正当化される」という回答は少なくなっている。特に高齢者(65歳以上)では70%なのに対して若者(18〜29歳)で47%と年齢で大きな差があることが印象的である。原爆投下の意思決定について少しでも当事者意識のある者ほど、あれは正しかったと思わないではいられないのであろう。年齢以外の属性についても同じ見方が可能である。

 次に、第2次世界大戦についての謝罪である。こちらは2015年には米国のみで調査が実施された。そこで、ピュー・リサーチ・センターの報告書では、同センターが行った2015年の日本対象の同様の調査の結果と比較されている。

 第2次世界大戦中の日本の行動について米国人の意識は、「十分謝罪している」が37%、「謝罪は必要ない」が24%、合わせて61%となっており、「謝罪は十分ではない」の29%の2倍にのぼっている。2013年調査の日本人の意識では、「十分謝罪している」が48%と米国人より多いが、「必要ない」は15%と米国人より少ないので、「十分ではない」は米国とほぼ同等の水準である。

 また、今回、日本の謝罪とならんでドイツの謝罪についても米国人を対象に調査されているが、ドイツの場合は、「十分謝罪している」を「謝罪は十分ではない」が上回っており、両者が逆の日本とは対照的である。これは日本とドイツの謝罪行動の差というより、ユダヤ人虐殺など戦争犯罪の質がドイツの方が悪質、あるいは日本のように大空襲・原爆投下などによって懲らしめられていないと感じている米国人が多いためではないかと推測される(空襲被害の日欧比較は図録5227b)。

 なお、関連して、同じ敗戦国である日本とドイツの国民に対して、先の戦争中の行動についての被害国への謝罪について朝日新聞が世論調査を行っているので、下に主要な結果を掲げた。ドイツ人は日本人より謝罪や償いを十分にしてきたし、これからも謝罪のメッセージを伝え続けようと考えている割合が多い。また、学校でしっかりと教えていると考えている者も多い。朝日新聞がこうした世論調査を行った意図は、戦後70年に当たり、先の大戦について反省やお詫びを表明した戦後50年の「村山談話」と60年の「小泉談話」を見直して日本人の誇りを回復しようとする安倍内閣の姿勢に反論するためであることは明らかであり、加害者としての反省努力についてはドイツ人が日本人を上回っていることは確かであることがうかがわれる。しかし、ドイツ人に対しては、これだけ反省していても、上で見たように日本人と比較して、なお謝罪は十分でないと考える人々も多いのだということが、逆に、あぶり出される結果となっている。謝罪はやったこととのバランスで周りの人は評価するのだといえよう。私は、日本にとって謝罪はもう十分だとする立場からこう言っているのではない。都合よすぎるデータはかえってあやしいと訴えたいだけである。


(2015年4月8日収録、4月14日日独世論調査参照、2016年5月25日当図録をもとにニューズウイーク日本版記事「原爆投下を正当化するのは、どんなアメリカ人なのか?」寄稿)


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