岸内閣以降の戦後の歴代内閣について、内閣支持率の経過について一覧するグラフを掲げた。森内閣以降の内閣支持率は結果が公表されているNHK「政治意識月例調査」を使用している。NHK調査の毎月の実施日は最近の実績では5日〜12日の金曜日からはじまる金土日となっている。5日あるいは12日が金曜となる月以外は、実施日があらかじめ決まっているといえる。ただし、2016年7月は参院選が10日に行われたので翌週となっている。

 各内閣について、ほぼ、共通しているのは、組閣当時に高かった支持率が政権末期には大きく低下する傾向である。

 人気のなくなった旧政権から、心機一転、国民の期待を受けて新内閣が誕生する。新しい政権が種々の政策を実行すると万民を満足させるわけには行かないから、あるいは政策のマイナス面も目立つようになるから、人気は低下する。あるいは人気先行で成立した内閣は約束した政策、企図した政策が実現できず人気を失う。近年は後者の側面が強まっているといえよう。首相・閣僚の不祥事や問題発言で人気が低下する場合もある。

 参考に加えた自民党支持率の動きは自民党が政権を失った時期を除いて40%前後と安定しており、それを上回るところからはじまり下回るに至ることが多かった内閣支持率とは対照的である。人気の落ちた首相の首をすげ替えることによって政党の支持率を保ってきているといえる。小泉政権の特殊性は自民党支持率を内閣支持率が一貫して上回り続けたところにある。自民党の議員はこの内閣のおかげで実力以上に当選できると感じるから政局は官邸主導となり、長期政権が実現する(注)。第2次以降の安倍内閣にも似たようなところがある。

(注)当時の自民党ポスターに「自民党をぶっ壊す!」と記されていてまことに驚いたことを思い出す。これは小泉首相のキャッチフレーズだったが総裁の人気が党の人気を大きく上回ればこんな珍妙なことも起るのである。

 各内閣の状況を振り返ってみよう。

 古くは、60年安保紛争で人気が急落した岸内閣に代わって、分かりやすい「所得倍増計画」を掲げた池田内閣が当時は圧倒的と感じられた高支持率のなかで登場した。しかし公害や過疎化など高度経済成長の陰の部分への国民の不満により支持率は低下。次の佐藤内閣にバトンタッチされた。

 日韓国交回復、沖縄返還を実現した佐藤内閣も最後には支持率が25%以下となった。「列島改造論」を掲げ、庶民宰相として人望が厚く、62%という異例の高支持率だった田中内閣は当初、日中国交正常化を実現して世界をあっといわせたが、狂乱物価と金権政治批判で支持率は急落し12%にまで下げた。

 海部内閣や小渕内閣のように首相自身に余り人気がなかったため当初の支持率が低かったものの、その後、案外出来るじゃないかということで支持率が上昇したケースもある。党内の位置などから余り大きな施策を実施しなかった(できなかった)から人気も下がらなかったという見方もできる。

 森内閣は最初から支持率が低く、最後は7%と最低水準となったことで目立っている。

 それを継いだ小泉内閣は、首相のキャラクターに対する人気や構造改革への期待もあって、史上最高の支持率で登場し、以下のような事象やサプライズによる支持率の上下はあったものの比較的高い水準の支持率を維持していたといえる。

2002年1月 田中真紀子外相更迭
2002年9月 電撃的な北朝鮮訪問
2003年9月 安倍晋三幹事長起用
2005年9月 郵政解散

 小泉政権の比較的安定した高支持率の理由として、図の引用元である林知己夫・櫻庭雅文「数字が明かす日本人の潜在力 」講談社(2002年)は、実施した政策が小粒だったため、大きな失望にも見舞われないで済んだからだとする見解を示している。

 小泉内閣が自民党総裁任期満了にともなう総辞職で政権を明け渡した後の安倍、福田、麻生という自民党3内閣、その後の鳩山、菅、野田の民主党3内閣は、いずれも共通して、先行した人気や期待に適う政権運営を実現できず短期間で支持率を低下させて移り変わっていったことは記憶に新しい。

 2013年1月からの安倍内閣は比較的高い支持率を維持していた。同年9月の調査は6日(金)〜 8日(日)の3日間に行われており、8日早朝には2020年オリンピック大会の開催地に東京が決定したことが判明した。首相も決定直前の最終プレゼンテーションで大きな役割を果たしたと伝えられたので、一日分だけであるが、この影響があらわれていると見ることができる。その後、汚染水漏れの事実が明らかになる一方で、10月1日には安倍首相が消費増税8%への引き上げを宣言した。だからといって内閣支持率が大きく低下しているようには見えない。

 政治学者の山口二郎は東京新聞の「本音のコラム」(2013年10月13日)で「だまされたがる人々」という表題で世論調査結果に対してこう不服を述べている。「最近の各紙の世論調査結果を見ると、人々はむしろ積極的に、あるいは諦めからか、為政者にだまされたがっているようである。多数派の人々は、福島第一原発の汚染水が制御不能の状態にあることも、消費増税と経済対策のセットが普通人の雇用や生活の改善につながらないことも、分かっている。つまり、首相が嘘をついていることを知っているのである。しかし、内閣支持率は依然として高止まりしている。民主政治では、為政者が嘘をついたり、国民に害を及ぼす失敗を隠蔽したりすれば、国民の側が為政者をとがめるはずだという前提が存在する。(中略)しかし、肝心の国民が、世の中こんなものだと現状を受け入れていては、(政治や行政の虚偽を批判する)言論は無意味となる。」(カッコ内は引用者の補足)

 真実を述べても何ら現実を解決する能力がない政権より、嘘を述べても嘘を本当にする見込みのある政権の方がましだという国民の気持ちのあらわれであって、だまされたがっているわけではないし、山口のような言論人が不服を述べるようなことでもない。ましてや、その真実が必ずしも言論人の述べるとおりの真実とは限らないとすればなおさらなのである。言論人が口舌の徒に過ぎない場合も多いのだ。

 2013年12月6日に特定秘密法案が参院で可決され、法律が成立した。与党の数的優勢に頼った国会通過への批判は強く(図録j015)、6日(金)〜 8日(日)に行われた調査結果にもこれが反映された。なお図の値の低下幅からは自民党への批判というより安倍政権に対する失望という側面が強かったことがうかがえる。そして、暮れも迫った12月26日、安倍晋三首相は靖国神社に参拝した。中韓ばかりでなく米国などその他諸外国からも東アジアの関係悪化を憂う声が挙がったが、1月11日(土)〜13日(月)の世論調査の内閣支持率はむしろ回復している。

 2014年4月からは消費税が値上げされた。また、4月11日には原発ゼロという自民党公約に反する原子力をベース電源とするエネルギー基本計画が閣議決定された。しかし、4月11日(金)〜13日(日)を調査期間とする4月の内閣支持率はむしろ3月より上昇した。集団的自衛権を容認する解釈改憲や武器輸出三原則の見直しを含めて、安部内閣の個別政策には批判が強いのに対して内閣支持率が5割以上を維持している理由がなんだろうとする記事を掲載する新聞もあらわれたが、結局、個別には気に入らなくとも他に頼れる政治家がいないという結論以外にはないようだ(東京新聞2014年4月15日)。

 2014年7月調査の調査日は、7月11日(金)〜13日(日)だったが、47%と今次安倍内閣の最低値となった。これは7月1日の集団的自衛権行使容認閣議決定の影響である(図録j018)。これが安倍内閣の没落のはじまりとなるか、単なるエピソードで過ぎるかは今後の推移次第である。8月は少なくとも再度50%を越えた。

 2015年7月調査の調査日は、 7月10日(金)〜12日(日)だったが、41%と今次安倍内閣ではじめて不支持を下回った。これは安保法制に対して、反対の声が高まっているためである。時期的に広島・長崎の原爆記念日にかかる8月調査もその影響もあってか引き続き支持率は37%へ下降した。安全保障関連法案については図録5223でふれた正宗白鳥の1960年安保反対運動評を参照。9月からは再度支持率が不支持率を上回っている。

第2次以降安倍内閣の主な出来事
2012年 12月16日 第2次安倍内閣の発足
2013年 3月15日 安倍首相が環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加を表明
4月22日 首相が村山談話について「そのまま継承しているわけではない」と国会答弁
7月21日 参院選で自民党が圧勝
10月1日 首相が14年4月から消費税率を8%に引き上げると表明
12月6日 特定秘密保護法が成立
12月26日 首相が靖国神社を参拝。米国が「失望」と異例の声明
2014年 4月1日 武器輸出三原則を見直し、輸出を容認する新三原則を閣議決定
4月11日 原発稼動を明記したエネルギー基本計画を閣議決定
7月1日 集団的自衛権の行使容認を閣議決定
9月3日 内閣改造
10月20日 小渕優子経産相、松島みどり法相、政治資金、選挙活動の疑惑を理由に閣僚辞任
11月21日 衆議院解散。その後の総選挙で低投票率下で自民党勝利
12月24日 第3次安倍内閣の発足
2015年 2月23日 国の補助金交付企業からの寄付問題で西川公也前農相が辞任
他閣僚を含め同様の「政治とカネ」問題が国会で追及される
6月4日 衆院憲法審査会で自民党推薦を含む憲法学者3人全員が安保法制に関する法案を「憲法違反」と発言
7月16日 安全保障関連法案の衆議院通過
7月17日 新国立競技場建設計画白紙に戻すと首相表明
8月3日 礒崎陽輔首相補佐官、安全保障関連法案についての「法的安定性は関係ない」との発言を撤回、謝罪
9月8日 自民党総裁選で安倍首相が無投票で再選される
9月19日 未明に参院で可決し安保関連法案が成立
10月7日 第3次安倍改造内閣発足
10月13日 財務省還付案を撤回し、消費税10%上げと同時の軽減税率導入を決める
12月28日 慰安婦問題で日韓合意。安倍晋三首相はおわびと反省を表明
2016年 1月28日 甘利明経済再生担当相が自身と秘書の金銭問題で辞任
3月2日 参院予算委員会で憲法改正について「私の在任中に成し遂げたいと考えている」と述べ、強い意欲を示す
5月11日 伊勢志摩サミットにあわせた米国大統領の広島訪問決定が報道される(27日訪問)
6月1日 消費税10%上げの延期を発表
7月10日 参院選で与党が圧勝
(資料)東京新聞2014.9.3など

 2014年9月に実施された安倍政権の内閣改造は、これによって内閣支持率が上昇したかどうかの関心を呼んだ。そのため、内閣改造後すぐに新聞各紙は世論調査を実施したが、結果は各紙によって大きく異なっていた。この点を下表で見てみよう(毎日新聞2014.9.6の記事を参照した)。

安倍政権2014年9月の改革改造前後の内閣支持率 単位:%、%ポイント
  支持率 不支持率 支持・不支持
以外の割合
改造前 改造後 変化 改造前 改造後 改造前 改造後
毎日新聞 47 47 ±0 34 32 19 21
読売新聞 51 64 +13 41 29 8 7
日経新聞 49 60 +11 36 26 15 14
共同通信 49.8 54.9 +5.1 39.1 29.0 11.1 16.1
朝日新聞 42 47 +5 35 30 23 23
NHK 51 58 +7 33 28 16 14
(注)改造後の調査日は朝日6日、7日、NHK5〜7日、それ以外は3日、4日
(資料)毎日新聞2014.9.6、朝日新聞2014.9.8、NHK放送文化研究所

 内閣支持率が上がったか下がったかの変化の前に、支持率の水準そのものがまず異なっている。毎日がもっとも低く、読売がもっとも高い水準である。

 理由は2つある。まず、聞き方の問題である。すなわち、「分からない」とか「関心がない」とかいう中間的な回答をどこまで許容するか、あるいは逆にあいまいな回答に対して「あえて言えばどちらですか」と重ね聞きするかどうかである。支持・不支持以外の回答が何%あるかでこれが判別できる。改造後の数値では朝日が23%ともっとも多く、読売が7%ともっとも少ない。結果として、支持率も見かけ上朝日は低くなり、読売は高くなる傾向が生じるのである。

 次に、どの新聞からの世論調査かによって回答者が回答を拒否するかどうかに違いがあることから政府に好意的な論調の新聞とそうでない新聞とで回答にバイアスがかかる点があげられよう。なお、聞いてきる新聞社によって回答者が回答を変えることがありうるといういわゆるブランドイメージ説はあてはまらないだろう。

 これらは内閣支持率の水準の違いに関する説明であるが、内閣改造に対する内閣支持率の変化の違いの説明にもなっていよう。私は聞き方や回答者のバイアスによって水準の違いは当たり前だと思っていたが、いつも同じようなかたちで調査は行われているので変化の方向や変化幅にはそう大きな違いがない筈だと思っていたが、変化についても±0から+13までという10%ポイント以上のこんなに大きな違いが生じていたのは少し意外であった。

 なお図に取り上げた内閣を掲げると、岸内閣、池田内閣、佐藤内閣、田中内閣、三木内閣、福田内閣、大平内閣、鈴木内閣、中曽根内閣、、竹下内閣、宇野内閣、海部内閣、宮澤内閣、細川内閣、羽田内閣、村山内閣、橋本内閣、小渕内閣、森内閣、小泉内閣、安倍内閣、福田内閣、麻生内閣、鳩山内閣、菅内閣、野田内閣、安倍内閣である。

(2013年6月13日収録、6月16日3つのグラフの順番を新しい人からに入れ替え、7/9・8/13・9/12更新、10/13山口引用、10/17・11/16・12/10更新、2014年1/14・2/11・3/11・4/15・5/12・6/9更新、7/10調査実施日についてのコメント追加、7/15・8/11更新、9月3日第2次以降安倍内閣年表追加、9月8日更新、安倍改造内閣前後の支持率変化の表・コメント追加、10/16・11/10・12/8更新、2015年1/13・2/9・3/10・4/17・5/16・6/9・7/13・8/10・9/14・10/13更新、10月15日政党支持率との関連などのコメント追加、10月20日文章内(注)追加、11/9・12/14更新、2016年1/12・2/8・3/14・5/12・6/13・8/2・8/8更新)


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