2016年7月18日、孫正義ソフトバンクグループ社長と英国半導体開発大手のチェンバース英アーム・ホールディングス会長は、約3兆3000億円で前者が後者を買収することで合意した。ソフトバンクグループはアリババ株の売却益などによる自己資金約2兆3000億円に加え、みずほ銀行からの1兆円を限度とした借り入れで買収資金を賄うとされている(東京新聞2016年7月20日)。

 この買収は上図の通り、日本企業による海外・外資企業の買収額としては最大規模となる。

 日本企業による海外企業の買収が増えはじめたのは、2006年ごろからであるが、これは、バブル崩壊後の国内事業の整理が一段落した時期に当たっている。日本企業は円安効果などにより過去最大の利益を計上しているが、自社事業の新規投資に回すことも従業者への給与に回すこともしていないので内部留保が積み上がっている(図録4610)。このため海外企業を買収するしか資金の使い道がなくなっており、今後も大型のM&Aが相次ぐと考えられている(読売新聞2016年7月20日)。

 ソフトバンクグループは次表の通りこれまで多くの企業買収で次々と成長してきており、今回は、設計した省電力型半導体チップが世界のスマートフォンの約95%に搭載されているアーム(ARM)・ホールディングの買収により、今後急拡大が見込まれるIoT分野(モノのインターネット)における主導権を確保できるものと考え、携帯電話事業に次ぐ成長の柱となることを期待している。

 ただ、先に買収した米携帯電話大手スプリントの経営再建も実現していない中でのさらなる巨大な買収ということで「いい買物だが、あまりに大きな買物」という不安からソフトバンクグループの株価は買収発表で大きく下落した。IoT分野の成長のカギはチップでなくOSやアプリだという声も聞かれる。また、ソフトバンクのように今後もIoT分野でアームに成長してもらって将来的な利益を取り込もうというのではなく、アームの独占的な地位を乱用し短期的に稼げると考えてロクでもない投資ファンドがアームを買収するという事態が阻止される結果になったので、業界の健全な発展という視点からは御の字だといううがった見方もあるようだ。

ソフトバンクグループの企業買収等の歩み
1996年 米Yahoo!社との合弁でYahoo! JAPANを設立
米メモリー製造会社キングストン買収(99年に損失を出して保有株売却)
2000年 アリババに出資(2016年一部保有株売却、最大2500億円売却益)
2001年 ブロードバンドサービス「ヤフーBB」開始
2004年 日本テレコム買収。固定通信参入
2006年 ボーダフォン日本法人を買収、携帯電話事業に参入
2009年 PHS大手ウィルコムの再生支援で合意
2011年 再生可能エネルギー事業に本格参入
2012年 携帯電話会社「イー・アクセス」を買収
米携帯電話大手スプリント買収で合意
2015年 ロボット事業に参入。「ペッパー」の一般販売開始
2016年 英半導体設計大手アーム・ホールディングスの買収合意。IoT市場拡大に伴う急成長を目指す
(資料)新聞各紙

 図の項目名を掲げておくと、松下電器産業【MCA(米・娯楽)】1990年、日本たばこ産業【ギャラハー(英・たばこ)】2006年、ソフトバンク【英ボーダフォン日本法人(通信)】2006年、武田薬品工業【ミレニアム・ファーマスーティカルズ(米・製薬)】2008年、武田薬品工業【ナイコメッド(スイス・製薬)】2011年、ソフトバンク【スプリント・ネクステル(米・通信)】2012年、サントリーホールディングス【ビーム(米・飲料】2014年、東京海上ホールディングス【HCCインシュアランス・ホールディングス(米・保険)】2015年、日本郵政【トール・ホールディングス(豪・物流)】2015年、ソフトバンク【ARMホールディングス(英・半導体設計)】2016年

(2016年7月21日・22日収録)


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