パソコンを使ったインターネット利用からはじまり、携帯電話、スマホの普及でさらにネット社会が進化するなかで、それとともに、これらに要する通信費が家計の中で大きな割合を占め、経済全体の中でもウエイトが増大するようになった。

 どの国でも通信費の負担増大は大きな民生上の課題となっている。2017年3月の中国の全国人民代表大会において「約1時間40分にわたった李克強首相の政府活動報告で、会場が最も盛り上がったのは政治・経済運営の大方針ではなかった。「携帯電話料金とデータ通信料のうち、省などをまたぐ長距離の上乗せ料金を年内に廃止する」と宣言すると、人民大会堂は約10秒にわたって大きな拍手が起きた。国有企業の通信業界に政府が指示できる構図があるとはいえ、政府活動報告で電話料金の値下げにまで言及するのは異例。中国メディアも一斉に速報した」(朝日新聞2017年3月6日)。

 日本の場合、全国消費実態調査によると2009年から14年にかけて単身世帯の携帯電話通信料は3,416円から4,438円へと29.9%増となっている(図録6365参照)。

 家計調査によると家計消費に占める通信費の割合は、1990年代半ば以降、2%前後から4%を大きく超える水準に倍増した(下図)。


 家計支出における通信費には、旧来の郵便代、電話料金や宅配費用などを含んでいるが、やはり、携帯電話、スマホなどの通信費用が大きいと考えられる。携帯電話やスマホの機器価格を安くして通信費に事実上これが上乗せされているのであるからなおさらであろう。

 2015年9月の経済財政諮問会議における安倍首相の「携帯電話などの家計負担軽減が大きな課題だ」という発言をきっかけに、有識者による「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が同10月から総務省に設けられ、この課題についての検討がはじまった。

 だが、初回の会合では、日本の通信料金は海外と比較して高くないというデータが示され、その結果、重点はむしろ携帯電話端末の実質ゼロ円販売の解消に移り、その後、この点をめぐる行政と大手通信会社との攻防が続いてきている。

 しかし、本当に、携帯電話などの通信料の家計負担は海外と比べて重くないのか。あまり利用されることがないデータだが、図には、OECDのSNA(GDP統計)データベースにより、主要先進国の家計における通信費支出の対GDP比の推移を示した。

 各国で、家庭における情報通信革命が進展した結果、1990年代前半までと現在とでは、通信費対GDPのレベルが0.5〜1%ポイントほど上方にシフトしている様子が如実にうかがえる。

 この上方シフトには一般に2つの特徴が見て取れる。すなわち、上昇が1995〜2005年の時期に集中して起こった点、および韓国に典型的に見られるように、いったん高騰した通信費が再度低下するという逆U字カーブ的な動きが見られた点である。

 通信費の上昇が1995〜2005年の時期に集中して起こった点については、図録0211で、1995〜2005年の時期に主要先進国のエンゲル係数が下がり続けていたのは家計における通信費増大の圧迫によるものではないかと指摘した点を裏づけとなる動きとなっている。

 日本の場合は、全体として通信費の上昇幅が大きく、現在は2%前後と、企業負担の通信費を除いた家計の通信費負担だけで、防衛費の2倍に達し、主要先進国の中で最高となっている点が目立つほか、例外的に逆U字カーブ的な動きがなく一貫して上昇してきた点が特徴的である。

 ここでは詳細な国ごとの分析はできないが、逆U字カーブ的な動きの有無や程度は、以下のような条件によって影響されていると考えられる。

家庭へのデジタル通信の普及のスピード
通信品質の向上の程度
固定電話との重複の解消の程度
通信サービスが競争的市場だったかどうか(通信会社の寡占の弊害はないかどうか)
通信料金設定への政府の介入の程度と通信料低減へ向けた政府の姿勢
有線・無線のデジタル通信網インフラへの投資資金が通信料で素早く回収されたか、低金利の下で後年度回収となったか

 ともかく、このデータを見る限り、家計における通信費負担は、日本の場合、今や、先進国の中で最も重くなっていることは否定しがたい状況となっており、安倍首相の問題提起は、もっともなことだったと言わざるを得ないだろう。とはいえ、問題提起の翌年の2016年にはさらに家計調査における通信費割合が減るどころかむしろかなり上昇しているのは皮肉な結果といえよう。

 世界各国の家計通信費の対GDP比については図録6367参照。

(2017年2月22日収録、図録6367の冒頭部分を当図録へ移動、2月23日コメント補訂、3月6日中国全人代記事)


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