毎日新聞は「銀輪の死角」というテーマで自転車事故の問題を継続的に取り上げている。2011年1月6日には、日本では、車道ではなく歩道から交差点を渡る自転車と交差点を左折する自動車の間での交通事故死者が多い点が研究により明らかになったと報じている。

「自転車事故の7割超が交差点に集中し、その主要因は自転車の歩道走行にあるという分析結果が明らかになった。国内の自転車乗用中の死者は年間1000人近くで先進国の中で突出。欧州各国では道路幅が狭くても交差点付近の車道に自転車用通路を確保するなど対策が進んでおり、国内でも同様の対策が急務となっている。

 元建設官僚で住信基礎研究所研究理事の古倉宗治氏によると、車のドライバーにとって自転車の歩道走行は街路樹などで死角となるだけでなく、自転車の存在感を薄れさせる「心理的死角」を生む。自転車の利用者も車への意識がにぶるという。このため、車道より歩道を走行する自転車の方が事故に遭う確率が高い、というのが古倉氏の分析だ。

 自転車の歩道走行は、交通事故死者が史上最悪になった70年、車との接触事故を減らすため例外的に導入された。だが、40年余を経た現在、逆に事故多発の要因になるという事態が生じている。

 国内での自転車乗用中の死者(事故後30日以内)は、80年の1366人から08年は971人と約3割減だが、同期間にフランスは715人から148人へと約8割も減少。英国やドイツ、オランダも3分の1近くに減り、先進国の中で日本の死者は飛び抜けて多い。

 欧州では自転車の車道走行を徹底する。さらにロンドンなどの主要都市では、自転車用通路を設置できるほど道路幅が広くなくても交差点やその付近にだけ車道に自転車のマークを付けて通行部分を明示したり、車の停止線の前に自転車の停止位置を設けている。古倉氏は「こうした先進事例は日本でも参考になる。自転車の存在を認識させることで事故は大幅に減らせる」と指摘している。」

 紙面には、先頭のグラフのデータが示され、先進国(日本、米国、ドイツ、フランス、英国、オランダの6カ国)の中で最も自転車乗用中の死者数が多い点に警鐘を鳴らしている。

 しかし、もしかしたら人口当たりの自転車乗用中の死者数では日本が果たして最も多いのだろうかという疑問が生じる。そこで2番目のグラフを描いた。すると、実は、日本は多い方ではあるが、自転車大国オランダの0.88人(10万人当たり)より少ない0.76人である。

 それでは日本の自転車事故はそれほどではないといってよいのだろうか。自転車に乗っている時間や頻度がオランダ人の方が多いのだから当然オランダの方が事故率が高くなって当然なのではないだろうか。

 そこで3番目の図として、自転車普及率(人口当たりの保有台数)との相関図を描いた。すると自転車普及率の高い国ほど自転車乗用中の死者は多い傾向があることが分かる。その中で日本はやはり相対的な死者数(傾向線からの上方への乖離幅)は最も大きくなっており、自転車事故の深刻さが先進国の中でも際立っていることがはっきりする。

 結果としては1番目の図で警鐘を鳴らしていることが正しかったことになる。

 図録6371では自転車普及率と自転車泥棒被害率との相関図を描いて、自転車普及率の高い国ほど自転車盗難被害は多いことを示したが、自転車乗用中の事故死者数との間にも同様の関係が生じている訳である。おそらく自転車と衝突した歩行者の死亡・傷害事故率についても同様の関係があるのだろうとも推測される。

(2011年2月24日収録)


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