主要耐久消費財の世帯普及率(1台でも所有している世帯の比率)の推移を図録2280で見たが、ここでは、乗用車、オートバイ・スクーター(自動2輪車)、自転車の世帯普及率の推移を掲げた。

 1950年代には、乗用車、オートバイを所有する世帯は1割以下と少なかった。特に乗用車はデータが採られはじめた1961年でも2.8%にすぎなかった。一方、自転車はこの段階でかなり普及しており、データが採られはじめた1957年には63.3%と6割を越えていた。1960年前後はまだ道路には徒歩を除くと自転車しか往来しておらず、ひと頃前の中国や東南アジアと似た状況であったことがうかがわれる。

 高度成長期に入って、モータリゼーションの第1波として、まず、オートバイが急速に普及し、1966年には30.1%の第1のピークに達した。しかし、それ以降、オートバイに変わって乗用車の普及が急速に伸び、オートバイの普及率はむしろ低下した。当時は、オートバイと乗用車をどちらも所有するのは贅沢であったのであろう。

 成瀬巳喜男の1952年公開の映画「稲妻」は、金儲けのうまい両国のパン屋綱吉(小沢栄太郎)が主人公の家族に家計面で助けを出す代わりに、嫌われながらも末娘清子(高峰秀子)に好意をもって接近するという設定だが、小沢はスクーターに乗って現れるのが常であった。また、川島雄三監督の1956年公開の「洲崎パラダイス赤信号」では飲み屋で働く主人公の女(新珠三千代)が主人公の男(三橋達也)から離れ、一時期、金回りが良い客の1人(河津清三郎)と仲良くなるが、ラジオ店で成功している河津がスクーターで常に移動していたのが印象的だった。この2作品ではスクーターが、あくまで庶民のレベルではあるが「やり手」のイメージとむすびついていて、スクーターのエンジン音が、「稲妻」では「押し付けがましさ」、「洲崎パラダイス」では「頼りがい」を効果的に表現していた(注)。こうした白黒映画の時代、クルマが普及するまでバイクは出来る男の実用道具だったことがうかがわれるのである。

(注)蔦枝(新珠三千代)のセリフ。「私ね、義治(三橋達也)と一緒に居た時には落合(河津清三郎)のスクーターの音がすると、どんなにクサクサしていてもパーッと気分が晴れたの、ところが落合と一緒になってみると蕎麦屋の出前持ちが通ると、みんなあの人に見えちゃうのよ」

 道路整備と平行したモータリゼーションの本格化の中で、乗用車は一貫して普及率が上昇し、今や、贅沢品ではなく、必需品化している(特に地方において)。しかし、大都市中心部ではマイカー利用に限界があり、また、乗用車を利用しない高齢世帯も増えていることなどから、普及率上昇は2003年の86.4%をピークに頭打ちとなり、最近は、むしろやや低下傾向である。

 オートバイは、1970年代後半からは、乗用車の普及率上昇と平行して上昇し、1986年の35.6%の第2のピークを迎えたのち、再度、低下傾向となり、2004年には19.9%と2割を切っている。全国消費実態調査によれば、その後もオートバイの普及率は低下傾向を続けている。こうした推移には、若者人口の推移や道路環境、交通安全規制などが影響していると考えられる。

 一方、自転車は、かつての主要交通手段から、乗用車やオートバイと組み合わせた利用へと変化することによって、徐々に、普及率は上昇し、1980年代以降は、ほぼ80%前後で横ばいに推移している。

 乗用車、バイク、自転車の普及率は以下の図録に掲げているので参照されたい。

乗り物普及率を掲げた図録番号
  各国比較 都道府県比較
乗用車 6375 ピュー
リサーチ
センター
6382
7662
バイク 6376 7664
自転車 6371 7665

(2007年10月25日収録、2015年2月24日映画の中のバイクをコメント、年次・資料を拡張、7月6日洲崎パラダイスの中のセリフを(注)に付加、2015年8月1日バイク最新値更新)


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