鉄道の人身事故が増えている印象がある。ここでは、関東の鉄道の各路線別に人身事故の発生件数、そのうち自殺の件数の推移を示した。データは、佐藤裕一氏が行政文書開示請求で入手した国土交通省「運転事故等整理表」によるものである(記事は週刊東洋経済増刊 「鉄道完全解明2014」、佐藤氏は「鉄道事故マップ」としてHP公開)。

 下段にふれるように関東の鉄道全体としては、人身事故、あるいはそのうちの自殺の発生件数は増加傾向にあるが、路線別には、それぞれの特徴がある。

 まず、2002〜12年の合計で人身事故が多い路線としては、JRでは中央線、京浜東北線、山手線、常磐線などとなっている。私鉄では、東武東上線が最も多く、小田急線、政府新宿線が続いている。

 人身事故と自殺の動向の推移については、増加傾向にある場合でも、3つのパターンがある。1つ目は、両方とも増加しているケースであり、JR京浜東北線や東武東上線が典型である。2つ目は、自殺は横ばい傾向であるが人身事故は増加傾向を辿っているケースであり、JR中央線、JR山手線がこれに当たる。3つ目は、人身事故は横ばいであるが自殺は増加しているケースであり、それほど明確ではないが、JR東海道線がこれに当たる。

 一方、明確に人身事故が減少傾向にある路線はないようだ。

 全体傾向については、次図にデータを掲げた。人身事故、および自殺は、いずれも、この10年間に2倍以上に増加している。自殺の比率は約3分の2を占めているが、値自体は横ばいか、やや低下傾向にある。すなわち、人身事故の増加要因としては、自殺発生件数の増加も大きいが、それだけではなく、スマホを見ながらの転落など他の要因の増加も影響していることが分かる。


 週刊東洋経済臨時増刊「「鉄道」完全解明2014年」(2月14日発売)によれば、「08年には首都圏で3283件だった運転見合わせや遅延の件数は、12年には6143件とおよそ1.9倍に増加していた」(p.72)という。2008年から13年6月までの集計では、原因としては、「人身事故」が30.5%を占め、次に多い「車両点検・故障」の14.0%、及び「気象・地震」の14.0%の合計28.0%を上回って最大だった。「人身事故とは、飛び込み自殺、ホームへの転落、列車との接触などを包括した事故である。「最近は、酔客や高齢者、スマートフォンを見ながらの転落事故・電車への接触事故が増えている」と西武鉄道の岡崎利生・鉄道本部安全推進部長は言う。」(p.72)

 グラフの体裁上、掲載しなかった3路線の年平均人身事故発生件数(カッコ内は自殺)は、以下の通りである。

・相鉄鉄道 年平均4(2)件
・東京地下鉄千代田線 年平均4(2)件
・都営新宿線 年平均4(2)件

 なお、上には、佐藤裕一氏による最近の集計結果を掲げた。2010〜14年度における自殺者数の多い路線は、JR中央線、東武東上線、JR常磐線の順となっており、2005〜09年度からの増減では、東武東上線の増加が目立っているほか、JRより私鉄での増加傾向が認められる。

 図で取り上げた35路線を、人身事故発生件数の多い順番で掲げると次の通りである。JR中央線、JR京浜東北線、JR山手線、JR常磐線、東武東上線、JR宇都宮線、JR東海道線、小田急小田原線、JR高崎線、西武新宿線、西武池袋線、東武伊勢崎線、東急田園都市線、京王線、JR横須賀線、JR埼京線、JR総武線・各停、JR南武線、JR横浜線、東急東横線、JR内房線、東京地下鉄東西線、JR総武線・快速、JR中央本線、JR総武本線、京成本線、JR武蔵野線、JR両毛線、JR青梅線、JR外房線、東武野田線、都営大江戸線、JR根岸線、京急本線、小田急江ノ島線

(2014年2月24日収録、2月28日路線名一覧追加、2016年6月1日路線別自殺者数の近年の動き)


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