県民性を示す信頼できるデータを紹介しよう。

 国民生活基礎調査の3年毎の大規模調査時には健康票による調査が行われている。この際、「こころの状態」として精神的な問題の程度を聴く6つの問が設定されているが、図の(注)に記したように精神的な問題が少ないほど点数が少ない結果となる。ここでは、全体の点数が少ない人の割合、あるいは総合平均点の低さを県別に示した。精神的な問題が少ないほど心が平安あるいは健全ということであるが、これを「のんき度」としたのは本図録でのオリジナルな評価である。しかし、この評価は常識から乖離してはいないと考えられる。

 図を見て誰でも気がつくと思うが、のんき度は東低西高の地域構造をもっているといえる。以下に詳しく見ていこう。

 各年の結果には、調査時点までにそれぞれの県民を襲った経済状態の変化や災害など外部的要因の影響も反映されていると考えられるので、県民性の判断には数年次の結果で共通した傾向を読み取らねばならない。

 のんき度は、概して、西高東低の地域構造をもっているといえる。傾向として、東北が最も低いレベルにあり、九州・沖縄が高いレベルにある。特に、沖縄は3年次すべてで全国トップののんき度である点が目立っている。地球規模でも日本でも北国気質と南国気質の対比が語られることが多いが、その通りのデータになっているといえる。

 細かく見ていくと、同じ北方圏に属すとはいえ、北海道は東北と比べるとのんき度が高く、2013年には全国第2位となっているぐらいである。必ずしも気候風土だけが県民性の要因ではないことが分かる。

 東北地方の中では2013年に岩手、宮城、福島が全国の中でも最低水準のレベルとなっているので、この年次だけ見ると東日本大震災の影響かとも思われるが、のんき度の値は全体に2010年から上昇しており、2007年、2010年にも岩手と宮城は東北の中ばかりでなく全国の中で最低レベル、福島も2010年にはやはり低いレベルだったので、外的要因というより、むしろもともとの県民性の反映といえそうである。

 関東地方では、北関東や埼玉は水準が各年次で水準が一定していないが、それ以外では、千葉と神奈川が高く東京が低いという傾向が認められる。臨海県のゆとりと首都のきぜわしさとの対比だとも感ぜられる。

 北陸・甲信地方では、新潟、富山と長野で低く、それ以外で高いという傾向が認められる。富山と石川では隣県であり県民性が似ていると思われがちであるが、のんき度では富山が低く、石川が高いという対照的な県民性となっている。長野県民は物事を難しく考える傾向がありそうだ。

 全体にのんき度が高い九州地方の中では佐賀県民だけは一貫してのんき度が低いようだ。大分県民は2007年、2010年はのんき度が低かったが2013年には隣県とそれほど変わらない水準となっている。

 だから何なんだといってしまえばそれまでであるが、なかなか興味深いデータだと思われる。

【コラム】県民性の分かる公式データ

 県民性を話題にするデータが氾濫しているが、信頼できるものは少ない。調査設計が科学的でなく、また調査の対象人数も少ないデータをもとにあれこれ論じてみても、とらえどころのない空しい結果に終わることが多い。

 国勢調査や人口動態統計のような全数調査なら県別であろうと市町村別であろうと信頼できるデータが得られる。ところが、サンプル調査であると人口数の少ない県ではサンプルも少なくなってしまうので県別集計まで信頼できるデータを得るためにはかなり大規模なサンプル数の調査が必要となる。これは市町村民が対象の意識調査でも全域のデータであれば千人ほどのサンプルがあればよいところを域内の各地区別についての確からしいデータを得ようとすると全体で数千人というオーダーのサンプルが必要となるのと同じことである。

県民性を示す県別データが得られる主要な統計調査等
調査主体 調査名 頻度 サンプル数
総務省統計局 国勢調査 5年毎 全数
就業構造基本調査 5年毎 47万住戸、そこに住む15歳以上世帯員
社会生活基本調査 5年毎 8.3万世帯、20万人(10歳以上)
全国消費実態調査 5年毎 (二人以上の世帯)51,656世帯
(単身世帯)4,696世帯
家計調査 毎月 (二人以上の世帯)8,000(5,500)世帯
(単身世帯)670(450)世帯
 *()内は県庁所在市・政令市
厚生労働省 人口動態統計 毎年 全数
国民生活基礎調査(大規模調査)  3年毎 (世帯票・健康票)30万世帯、74万人
国民健康・栄養調査(大規模調査) 随時(最新2012年) 2.4万世帯、6.1万人(1歳以上)
NHK 全国県民意識調査 随時(最新1996年) 各県900人,全国計42,300人
(注)家計調査の場合、県別ではなく県庁所在市・政令市別のデータが公表される。県庁所在市・政令市別データの毎月のサンプル数は余りに少ないので、通常、年平均、あるいはむしろ3カ年平均のデータが使われる。

 上に、県民性の判断に関係がありそうだと思われるデータのうち、調査設計が科学的でサンプル数も多く、県別まで集計されている官庁統計等の統計調査等の一覧表を掲げた。

 全国で5万世帯以上といったサンプル数がないと信頼に足るデータは得られないと考えられていることが分かる。厚生労働省の国民健康・栄養調査(大規模調査)やNHKの全国県民意識調査はサンプル数がやや少ないが、県別に一定数以上のサンプルで調査し、全国集計するときは県別ウェイトで戻すというような工夫を行っている。なお、NHK調査は信頼に足る県民性データとして様々に分析、活用されたが、今や古すぎるので新しい調査実施が求められている。

 この中で、比較的サンプル数が多い抽出調査は、就業構造基本調査(5年毎)と国民生活基礎調査(3年毎の大規模調査)であり、世帯総数の1%弱に当たる30万〜47万世帯を調査している。

(注)2010年国調では、概数で、全国の人口1億3,000万人、一般世帯数5,200万世帯(うち二人以上の世帯3,500万、単身世帯1,700万)

 就業構造基本調査は、毎月失業率が発表される労働力調査がサンプル数が少ないため、都道府県別の結果が得られないのに対して、5年毎に都道府県別までの詳細な就業関係のデータを得るために行われている。国民生活基礎調査の大規模調査も毎年の簡易調査では得られない詳細かつ地域別データを得るために3年毎に行われている。

 国民生活基礎調査の大規模調査は、このように、都道府県別の比較的信頼できる情報を得られる調査であるのに、意外とその結果は活用されていないようである。そこで、その一例として、本文に県民のんき度ランキングのデータを紹介した次第である。

(2016年3月13日収録、4月21日コラム補訂)


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