花粉症のアレルギーで悩む人が多くなった。スギ花粉症に罹っている人の割合(有病率)を都道府県別にグラフ化した。

 データは、日本アレルギー協会が全国の耳鼻咽喉科医師の協力の下に行った花粉症に関する疫学調査による(宇田川勝司「数字が語る現代日本の「ウラ」「オモテ」 」学研新書)。一般の患者数を調べるのではなく、耳鼻咽喉科医とその家族そのものの花粉症罹患状態を調査した結果である。耳鼻咽喉科医なので花粉症の診断基準が統一しやすく、その他のアレルギーとの違いやスギ花粉症かその他の花粉症かが把握できるので、こうした調査方法を採用したのであろう。

 2008年のスギ花粉症の全国の有病率は26.5%と4分の1をこえた点が目立っている。10年前の1998年には16.2%だったのでほぼ10%ポイントの増加である。

 都道府県の中では山梨が44.5%と最も高く、高知の41.2%がこれに続いていた。栃木、埼玉、静岡が3〜5位である。

 ほとんど花粉症が見られないのが北海道と沖縄であり、それぞれ、2.2%、6.0%の有病率であった。

 北海道と沖縄にはスギの人工林がないので、スギ花粉症も発生しないのだとされる。このため、北海道や沖縄に花粉症を避けて旅行する「花粉症疎開ツアー」のあらわれた。一種のヘルスツーリズム、メディカルツーリズムといえよう。

 そこで、次ぎに、都道府県別のスギ花粉有病率とスギ人工林比率(森林面積に占める比率ではなく、都道府県の行政面積に占める比率)の相関図を描いてみた。

 確かに、北海道、沖縄は両方の指標が低くなっているが、その他の地域は特に相関がないように見える。スギ人工林比率が4割近くを占める宮崎のスギ花粉有病率は沖縄に次ぐ低さなのである。逆にスギ人工林比率が低い山梨は、有病率は最高となっている。

 このようにスギ花粉の有病率が必ずしもスギの人工林の多さとは比例しない理由としては以下のような点が考えられる。

(1) 風向きによって隣接した地域には花粉が広域的に飛散するので都道府県の境域を超えた影響が大きい可能性

(2) スギ花粉症でもヒノキの花粉飛散量が影響する可能性(またはスギ花粉症とヒノキ花粉症が必ずしも区別して診断できない可能性)

(3) 手入れされた森林と間伐がされていない森林との間、また平均樹齢の異なるスギ人工林では、同じ面積でも花粉の発生量に差が出る可能性(樹齢30年生以上で花粉の飛散量が増えるといわれる)

(4) 日照時間や降水量の違いにより森林からの花粉の発生量に差が出る可能性(花粉は夏の日射量が多く、降水量が少ないほど飛散量が多くなるといわれる)

(5) ある一定以上のスギ花粉であれば、花粉量の影響は小さくなって、むしろ、大気中の排気ガス、平均気温等の影響が高くなる可能性や地表面がアスファルトであると花粉が再度舞い上がる可能性(都市における相乗効果の可能性)

 (1)にかんして、都道府県毎に相関を見る代わりに、もっと広域的に地方ブロック毎に相関を調べれば、相関度が確かめられるのではと考え、作図したのが「地方ブロックの相関(1)」である。これでも、北海道、沖縄を除いた地方の間では相関が認められない(というより負の相関となっている)。

 次ぎに(2)の影響を見込んで、スギだけでなくスギの半分以上の面積があるヒノキも足した人工林の面積比率と有病率を相関させた「地方ブロックの相関(2)」を作成した。これで見れば、関東・東山と九州を除けば、ほぼ正の相関が認められる。やはりヒノキも大きな影響を与えるのだ。

 地方ブロックごとの相関に関しても以下の制約があると考えられる。

(6)地域ブロックも超えてスギ花粉が飛散する可能性

(7)地域ブロックの中の人口の片寄りが影響を与える可能性

 (6)に関連して、以下に首都圏住民の花粉症に影響を与えるスギ林の影響度マップを下に掲げた。

 これを見ると、首都圏に対しては、風の流れによるものと考えられるが、東海ブロックに属する静岡のスギ林が大きな影響を与えている。すると、「地方ブロックの相関(2)」の関東・東山の位置は少し右にずらしても良いということになる。

 また九州ブロックの人口集積地帯は、北部の福岡・北九州地域に片寄っている。「地方ブロックの相関(2)」の中四国・九州は1つにしてしまった方がよいのかも知れない。

 こうして頭の中には、もっと相関度の高い図を描くことができよう。


(2010年1月22日収録)


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