東日本と西日本とでは食文化が異なるという点は、違う出身地の人との会話などから日常よく気がつかされる事実である。しかし、もう少し仔細に検討してみると、東日本と西日本というより、近畿・中四国とその他地域との食文化の違いと言った方が正しい場合が多い。すなわち九州は関東・東北と似た食文化を持つ場合が多い。

 ここでは、納豆、さといも(サトイモ、里芋)、パン、ソースの消費について、こうした地域分布が成立していることを地図で示した。納豆とさといもは東日本と九州の人に好まれ、近畿・中四国の人は余り食さない(さといもが気候上、北東北・北海道でも消費が少ない点は例外として)。逆にパン、ソースは近畿・中四国で好まれ、東日本・九州では余り好まれない。

 パン、ソースは明治維新以後の洋食文化として導入、開発されたものであるが、納豆、さといもは稲作がはじまる前に照葉樹林文化の要素として日本に伝来した古い食品であると考えられている(さといもが納豆より古く東南アジアのヤムイモ、タロイモなど根菜農耕文化の要素として別個伝わった可能性、また納豆が一度東南アジアに伝わり、それから日本に伝来した可能性もある)。

 縄文時代にはすでに日本全国にひろがっていた納豆、さといもの食文化に対して弥生時代以降に水田稲作とともに新しい食文化が北九州、中国を経由して、畿内へともたらされ、中四国・近畿にはその他の地域とやや異なる食嗜好が成立したと考えるとこうした食の地域構造を理解しやすい。

 納豆とさといもの都道府県別消費については図録7756参照(納豆とさといもの食文化についても詳述)。パン、ソースについては、それぞれ、図録7725(予定)、図録7740参照。

 生体の頭長幅指数分布や血液型A因子頻度分布、憑きものの分布など弥生人が九州南部から西日本に広がり、一部が関東にも入植した名残りと見なせる分布図を図録7720に示したが、同じような分布が食品消費にも見られるということだろう。

 パンを好む地域が近畿・中四国の他、東日本の中でも埼玉、神奈川にもあるのを、明治以降の舶来文化の影響と見るか、弥生人の関東への飛び地的な入植の影響と見るかは見方の分かれるところであろう。なおパン食嗜好自体をもっぱら明治以降の舶来文化の影響と見ることはパン好きな地域の分布が関東とは異なって、近畿・中四国でずっと広いことから適切でないだろう(朝食パンが5割以上を占めるのは近畿のみという点は図録0329参照)。

(2008年8月3日収録、2014年12月16日図録7720作成に際してこの図録にあった頭長幅指数分布の図や小泉保の研究に関するコメントを移動)


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