世界価値観調査による国際比較では日本人の特徴として無宗教が多く、宗教の中では仏教が多い点を図録9460で見た。それでは国内の各地域における宗教の状況はどうであろうか。NHKが1996年に行った全国県民意識調査の結果によって都道府県別の信仰の状況をグラフと地図で示した。

 グラフには、都道府県民がどのような宗教・宗派を信じているか、またその合計値として信仰をもっている人の比率を示した。

 信仰を有している者の全国平均(都道府県の値を人口比で加重平均したもの)は31.2%である。世界価値観調査では宗教をもっている者の合計は41.2%であったので、これよりはやや低い数字となっている。ちなみに「無宗教」という選択肢への回答は、都道府県民調査では64.0%(選択肢は「信仰はしていない」)、世界価値観調査では、51.8%(選択肢は「宗教をもっていない」)となっていた。信仰はしていないが家の宗教はあるということから世界価値観調査の方が宗教ありが多くなっているのかも知れない。

 都道府県別の結果を地図に表示したものを見ると、信仰ありの県民割合は、静岡・長野以西と以東ではレベルの差が目立っており、明らかに西高東低の傾向を示している。

 西日本の中で例外的に信仰ありの比率が低いのは、高知や沖縄である。

 また、信者が最も多い宗教・宗派の地図を見ると、信仰ありの比率の高い西日本・北陸地域では、「浄土宗・浄土真宗系」が多く、信仰ありの比率の低い関東・東北地方では「天台宗・真言宗系」あるいは「禅宗系」が多くなっている。特に禅宗系は他がすくない分、東北で目立つ。また西日本の中でも四国や岡山では天台宗・真言宗系が多い(西日本の中で多い北関東より比率的には大きい)。なお、日蓮とその弟子が多くの寺を開いた山梨では、唯一、「日蓮宗系」が最多となっている。

 こうした宗教分布の状況を、全国県民意識調査の報告書(「現代の県民気質」)では、こう総括している。

 信仰ありとなしの「分かれ方の背景には、地理的条件、あるいは仏教の伝播という文化的・歴史的背景の違いがある。関東以北が歴史の表舞台に登場してくるのは、鎌倉時代以降である。それまでは奈良や京都が中心で、初期の仏教もこれらの地域を中心に普及し、その後徐々に地方へ波及していった。そして、鎌倉時代には臨済宗や曹洞宗などの禅宗が栄える。こうしたことが、関東以北では宗教を信仰している人が少なく、その一方で東北地方では禅宗の信者が多いことと関係していると思われる。

 そして、西日本では例外的に高知と沖縄で「信仰はしていない」という人が多いが、沖縄では民間信仰が盛んで、仏教は民衆に広まらなかったという指摘もあり、また、高知とともに文化や政治の中心から遠かったという地理的な条件も関係していると思われる。」

 なお、上のグラフでは、この他、全国的に信者が分布している創価学会が大阪と広島で特に比率が高い点、またキリスト教信者が知識人の多い東京、隠れキリシタンの伝統をもつ長崎、そして米軍の影響が強い沖縄で多い点などが目を引く。

(2009年1月7日収録)



サイト内検索
図録書籍 図書案内




既刊第1弾


既刊第2弾