東京新聞の大図解およびそこに寄稿している安田文吉氏によれば保存団体が全国に約200あるといわれる地芝居は、農村(農民)歌舞伎、地下(じげ)芝居、地歌舞伎、屋台・曳山歌舞伎(町場の地芝居)、子ども歌舞伎などともいい、江戸時代に、前代の風流(ふりゅう)踊り、盆踊りの全国普及を背景に、都の文化、新しい芸能だった歌舞伎へのあこがれからはじまったとされる。

 当初は、江戸、京都、大阪、伊勢、名古屋などから歌舞伎の一座を村まで呼んできて、庄屋の家などで見た(買芝居)が、これもそう簡単ではないため、旅の役者らの手ほどきで自分たちで演じるようになったという。しかし、農民が綺羅(派手な衣裳)を着て歌舞伎を演じることは江戸時代には原則禁止のため、神仏への奉納というかたちで上演されたのだという。

 その後、明治から昭和始めに最盛期となったが、映画、テレビなど娯楽が多様化したため、昭和30〜40年代には衰退した。近年では、地域の伝統芸能の継承の気運が高まり、保存会などが結成され、復活や継承がなされるようになった。

全国の地芝居
no 名称 所在地 公演日・公演場所 解説
1 福浦歌舞伎 青森県佐井村 3月中旬、歌舞伎の館 明治の中頃伝わった、漁師たちによる漁村歌舞伎。方言の交じるセリフも
2 黒森歌舞伎 山形県酒田市 2月15、17日、黒森日枝神社 雪中芝居として知られる。300年以上継承されている。前年3月にくじ引きの神事で演目を決めるなど年間関連行事が多い
3 檜枝岐歌舞伎 福島県檜枝岐村 8月18日鎮守神祭礼 270年以上の歴史がある。鎮守神の境内にある舞台は国指定重要有形民俗文化財。上演団体は千葉之家花駒座
4 西塩子の回り舞台 茨城県常陸太田市 原則3年に1度組み立てて公演 日本最古の組み立て式歌舞伎舞台。西若座などが公演。震災の影響で延び、今年10月19日、5年ぶりに公演
5 上三原田歌舞伎舞台 群馬県渋川市 11月 日本最古の回り舞台。舞台セットが天井と奈落にあり、同時にせり上げせり下げる二重せり機構をもつ。例年11月だが、修復中のため今年はなし
6 小鹿野歌舞伎 埼玉県小鹿野町 毎年11月の町の「歌舞伎・郷土芸能祭」 「町中が役者」といわれる土地柄。一般に子ども歌舞伎が多い屋台歌舞伎を大人が行うのも特徴のひとつ。各神社の祭り日にも奉納される
7 秩父歌舞伎 埼玉県秩父市 5月定期公演、12月3日「秩父夜祭」 地芝居には珍しく、江戸時代の役者の名跡襲名披露を行う。「秩父祭の屋台行事と神楽」は国の重要無形民俗文化財
8 藤野歌舞伎 相模原市緑区 10月定期公演 相模地域の地芝居の伝統を継承
9 塩沢歌舞伎 新潟県南魚沼市 2月第3土曜日「雪譜まつり」 江戸時代から雪中芝居の伝統があった
10 大鹿歌舞伎 長野県大鹿村 5月3日・大磧神社、10月第3日曜日・市場神社 300年引き継がれている。原田芳雄さんの遺作映画「大鹿村騒動記」に取り上げられた。独自の演目・演出も持つ
11 祢津東町歌舞伎 長野県東御市 4月29日・日吉神社 市内に西宮、東町の二つの歌舞伎舞台があり、ともに県指定有形民俗文化財
12 下條歌舞伎 長野県下條村 11月23日・コスモホール 300年近い歴史を持つ。天保年間の庄屋・古田鷹麿が書いた「貞女鑑やの字結」などの独自演目がある。天保年間の公演で使われたPR用の辻番付のカラー版木が残っている
13 小松曳山子ども歌舞伎 石川県小松市 5月10〜13日の「お旅まつり」 「お旅まつり」の中心的行事。ほとんどが女子児童によって演じられる
14 白雲座歌舞伎 岐阜県下呂市 11月2、3日・白山神社 「白雲座」は江戸時代の古い舞台をこわして、その一部を利用しながら、1890(明治23)年につくられたとされる芝居小屋で、国指定重要有形民俗文化財。全国的にも珍しいコマ回し式舞台が設置されている
15 鳳凰座歌舞伎 岐阜県下呂市 5月3、4日の日枝神社、熊野神社祭礼 1883(明治16)年に建てられた小屋「鳳凰座」で公演。演技力に定評。小屋は県指定の重要有形民俗文化財
16 美濃歌舞伎 岐阜県瑞浪市 8月最終土曜日、10月第1金曜日 活動拠点の「相生座」は明治時代に建てられた小屋を移築復元したもの。水舟(水槽)の仕掛けを持つ。博物館としても衣裳やかつらなど約4000点を収蔵
17 東濃歌舞伎 岐阜県中津川市 3月第1日曜日・東濃ふれあいセンター 東濃を代表する伝統を継承。古台本の復活に努力
18 村国座歌舞伎 岐阜県各務原市 原則10月第2土曜、日曜日・村国神社 上演舞台は現在最古の地芝居用歌舞伎小屋で、国指定重要有形民俗文化財。大人歌舞伎から40年ほど前、子ども歌舞伎に切り替えて奉納
19 小原歌舞伎 愛知県豊田市 5月最終日曜日、10月27日の文化祭り・いずれも小原交流館ザ・小原座 役者、太夫、三味線など自前
20 新城歌舞伎 愛知県新城市 12月1日・新城文化会館 市内八つの地区で伝承されている。市と一体化して継承
21 田峰観音奉納歌舞伎 愛知県設楽町 2月12日・田峰観音 小屋掛けが特徴。谷高座により上演。子ども歌舞伎も奉納される
22 横尾歌舞伎 静岡県浜松市 10月第2土曜日とその翌日・開明座 スタッフが自前でそろう。独自演目、演出がある
23 長浜曳山歌舞伎 滋賀県長浜市 4月13〜16日の「長浜曳山まつり」 男児のみによる曳山上の子ども歌舞伎で最古の伝統がある
24 下谷上歌舞伎 兵庫県神戸市北区 4年に1度 古い舞台群が集中する地域の代表的舞台「下谷上の舞台」を仕様。同舞台は国指定重要有形民俗文化財で全国唯一、花道の一部が回転し、反り橋が出る機構をもつ
25 上三河の農村舞台 兵庫県佐用町 2年に1度。今年秋頃予定 つり下げられた中2階が回り舞台と逆回転する
26 出雲歌舞伎むらくも座 島根県出雲市 11月24日・スサノオホール 戦後演じられなくなった出雲歌舞伎を発掘復活。海外公演も積極的にこなす
27 栗井春日歌舞伎 岡山県美作市 体育の日直前の土曜、日曜・春日座 上演スタッフは自前。市と一体化して継承
28 横仙歌舞伎 岡山県奈義町 年4回の定期公演 播州歌舞伎の伝統を継承。独特の演出も伝わっている
29 肥土山農村歌舞伎 香川県小豆島 5月3日・離宮八幡神社 江戸時代からの伝統がある。国指定重要有形民俗文化財の舞台で島の地芝居を継承
30 中山農村歌舞伎 香川県小豆島 10月第2土曜日・春日神社 江戸時代からの伝統がある。国指定重要有形民俗文化財の舞台で島の地芝居を継承
31 甘木盆俄 福岡県朝倉市 10月下旬の日曜日 須賀神社に奉納した風流踊りが始まりで、次第に歌舞伎に転向した。珍しい、町衆(都市部の町人)による地芝居
32 国見歌舞伎 大分県国東市 10月26日ごろ、11月17日 九州地方の地芝居伝統を守る数少ない歌舞伎
(資料)東京新聞大図解「全国地芝居マップ」2013年6月2日、公演月の一部各HPサイト

(2013年11月15日収録)


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