途上国においては海外出稼ぎからの収入・送金額(remittances)がODAの2倍以上になっていると言われ、出身国の家族の生活にとってますます重要な要素となっているため関心も高まっている。すでに図録8100でフィリピンとバングラデシュの出稼ぎ収入対GDPがどのように拡大してきたかについてふれたが、ここでは、主要な出稼ぎ国の比較を行った。

 ここでの出稼ぎ収入には、国際収支上の移転額である「労働者送金」の他に、季節労働などによる海外での「雇用者報酬」、あるいは母国に持ち帰った資産の「資本移転」などを含む。宝石を現物で持ち帰ったり、申告しない送金など、公式統計にあらわれない額が半分以上あるとも言われるので図中の数字は過小である可能性が大きい。また出稼ぎという表現をとっているが、出稼ぎから定住労働に移行した者の送金も含んでいる。

 国別ではホンジュラスやレバノンでは出稼ぎ収入が2割を越えており当該国にとって重要な所得源となっている様子がうかがえる。

 絶対額的には、メキシコ、インドが210億ドル以上、フィリピンが136億ドルと大きい。対GDP比率の大きさも加味するとフィリピンが世界最大の出稼ぎ国といえよう。出稼ぎ収入比率が高いラテンアメリカ諸国が多いが、その場合、米国が主たる目的地となっている。なお、ベルギーの出稼ぎ収入が絶対額で大きいのが目を引くが、この場合は、国境を越えてオランダやルクセンブルグに通勤する者が多いためであり、他国とは事情が異なる。

 グローバリゼーションの進展の中で労働者の国際移動も重要な経済要素となってきており、こうした指標がますます重要性を増していくと考えられる。

 私の経験では、2000年度の「現地NGO、現地地方公共団体の経済協力への参加に関する実態調査」(経企庁委託調査)で対象国としてバングラデシュ、フィリピン、マレーシアを現地調査した際、苦労してIMFの国際収支統計から「労働者送金」と「雇用者報酬」を足し合わせて、海外労働からの収入を算出し対GDP比の指標を計算したが(それが図録8100の元となった)、今では、世銀のWorld Development Indicatorsがこれらの指標値自体を掲載するようになっており、それを受けてベーシックなOECDの統計集であるOECD Factbookにも取り上げられるに至っているのである。

 なお、ここで図の対象国となっているのは、30カ国であり、内訳は、海外出稼ぎ収入対GDP比が高い順に、ホンジュラス、レバノン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ハイチ、ジャマイカ、アルバニア、エルサルバドル、フィリピン、ガイアナ、ドミニカ共和国、グアテマラ、モロッコ、バングラデシュ、スリランカ、チュニジア、ルーマニア、エクアドル、ブルガリア、パキスタン、エジプト、クロアチア、メキシコ、インド、コロンビア、ナイジェリア、ベルギー、ペルー、ポルトガル、ポーランド、ニュージーランドである。

(2007年6月1日収録)

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