中国の少数民族は55あるが、チワン族が人口1,600万人と最も多い。次ぎに人口1,000万人前後の満州族と回族が続いている。(中国の少数民族の分布地図は図録8231参照)

 少数民族といっても11億人以上いる漢族と比べて少数であるだけで、チワン族はチリやオランダと同程度の人口であるし、満州族、回族はハンガリー、スウェーデンと同程度の人口とかなりの人口規模である(図録1167参照)。

 チベット族は542万人と第9位の人口規模をもつ。500万人台の国としてはヨルダン、デンマーク、フィンランドといった諸国があげられる。

 最少人口はロッパ族3000人であり、少数民族の間の人口規模の差は極めて大きい。

 なおここで使用している「中国統計年鑑」(統計資料のHP公開あり)は政府の公認統計書であり、55の少数民族というのも公認の位置づけである。

 以下に各民族について人口順に特徴などをまとめた一覧表を掲げる。

中国の少数民族
人口順位 少数民族名 中国語名 英語名 人口(人) 主な居住地 特徴
1 チワン族   壮族 Zhuang 16,178,811 広西・雲南・広東・貴州・湖南 中国の少数民族中最大の人口を有する民族。漢族との交流が長く、黄、陸、莫、僮などの漢字姓を名のるのが特徴的である。歌垣が有名。
2 満州族 満族 Manchu 10,682,262 遼寧・黒竜江・吉林・河北・内蒙古・北京 清朝の支配民族であった歴史からほぼ中国全土に分布。漢族との同化が進んでいるが、近年、母語復興の動きも見られる。
3 回族 回族 Hui 9,816,805 寧夏回族自治区をはじめほぼ中国全土 唐の時代に移住したアラビア人、ペルシア人が源流。歴史的形成が複雑で、苦難に満ちた歴史を歩んで来た。
4 ミャオ族 苗族 Miao 8,940,116 貴州・雲南・湖南・四川・広西・湖北 銀の飾りを多用した民族衣装、歌垣や竜船競渡などで有名。祭りには大小の芦笙が登場する。地域によって特色ある文化を有し、衣装にも違いがある。
5 ウイグル族 維吾爾族 Uygur 8,399,393 新疆 豊富な楽器を持ち、その情熱的な歌と踊りは広く知られる。長くアラビア文字を基本とするウイグル文字を使用している。
6 トゥチャ族 土家族 Tujia 8,028,133 湖北・湖南・四川 貴州省の一部に古代中国にあった古い仮面劇を伝承する地域があり、研究者などの注目を集めている。祖先を崇拝し、精霊を信仰する。
7 イ族 彝族 Yi 7,762,272 雲南・四川・貴州 武勇を尊ぶ事で知られている。独自の文字を有し、祭祀や治療を行うシャーマンが存在する。地域ごとに独自の習慣を持つ。
8 モンゴル族 蒙古族 Mongolian 5,813,947 内蒙古・遼寧・新疆・黒竜江・吉林・青海・河北・河南 16世紀に導入されたチベット仏教とシャーマニズムが併存する。遊牧は減少している。歌と舞踊を愛好する民族である。
9 チベット族 藏族 Tibetan 5,416,021 西蔵・四川・青海・甘粛・雲南 チベット仏教を信仰する。チャンタン高原を中心に今なお遊牧生活を続ける人々と、ヤルツァンポ河流域に定住して農業を営む人々に分けられる。
10 ブイ族 布依族 Bouyei 2,971,460 貴州 主として水稲耕作を行い、正月にはもちを食べる習慣がある。精霊を信仰し、祖先崇拝が盛んであり、シャーマンは宗教を司り、病気治療も行う。
11 トン族 Dong 2,960,293 貴州・湖南・広西 農業、林業、養魚などを行う。歌が豊富で、美しいポリフォニーの伝統を有する他、「鼓楼」や「風雨橋」という独特な建築物も有名。独自の言語を使うが、長く文字を持たなかった。1950年代後半に、ローマ字を採用した文字が作られた(朝日新聞2015年1月5日)。
12 ヤオ族 瑶族 Yao 2,637,421 広西・湖南・雲南・広東・貴州 槃瓠を先祖とする神話を伝承している。山地を渡り歩く焼畑耕作民として知られたが、現在では定住化が進んでいる。
13 朝鮮族 朝鮮族 Korean 1,923,842 吉林・黒竜江・遼寧 古くから半島からの移住者があったが、日本の植民地支配の影響も大きい。稲作を東北地方で早くから始めた。
14 ぺー族 白族 Bai 1,858,063 雲南 建築技術に優れ大理三塔は有名。仏教徒であると同時に、道教の影響も強い。村落の守護神「本主」の信仰にまつわる芸能が盛んである。
15 ハニ族 哈尼族 Hani 1,439,673 雲南 有名なプーアル茶を産する他、段々畑での稲作、トウモロコシ、綿花などの栽培を行う。祖先崇拝の風習が盛んで、シャーマンも多い。
16 カザフ族 哈薩克族、ハザク族 Kazak 1,250,458 新疆 アルタイ山中などで羊を中心とした遊牧を行うが、定住して農業を営む集団もある。遊牧の移動距離は、年間を通して数百キロに達することもある。老若男女とも馬術に長ける。
17 リー族 黎族 Li 1,247,814 海南 衣装は大陸のワ族とほぼ同じである一方、フィリピンと共通する踊りを有するなど文化混淆が見られる。生活は農耕を中心にしている。リー族の女性は、入れ墨をする伝統などがある。
18 タイ族 族、ダイ族 Dai 1,158,989 雲南 水稲耕作を行う。タイ暦正月の水かけ祭が知られる。祭礼には、叙事詩や語り物を語る職業歌手「ザッハン」が活躍する。小乗仏教を信仰し、村落には多くの寺院がある。独自のタイ文字による文献が豊富で、タイ暦もある。
19 ショオ族 族、シェ族 She 709,592 福建・浙江 貴州、湖南から移り住んだヤオ族の支族とされる。山地で焼畑耕作を行うが、近年、茶の栽培が多く見られる。「高皇歌」という歌はショオ族の発祥と移動を語った著名な史詩である。
20 リス族 Lisu 634,912 雲南 多くは漢族、ペー族、イ族、ナシ族などと雑居している。結婚、狩猟、家屋の新築などの際には、弦楽器や口琴などを用いた歌と踊りを欠かさない。
21 コーラオ族 i Gelao 579,357 貴州 大部分が海抜1000メートル以上の山地で、ミャオ族や漢民族などと混住する。トウモロコシを中心に稲、小麦、芋などを栽培している。一部では「かじ屋のコーラオ」と呼ばれるほど鉄細工も盛んである。
22 トンシャン族 東郷族 Dongxiang 513,805 甘粛 歴史的に様々な民族的要素を取り入れて形成された民族。古くから農業に従事してきた。彼らもまた「ホアル」などの民歌を愛好する。
23 ラフ族 Lahu 453,705 雲南 対歌や芦笙舞が盛んである。
24 スイ族 水族 Shui 406,902 貴州 水稲耕作を営む。「水書」と呼ばれる独特の文字が巫師により伝承されている。周辺のトン族などに共通する「銅鼓」と呼ばれる独特の楽器を有する。スイ族の葬式儀礼は複雑で、死者がでた場合は特別な祭壇を設け、歌舞が捧げられる。
25 ワ族 Va 396,610 雲南 ミャンマーにも同胞がいる。東南アジアと共通する「木鼓」の踊りと歌が伝承されており、祭りなどでは牛とともに重要な地位を占めている。
26 ナシ族 納西族 Naxi 308,839 雲南 トンパ教を信仰し、象形文字で多くの詩歌、宗教経典などを記録してきた。トンパ経は、民族学の資料として価値が高い。また、納西古楽を伝承しており、多種多様な楽器を有する。
27 チャン族 羌族 Qiang 306,072 四川 古代中国の西北部で勢力を誇った遊牧民、羌の一部が祖先とされる。チベット族、漢民族両方の文化的影響を受けながら、古代のシャーマニズムも保たれてきた。
28 トゥー族 土族 Tu 241,198 青海 声を高らかに響かせる「ホアル」など民歌の伝統を有する。もともとは、遊牧や牧畜に従事していたが、明代あたりから農業に転じた。
29 ムーラオ族 Mulam 207,352 広西 歌垣に代表される歌謡文化を今日に伝承している。彼らが住む地域は炭鉱が多く、現在、炭鉱労働に従事する者が増えてきた。近隣のマオナン族やスイ族と共通する文化を有する。
30 シボ族 錫伯族、シベ族 Xibe 188,824 遼寧・新疆・黒竜江 清朝時代に新疆地区の平定の為、東北地方から多くの兵士と家族が徴用され、そのまま新疆ウイグル自治区に定住している人々と、遼寧省に住む人々がいる。シボ文字は満州文字を改造して考案され、自分たちの言葉を守り続けている。
31 キルギス族 克孜族、クルグズ族 Kirgiz 160,823 新疆 民族の多くは国境をはさんだキルギスタン共和国に住む。季節に応じて山中の放牧地を移動する遊牧生活を営む。伝承されている長編叙事詩「マナス」は数十万行からなり、世界的に有名である。
32 ダフール族 達斡 Daur 132,394 内蒙古・黒竜江 かなり昔から定住生活を行う。モンゴル系民族に共通の習俗や文化を有し、シャーマニズムが盛ん。「ルリグレ」という女性集団舞踊は遠き日の狩猟生活を表している。
33 チンポー族 景頗族 Jingpo 132,143 雲南 地続きのミャンマーにも多く住み、カチン族としても知られる。水稲が盛ん。武勇を貴ぶ民族で、男は、常に長い山刀を離さない。祖先を崇拝し、精霊を信仰する。
34 マオナン族 毛南族 Maonan 107,166 広西 畑作を中心とする農耕民で、漢族とチワン族の文化的影響が強く、多神崇拝を行ってきた。願かけなどの祭礼は「師公」と呼ばれるシャーマンが執り行う。彼らは同じ姓を持つ者同士で村落を形成する。
35 サラール族 撒拉族 Salar 104,503 青海・甘粛 祖先は、中央アジアから移住した敬虔なイスラム教徒。農業を営み、小麦、ソバ、粟、ジャガイモ、大豆、唐辛子などを栽培し、また、果樹園の経営にも優れている。
36 ブーラン族 布朗族 Blang 91,882 雲南 長い間、タイ族と混居してきたため、小乗仏教の信徒が多く、共通する楽器を用いる。ミャンマー東部にも数万人のプーラン族がいる。
37 タジク族 塔吉克族 Tajik 41,028 新疆 海抜3000メートルを越えるパミール高原で、半遊牧半定住の生活を営む。鷹が英雄のシンボルであり、骨で作った笛を愛用し、鷹の舞いを模した踊りがある。
38 アチャン族 阿昌族 Achang 33,936 雲南 タイ族と深い交流関係を持ち、小乗仏教を信仰する。大部分が農業に従事しているが、刀作りの優れた集団としても知られる。
39 プミ族 普米族 Pumi 33,600 雲南 13世紀頃、チベット高原から南下し現在地に定住した。生活している地域は、平均海抜が2600メートル以上の高原山岳地帯である。以前、ナシ族に支配されていた時期があった。
40 エベンキ族 鄂温克族 Ewenki 30,505 内蒙古・黒竜江 狩猟と遊牧を生業とする。シャーマニズムが盛んで、シャーマンという言葉は、ツングース系の民族の間から源を発している。
41 ヌー族 怒族 Nu 28,759 雲南 自然崇拝が多いが、キリスト教の信者も多い。長くリス族と雑居してきたため、ヌー族のほとんどがリス語を話す。
42 キン族 京族 Jing 22,517 広西 トンキン湾の沿岸や島で、半農半漁の生活を営む。文化的には現在のベトナムの主要民族キンと共通する。豊富な口承文芸があり、「独弦琴」はキン族独特の楽器である。
43 ジノー族 Jino 20,899 雲南 1979年に55番目の少数民族として認知された。イ族、ハニ族などのイ語系集団と同じく北方から南下したと思われる。洪水神話が伝承されている。男は積極的に狩猟を行い、外出の際は弓矢か猟銃を携帯する。
44 トーアン族 コ昂族 De'ang 17,935 雲南 民族的には、ワ族に近いが、文化的には同地域のタイ族の影響を強く受け、楽器なども共通する。農業に従事し、稲、トウモロコシ、イモ、綿花、茶を栽培している。
45 ボウナン族 保安族 Bonan 16,505 甘粛 製刀技術に優れている事でも知られる。民謡が豊富で「ホアル」などの他、「宴席歌」という結婚式に歌われる民歌が有名である。
46 ロシア族 俄羅斯族 Russian 15,609 新疆 帝政ロシア時代、ソビエト革命後に、シベリア地方などから移住して住み着いたスラブ系のロシア人。都市に居住するロシア族は運輸、手工業に従事し、農村地帯のロシア族は小麦などや園芸に携わっている。
47 ユーグ族 裕固族 Yugur 13,719 甘粛 中央アジアのウイグル族と近親関係にあるとされるが、チベット仏教を信仰する。明代初期までは遊牧生活を維持していた。今は、漢語を日常的に使うが、ユーグ族のアイデンティティは強い。
48 ウズベク族 烏孜別克族 Ozbek 12,370 新疆 民族の大半は、旧ソ連ウズベキスタン共和国に住み、アフガニスタンにも130万人が住む。中国では都市部で貿易や教職などにつく裕福な家庭が多い。
49 メンバ族 門巴族 Moinba 8,923 西蔵 集居地域である錯那県は中印国境紛争地域に当たり、外国人の入境はいっさい禁止されている。チベット仏教を信仰するが、ボン教信者もいる。口承文芸が豊富である。
50 オロチョン族 鄂倫春族 Oroqen 8,196 内蒙古・黒竜江 大、小興安嶺山脈の森林地帯で狩猟生活を行い、シャーマニズムが盛ん。オロチョンは、彼らの自称で「トナカイを駆使する人々」の意味であり、また、「森に住む人々」を意味するとも言われている。
51 トールン族 独龍族 Drung 7,426 雲南 女性の顔面入れ墨の身体装飾が見られる。世界の万物に聖霊が宿ると信じ、自然を崇拝する。
52 タタール族 塔塔 Tatar 4,890 新疆 旧ソ連のタタールスタンに同胞が住む。外見は青い瞳の白人系、モンゴル系など様々。中国領内のタタール族は商業と手工業に従事している。
53 ホジェン族 赫哲族 Hezhen 4,640 黒竜江 ロシア領内にナーナイ族として約1万人の同胞がいる。松花江、ウスリー江、黒龍江(アムール川)などでサケ類、マス類、チョウザメを捕り、優れた漁業技術を持つ。
54 カオシャン族 高山族 Gaoshan 4,461 台湾・福建 日本ではかつて高砂族と呼ばれた。台湾に9部族32万人が認められている。その中のブヌン族による倍音唱法の合唱は、特徴的である。
55 ロッパ族 珞巴族 Lhoba 2,965 西蔵 インド領内にも同胞がいる。かつては狩猟も行っていたが、現在は、農業に従事。
(注)人口は2000年国勢調査によるもの
(資料)中国統計年鑑(人口)、中国まるごと百科事典HP(主な居住地、特徴)


(2008年5月5日収録、2016年1月5日?の漢字表記など)


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