中国のエンゲル係数(家庭の消費支出に占める食費の割合)は、経済発展に沿って、都市、農村ともに、一貫して低下している。これは世界共通の傾向である。中国のエンゲル係数は、1990年から2002年にかけて、都市部では、54.2%から37.7%への16.5%ポイント低下、農村部では58.8%から46.3%への12.5%ポイント低下である。

 ところが、地域別に現在の状況をみると必ずしも所得の高い地域ほどエンゲル係数が低いといった形にはなっていない。

 図録に消費支出レベルとエンゲル係数の両指標(2002年、都市世帯のみ)について地域別の高低を示した地図を掲げたが、これを見れば分かるとおり、消費水準は、所得水準の高い沿海部で高く、所得水準の低い内陸部で低いのに対して、エンゲル係数は南高北低の構造が明瞭である。北と南とで食への姿勢の違いがあるためであろう。

 このため、南部の沿海部地域では食料消費の水準が非常に高くなっている。消費水準は、上海市では対全国比1.74であるが、食料消費の水準は対全国比1.81である。同じ指標が、浙江省では、1.44に対して1.53、広東省では、1.49に対して1.52となっている。こうした南部沿海部とは対照的に、北部地域の代表地域である北京では、消費一般は1.71に対して食料消費は1.53、天津では1.19に対して1.15と食料消費水準は相対的に低くなっている。

 中国では、多様で、かつ嗜好に富んだ食料消費が発展しており、特に南部ではそうした傾向が強い。このため、南部ではエンゲル係数が所得に比して高い状況をもたらしていると考えられる。「食は広州にあり」といわれる広州では、広東料理として野生動物料理が流行り全国に影響を与えたが、2003年のSARS流行以降は、新鮮・健康の方向へ急速に転換していると伝えられる。中国人、特に南の中国人は食に関して並々ならぬ意欲を示しているといえよう。

 日本で評論家として活躍中である中国南部上海出身の張競はこう言っている。「もともと中国人の食事に注ぐ情熱にはすさまじいものがあった。それに長年の禁欲の反動なのか、食に対する欲求は日に日に増大している。人々は給料をもらってまず第一に考えるのは食べることだ。いまも市民たちの食にかける金は多い。生活水準が高くなっても、エンゲル係数はいっこうに下がらない。欧米の経済学者の理論は中国には当てはまらないようだ。」(「中国人の胃袋-日中食文化考 」バジリコ、2007年。この文章は1994年山形新聞に掲載されたもの)これは南の中国人についての観察だと思われる。

 なお、中国の1人当たりのカロリー消費の動向は図録0200、品目別の食料消費の対世界シェアの動きは図録0300に示したので参照のこと。

(2005年3月26日収録、2011年4月18日張競引用)


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