米国の1940年以降の合計特殊出生率の動きを人種、民族別に掲げた。かつては白人、黒人、そしてせいぜいアジア人といった人種別の把握でよかったが、近年はヒスパニック系人口の増加により、白人も黒人も含んだヒスパニック系か否かという民族別の把握が必要となっている。

 米国の民族人種別の合計特殊出生率(TFR)は、他の民族より格段に出生率が高かったヒスパニック系米国人が2007年の1.91をピークに大きく低下し、2012年には1.76まで下がった。これは、サブプライムローン問題やリーマンショックによる経済低迷によって特に移民女性を中心に出産延期が起こったからとされる(2013年9月5日The Wall Street Journal)。非ヒスパニック系白人はアジア人と同程度に出生率は相対的に低く、2012年には1.76となっている。黒人は1990年の2.48から1996年の2.09まで大きく低下したのちほぼ横ばいだったが最近は全米水準とほぼ同レベルで低下している。

 黒人の合計特殊出生率は、かつては一貫して白人を大きく上回っていたが、今では、米国平均や白人と同程度に至り、非ヒスパニック系白人との差も大きく縮まっている。1990年代以降、出生率の面では黒人の白人化が大きく進展したといえる。

 参考までに日本人のTFRを示したが、日本は終戦直後のベビーブーム後、急速に出生率が低下したのに対して、米国は、日本より10年遅れてベビーブームが訪れた様子がグラフから明解に見てとれる。

 なお、アジア系(太平洋島しょ部系を含む)のTFRも非ヒスパニック白人をやや下回る水準で推移している。

 米国のTFRは近年横ばいないし微増傾向から、最近は低落傾向にあるが、これは、ヒスパニック系をはじめ、各民族・人種が経済情勢の影響でおしなべて低落傾向にあるためである。

 従来から米国の中心となっている非ヒスパニック系白人については、ヨーロッパと異なり米国では政府による家族政策に目立った対策が見られないにもかかわらず(図録1580参照)、比較的高い水準を維持していた。この理由としては、(1)高い若年出生率、(2)出生力の高い宗教人口の存在があげられる(早瀬保子・大淵寛編著「世界主要国・地域の人口問題 (人口学ライブラリー 8)」原書房(2010))。同書によれば、

(1) 米国の15〜19歳女性の出生率が日本の8倍、英国・ドイツなど西欧5カ国平均の3.5倍と非常に高く、これが米国特有の現象であることを示している。背景としては、米国では若年層の避妊実行率が31.5%と低く、10代では意図しない妊娠の占める割合が82%と高い水準にあることがあげられる。

(2) 宗教心の影響でプロテスタント、モルモン教など出生力の高い層が一定以上の人口規模で存在している。白人女性の合計特殊出生率でモルモン教の多いユタ州の2.45とカトリック教徒の多いロードアイランド州の1.50の間でおおよそ1.0の差が生じている。ユダヤ教や無宗教でも出生率は低い。(この点に関連して、米国の避妊意識が西欧と異なっている点について図録2304参照)

 合計特殊出生率の推移の各国比較については図録1550参照。

(原データ)
年 次 米国平均 白 人 黒 人 アジア人 ヒスパ
ニック系
非ヒスパ
ニック系
白人
(参考)
日本
1940 2.30 2.23 2.87       4.11
1941 2.40 2.33 2.96        
1942 2.63 2.58 3.02        
1943 2.72 2.66 3.13        
1944 2.57 2.50 3.08        
1945 2.49 2.42 3.02        
1946 2.94 2.90 3.24        
1947 3.27 3.23 3.58       4.54
1948 3.11 3.02 3.74       4.40
1949 3.11 3.01 3.86       4.32
1950 3.09 2.98 3.93       3.65
1951 3.27 3.16 4.09       3.26
1952 3.36 3.25 4.15       2.98
1953 3.42 3.31 4.28       2.69
1954 3.54 3.42 4.47       2.48
1955 3.58 3.45 4.55       2.37
1956 3.69 3.55 4.73       2.22
1957 3.77 3.63 4.80       2.04
1958 3.70 3.56 4.73       2.11
1959 3.67 3.54 4.60       2.04
1960 3.65 3.53 4.52       2.00
1961 3.63 3.50 4.53       1.96
1962 3.47 3.35 4.40       1.98
1963 3.33 3.20 4.27       2.00
1964 3.21 3.07 4.15       2.05
1965 2.93 2.79 3.89       2.14
1966 2.74 2.61 3.62       1.58
1967 2.57 2.45 3.39       2.23
1968 2.48 2.37 3.20       2.13
1969 2.47 2.36 3.15       2.13
1970 2.48 2.39 3.07       2.13
1971 2.27 2.13 2.92       2.16
1972 2.01 1.91 2.63       2.14
1973 1.88 1.78 2.44       2.14
1974 1.84 1.75 2.34       2.05
1975 1.77 1.69 2.28       1.91
1976 1.74 1.65 2.22       1.85
1977 1.79 1.70 2.28       1.80
1978 1.76 1.67 2.27       1.79
1979 1.81 1.72 2.31       1.77
1980 1.84 1.77 2.18 1.95     1.75
1981 1.81 1.75 2.12 1.98     1.74
1982 1.83 1.77 2.11 2.02     1.77
1983 1.80 1.74 2.07 1.94     1.80
1984 1.81 1.75 2.07 1.89     1.81
1985 1.84 1.79 2.11 1.89     1.76
1986 1.84 1.78 2.14 1.84     1.72
1987 1.87 1.80 2.20 1.89     1.69
1988 1.93 1.86 2.30 1.98     1.66
1989 2.01 1.93 2.43 1.95 2.90 1.77 1.57
1990 2.08 2.00 2.48 2.00 2.96 1.85 1.54
1991 2.06 1.99 2.46 1.93 2.96 1.82 1.53
1992 2.05 1.98 2.42 1.89 2.96 1.80 1.50
1993 2.02 1.96 2.35 1.84 2.89 1.79 1.46
1994 2.00 1.96 2.26 1.83 2.84 1.78 1.50
1995 1.98 1.95 2.13 1.80 2.80 1.78 1.42
1996 1.98 1.96 2.09 1.79 2.77 1.78 1.43
1997 1.97 1.96 2.09 1.76 2.68 1.79 1.39
1998 2.00 1.99 2.11 1.73 2.65 1.83 1.38
1999 2.01 2.01 2.08 1.75 2.65 1.84 1.34
2000 2.06 2.05 2.13 1.89 2.73 1.87 1.36
2001 2.03 2.04 2.05 1.79 2.75 1.85 1.33
2002 2.01 2.04 1.99 1.80 2.71 1.84 1.32
2003 2.04 2.08 1.99 1.82 2.74 1.87 1.29
2004 2.05 2.07 2.03 1.83 2.76 1.87 1.29
2005 2.05 2.08 2.06 1.78 2.79 1.87 1.26
2006 2.10 2.13 2.14 1.80 2.86 1.90 1.32
2007 2.12 2.14 2.15 1.85 2.84 1.91 1.34
2008 2.07 2.09 2.10 1.80 2.71 1.87 1.37
2009 2.00 2.02 2.04 1.74 2.53 1.83 1.37
2010 1.93 1.95 1.96 1.69 2.35 1.79 1.39
2011 1.89 1.91 1.92 1.71 2.24 1.77 1.39
2012 1.88 1.89 1.90 1.77 2.19 1.76 1.41
(資料)CDC (Centers for Disease Control and Prevention), National Vatal Statistics Report, December 30, 2013
U.S.Department of Commerce, Statistical Abstract of the United States, Historical Stataitics of the US


(2004年12月5日収録、2005年11月1日・11月8日更新、2010年11月10日更新、非ヒスパニック系白人の高出生率の理由を追加、2014年12月13日更新)


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