米国の食料不足世帯は、2007年から08年にかけて、1,301万世帯から1,715万世帯へと31.8%も増加し、世帯比率も11.1%から14.6%へと急増しており、リーマンショックに示された世界金融危機に伴う米国の不況がいかに厳しいものであるかがうかがわれる。その後も、2009年、2010年といずれも食料不足世帯率は、14%台と高い水準で推移しており、経済状況の改善がなかなか進まない様子がうかがわれる。

(図録収録時のコメント)

 2009年11月17に時事通信社は「全米15%世帯が食料不足=不況直撃、子供の飢えも急増」と報じた(ヤフートピックスでも引用)。米農務省の報告によると、米国では、不況の影響で、食料不足に陥っている世帯が前年比3割強の増加の1,714万世帯となり、比率的にも1995年の調査開始以来最高の14.6%に達したという。

 当図録では貧困の国際比較として、お金がなくて食料や医療、衣服に不足した人の割合を掲載した(図録4653)。ここでは、1年間にお金がなくて食料を買えなかった人の比率は15%とある(2002年)。不覚にも米国で食料不足の世帯調査が毎年行われていることを知らなかったので早速インターネットで調べてみた。

 このデータの元となった米国農務省の食料確保調査(food security survey)は、失業率などを調べている日本の労働力調査にあたる月次人口調査(全国標本調査)(Current Population Survey (CPS))の付帯調査として1995年から毎年実施されており、調査時点は12月である。調査は過去一年間の状態を聞いているので、ほぼ調査年の1年間の状況を示しているといえる。調査は米国農務省からCPSを実施する米国センサス局への委託事業として実施されている。

 食料不足(Food-insecure)は、お金がない場合に限られ、ダイエットや多忙、宗教上の断食が理由の食料摂取の制約は含まれない。2006年以前には米農務省は、軽度の食料不足(With low food security)を「飢えを伴わない食料不足」と、また深刻な食料不足(With very low food security)を「飢えを伴う食料不足」と表していた。「深刻な食料不足世帯」は、資金欠乏に起因する世帯の食料確保難により、過去1年間に世帯員の誰かが食料摂取を減らしたか、食事を抜いたことがある場合を指し、多少刺激的な用語を使うとすれば「飢餓世帯」を示す。

 結果を見ると、確かに、米国の食料不足世帯比率は、2007年から08年にかけて、11.1%から14.6%へと急増している。

 2002年の食料不足世帯比率は11.1%であり、上記の国際アンケートの15%よりは低い。これは、個人の比率と世帯比率との違い、また質問の仕方の違いによるものだと考えられる。これを考慮すると、国際アンケートもかなり実態を反映していると確認できる。

 さて、米農務省のデータからは、種々の情報が得られる。まず、単なる食料不足というより、実際に食事が不足している深刻な食料不足の世帯(飢餓世帯)が672万世帯、5.7%も存在していることがわかる。この世帯比率は1999年から一貫して増加傾向をたどってきており、2008年にはさらに加速された格好である。米国における貧富の差のうち貧困の方の拡大を示すデータであるといえる(金持ちの方は図録4655参照)。

 さらに、子どもまでもが食事に制約を与えられている世帯が50.6万世帯、子供のいる世帯の1.3%に及んでおり、これも対前年56.7%と6割増であることを知ることができる。

 食料不足にも種々のレベルがあり、米国でも、過去1年間に丸1日食事をしなかったことのある大人のいる世帯は1.6%、子どもでそうした者がいる世帯は0.1%と少ない。

 次ぎに、世帯の属性別の結果を表で掲げた。食料不足は母子世帯や黒人・ヒスパニック世帯で厳しい。地域別には大都市圏と地方圏での差はないが、州毎には2倍以上の差がある。

属性別の食料不足世帯率(2008年、%)
食料不足世帯 深刻な食料不足世帯
平均 14.6 5.7
世帯 子ども世帯 21.0 6.6
母子世帯 37.2 13.3
高齢者単独世帯 8.8 3.8
人種・民族 白人(非ヒスパニック) 10.7 4.5
黒人 25.7 10.1
ヒスパニック 26.9 8.8
地域 大都市圏 14.7 5.7
地方圏 14.2 5.6
地域(06〜
08年平均)
全米 12.2 4.6
最高州 17.4
ミシシッピー
7.4
ミシシッピー
最低州 8.3
マサチューセッツ
2.6
ノースダコダ
(注)子ども世帯、母子世帯は18歳未満の子どものいる世帯

 日本では貧困問題が注目され、給食費が払えない、修学旅行費が払えないといったことが報道され、文部科学省がそうしたデータを公表してもいるようであるが、問題は米国のように農林水産省の守備範囲までには達していないといえよう。

 米国のこの調査は、全米の5万世帯以上を対象に行われているとのことであるが、調査の厳密性を確保するため、18項目に渡ってその都度「お金がなくて」云々としつこいほど細かく食料不足の状況状態を質問する調査票に、米国人はどんな顔をして回答しているのであろうか。1人当たりのGDPが世界一のレベルにある国民が、こんな質問票に回答しなくてはならないことに屈辱感を感じないのかと不思議な気になるのである。

 食料確保難の世帯の窮状が放置されている訳ではない。米国政府は、食料確保難の世帯に対して食料援助対策の諸事業を実施し、民間でも食料援助活動が行われている。

 本調査の報告書によれば「2008年の食料不足世帯の55%が調査の前月に食料・栄養援助の3大連邦事業のいずれかに参加したと答えている。その3大事業とは、全国学校昼食事業、栄養補助援助事業(SNAP、フードスタンプ事業の新しい名称)、そして女性・幼児・子ども(WIC)向け特別栄養補助事業である。食料不足世帯の約20%はこの1年間に民間配食事業から緊急的に食料援助を受けたことがあり、2.6%は自分が属するコミュニティの緊急キッチンで食事をしたことがあるとしている。」(米国農務省, Household Food Security in the United States, 2008)

(2009年11月24日収録、2011年10月13日更新)


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