米国は武器社会といわれるが(図録9365参照)、これは高校生、学校にも及んでいる。米国政府(教育省・法務省)は高校生の武器携行率を継続的に調査している(出所)。そうした継続調査があること自体が驚きであるが、結果にも目を見張らせるものがある。

 米国の男子高校生の28.5%、3割弱は過去1カ月間に武器を携行したことがあり、学校内でも約1割が武器を携行したことがあるとしている。女子生徒は男子よりは武器携行率は低いので、全体では18.0%(学校内5.9%)の比率となっている。

 学校内で誰から身を守ろうというのであろうか。それとも通学時が問題なのであろうか。教師もやはり武器を携行しているのであろうか。日本社会で生活していると想像しにくい状況である。

 北米在留邦人向けサイト「アメリカ生活・e-百科」を運営している山田氏からは「アメリカのケンタッキー州に15年住んでおります私にとっても少し理解しがたい統計です。これは、おそらく地域格差や学校間の格差が日本で想像できる以上に大きく、統計上、ほとんど武器携行者がいない学校と武器携行が当り前の学校の平均値として求められた結果ではないかと推定されます。北米在留邦人の大多数は安全な地域に住み、子弟も安全な学校に通っていますから、これから渡米する人たちもあまり心配なさらないよう」とのメールのお便りを頂いた。確かに集計結果が必ずしも平均的な姿ではない可能性がある。

 人種・民族の3大勢力である、白人、黒人、ヒスパニックはいずれも高い値となっている。ヒスパニックが他よりやや高い携行率となっている。アジア系生徒の武器携行率は低い。

 時系列的には、1990年代に武器携行率は低下してきていたが、2003年から2005年にかけて、一時上昇し、2007年にかけては再度低下した。1990年代に武器携行率が低下していたのは、米国社会の治安が改善し、犯罪率が同時期に低下したことが影響していると思われる(図録2788、図録8808参照)。

 ジョエル・ベストは、統計数字による真実が衝撃的な事件によって意味をもたなくなり、データも引用されなくなる事例としてコロンバイン高校乱射事件をあげている(以下の引用は「統計という名のウソ―数字の正体、データのたくらみ」原著2004年より)。1999年4月に起きた同事件は、いじめにあっていた生徒2人が銃を乱射、12名の生徒と1名の教師を射殺し、両名は自殺した校内乱射事件であり、2007年に33名の犠牲者を出したバージニア工科大学銃乱射事件が起こるまで米国史上最悪の銃乱射事件であった。

 上図も一例であるように「証拠として利用できる統計すべてから、校内暴力は1990年代の初めから終わりごろにかけて減少しているといたと考えられる。ところがコロンバインの強烈なイメージでそういう証拠が重要でなくなってしまった。1つの恐るべき事例が、校内乱射事件が多発しているということの「証明」となってしまったのだ。」「この学校は大都市の郊外にあったために、記者が現場に駆けつけるのがたやすかった。生徒を避難させ、建物を確保するのに時間がかかったので、報道陣が現場に到着し、つづく数週間に関連するニュースに添えてリプレイできる劇的なビデオ映像を撮る時間があった。」

(2009年3月4日収録、11月25日コロンバイン乱射事件の事例紹介、2010年11月29日更新、12月1日コメント修正)



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