軍事クーデターが頻繁に起こっていたラテンアメリカ(中南米)諸国でも緩やかながら民主主義への信任が広がっていると報じた英国エコノミスト誌の記事(2009.12.12号)から、中南米各国の民主主義意識に関する世論調査結果を掲げた。

 確かに各国全体を通じて、「民主主義が政府の形態としては最も良い(好ましい)」とする回答率が上昇している。

 エルサルバドルやパナマでは選挙で選ばれた大統領が就任していおり、民主主義意識が上昇しているのはもっともであるが、選挙で選ばれたマヌエル・セラヤ大統領に対して6月にクーデターが起こったホンジュラスでもそうであり、回答者の58%はクーデターに反対しているという。

 経済が混迷すると民主主義ではダメだとする意見が多くなるのが中南米では通例であったが、今回の不況ではそうした傾向が見られないという。

「Latinobarometroが調査を始めて以来、はじめて、軍より政府の方が方が信頼できるという結果が出ており、長い政治に対する軍事介入の歴史を有するこの地域にとっては画期的である。こうした状況は2001〜02年の先の不況の際にラテンアメリカの民主主義に対する信頼が揺らいだのとは対照的である。今回が異なるのは、経済低迷で政府を責めていないという点にあるように思える。さらに異なるのは、2008年までの5年間の急速な経済成長と多くの国での効果的な社会政策と何らかの所得再配分により、大きく豊かさや福祉が向上したという感覚がある点である。また、民主主義が政治的な変化をもたらし、例えば、左翼が多くの国で政権を獲得することを可能にしたという事実が影響を与えているともいえる。...民主主義への信頼が増しているのは、金融危機にもかかわらず市場経済に対する支持が大きくなっていることとパラレルである。」(The Economist, December 12th 2009)

 上げ潮にあるブラジルやチリでは民主主義への信頼は上昇しているし、「ひねこびていることで有名な」ペルー人でも民主主義への信奉は増している。

 もっとも例外はある。なんとか景気後退を脱したものの失業率の急上昇などにみまわれているコロンビアでは民主主義意識は後退しているし、6月までの1年間に10.1%経済が縮小したメキシコでも暗い見方をしているのは驚くべきでないとされる。

 民主主義と市場経済に対する好意的なムードが増す中で、エコノミスト誌は、ベネズエラのチャベス大統領もうかうかしてられないと指摘している。チャベス政権支持率は同調査によると2006年の65%から2009年の45%へと低下しており、彼の国有化政策に対しても、民間企業は経済発展にとって不可欠だとする意見が81%と増加している。反米をウリにしているチャベス政権としては、オバマ新政権が誕生後、中南米地域では米国に好意的な意見が74%と昨年の58%から大きく増加しているのであるからなおさらである、とされる。

 なお、図で取り上げた諸国は、図の並び順に、ベネズエラ、ウルグアイ、コスタリカ、ボリビア、エルサルバドル、ドミニカ共和国、パナマ、アルゼンチン、チリ、ホンジュラス、ブラジル、ニカラグア、ペルー、コロンビア、パラグアイ、エクアドル、グアテマラ、メキシコの18カ国である。

(2009年12月25日収録)


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