韓国政治における地域性については国会議員選挙を例にとりあげ図録8860に示したが、ここでは、最近行われた大統領選挙の地域別得票率の結果をかかげた。

1.2012年大統領選挙

 2012年12月の韓国大統領選挙は、大接戦の末、保守党である与党セヌリ党の朴槿恵(パククネ)氏(60)が最大野党・民主統合党の文在寅(ムンジェイン)氏(59)を破り、当選を決めた。東アジアで最初の女性大統領で、60〜70年代にかけて政権を握った父、朴正熙(パクチョンヒ)元大統領に続き初の親子2代の大統領が誕生した。前回選挙で10年ぶりに復活した保守政権は維持された。

 得票分析では、地域特性より年齢特性の方に目が向けられた。すなわち若者が支持する文在寅候補と中高年以上が支持する朴槿恵候補との対比の中で、中高年保守層が文候補優勢の見方への危機感をバネに得票を重ねるうねりを起こしたのが朴槿恵氏当選の原動力だったとされた。私には、結局、若者の方が野党支持の積極性が弱かったからであるように思える。

 地域別得票率を見ると朴槿恵氏の得票率は、父朴正熙元大統領が地盤とした慶尚道地域で約7割と高いが、それ以外の地域でも、セヌリ党が引き継いだハンナラ党の李明博氏の前回の得票率が低かった忠清道地域や済州道地域で票を伸ばして5割を越えるなど比較的まんべんなく得票したといえる。例外として目立っているのが朴正熙大統領からはじまる軍事政権への抵抗の拠点であった全羅道地域であり、革新系の文在寅氏が前回の革新系候補よりも得票率を高めている(下図参照)。一般的な報道では、全羅道地域と慶尚道地域との対比から今回の大統領選も地域対決色が濃かったとされたが、データを見る限りは、全羅道を除いて平準化が進んでいるのではないかと思われる。なお、江原道地域では朴槿恵候補への票が増加したが、これは大統領選直前の北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイル発射実験の影響が安全保障問題に敏感な北部地域で大きかったとする見方もある。


2.2007年大統領選挙

 2007年12月の大統領選挙は、野党ハンナラ党の前ソウル市長、イミョンバク(李明博)候補(66)と与党ウリ党から再編された大統合民主新党の元統一相、チョンドンヨン(鄭東泳)候補(54)、および野党ハンナラ党から分離した保守派のイフェチャン(李会昌)候補(72)という3人の有力候補の間で行われたが、結果は、イミョンバク候補が他の2候補の合計を上回る半数近くの得票率で圧勝した。

 地域別の各候補の得票率を見ると、光州・全羅道でイミョンバク候補は9%と極端に低く、逆に大邱・慶尚北道では7割を越す大きな得票となっており、逆に全羅道出身のチョンドンヨン候補は光州・全羅道で80%の高い得票率となっている。このように国政選挙の地域性が大きいと見られるが、前3回の大統領選挙では全羅道での最多得票者の得票率は9割を越えていたので、これと比べると地域性は弱まったと捉える考え方もある。

 参考までに日本の衆議院選挙(2005年の郵政選挙)の比例代表選挙区における地域毎の党派別得票率を掲げたが、日本の場合、得票率の地域性はほとんどないといってよい。あるとすれば鈴木宗男率いる「新党大地」が含まれるため北海道で「その他」がやや多い点、公明党が西日本でやや強さを発揮、ぐらいである。

 なお韓国政治における地域性については、古い歴史的な地域性に淵源をもつという説の他、軍事政権による意図的な創出という説を図録8860で紹介したが、さらに、文官優位が歴史的に続いていた韓国において、非正統的な軍事政権では権力基盤を血縁や地縁、大学・士官学校同期にもとづく個人的なネットワークに依拠せざるを得ず、結果として政権を身内で固めざるをえなかったためという説もある(服部民夫「開発の経済社会学―韓国の経済発展と社会変容 」2005年)。その結果、特定の地域に経済優遇等が片寄り、逆に不利を蒙った地域が反体制派で固められるに至ったという訳である。軍事政権の全斗煥(チョンドファン)と盧泰愚(ノテウ)、両元大統領が訴追を受け、収監服姿で手をつないで前を向き2人で立っている写真(下掲)が有名であるが、こういう状況で男どうしが手をつないでいる姿にこうした説の妥当性を感じざるを得ない。


(2006年3月18日収録、2012年12月21日更新)


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