ソ連崩壊が、結局、良かったのか、悪かったのかについては、旧ソ連15カ国のうち調査対象となった11カ国の計では、良かった(利益があった)が24%、悪かった(不利益があった)が51%となっており、過半数が悪かったと考えている。Gallup社の記事には「1991年のソ連解体以降、多くの国民が、容易でない生活を送ってきた。住民は、戦争、革命、クーデター、地域紛争、繰り返す経済不況を潜り抜けながら暮らしてきた。ロシアでも同様であるが、ロシアは旧ソ連の諸共和国に対して、今なお、かなりの経済的政治的影響力を行使し続けている」とある。

 意見は国によりかなりの差がある。スラブ系のウクライナでは、ロシアとほぼ同じ程度の55%前後が悪かった(不利益があった)としている。同じスラブ系のベラルーシや隣接するラテン系のモルドバでは、良かったとするものは同じ程度の%であるが、悪かったとするものの比率はやや小さい。

 カフカス諸国は、グルジアもアゼルバイジャンも、良かったとするものが悪かったとするものより多くなっている。グルジアでは両者がほぼ拮抗している。同じカフカス諸国でもアルメニアは、逆に、悪かったとするものが66%と旧ソ連諸国の中でもっとも多い。

 中央アジア諸国は、キルギスのように悪かったとするものが多い国からトルクメニスタンのように良かったとするものが多い国まで、ばらつきが大きい。タジキスタンはキルギスに近く、カザフスタンはトルクメニスタンに近い意見となっている。

 この設問での調査がなかったバルト三国では、良かったとするものが多そうな気がするが、分からない。

 なお、年齢別に見ると、若い世代では、良かったが悪かったと同じぐらいいるのに対して、中高年層や高齢者では、悪かったが6〜7割と多くを占めているのが目立っている。こうした状況は、Gallup社の記事によると各国で共通している(グルジアは例外で各年齢層とも同じように利益があったとする回答傾向だったが)。「これら11カ国では、年金保証や無料の医療といった高齢層のセーフティ・ネットが、ソ連邦の解体とともに消失したため、高齢者は不利益があったと回答する傾向にあるのである。」

 ウクライナ、バルト諸国など旧ソ連諸国では国民意識を抱きにくい状況にある点については図録9465参照。

 各国の価値観の違いや変化の方向については、コラム「イングルハート価値空間における旧ソ連諸国の位置変化」参照。ロシアとウクライナの価値観変化は図録9458参照。

 ロシアを除く旧ソ連諸国の人口規模と民族については図録8975参照。ウクライナの地域別人口・民族・産業については、図録8990参照。

 以下、ソビエト連邦(ソ連)崩壊後20年の年表を掲げる。

ソ連崩壊20年年表
ソ連・ロシア 旧ソ連諸国(ロシア以外)
1990年 3月 ゴルバチョフが初代ソ連大統領に 3月 ウズベキスタン大統領にカリモフが就任
4月 カザフスタン大統領にナザルバエフが就任
1991年 7月 エリツィンがソ連ロシア共和国大統領に
8月 クーデター未遂事件でゴルバチョフ一時軟禁
12月 ソ連崩壊。独立国家共同体(CIS)創設され、バルト3国を除く12カ国加盟


9月 バルト3国がソ連離脱し独立
1994年

12月 ロシア軍がチェチェンに侵攻(第1次チェチェン戦争)
7月 ベラルーシ大統領にルカシェンコが就任
11月 タジキスタン大統領にラフモンが就任
1997年   10月 GUAM結成(ロシア離れを志向するグルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバが創設。組織名は加盟国の頭文字)
1999年 8月 プーチンがロシア首相に。第2次チェチェン紛争勃発  
2000年 5月 ロシア大統領にプーチンが就任  
2001年 6月 ロシアと中国が米国に対抗し、「上海協力機構」創設(米国のミサイル防衛などを牽制する目的で創設。現在、ロシア、中国のほか中央アジアの4国が加盟)

12月 アフガニスタン対テロ戦争のためキルギスとウズベキスタンに米軍基地
2003年   11月 グルジアでバラ革命。シュワルナゼ大統領を追放
2004年
9月 北オセチア・ベスランで学校占拠事件
3〜5月 バルト3国がNATO、EUに加盟
12月 ウクライナでオレンジ革命。親欧米色が鮮明に
2005年
12月 ロシアがウクライナ向け天然ガスの供給停止
4月 キルギスでチューリップ革命。アカーエフ大統領を追放
11月 ウズベキスタンから米軍撤退
2006年   5月 GUAMが強化・拡大路線を確認
2007年 7月 14年冬季五輪のソチ開催決まる  
2008年 5月 ロシア大統領にメドベージェフが就任。プーチンと「双頭」体制に 8月 ロシアとグルジアが軍事衝突(グルジア紛争)
2009年 1月 ロシアがウクライナ向け天然ガスの供給停止 8月 グルジアがCIS脱退
2010年 3月 モスクワで連続地下鉄爆破テロ 2月 ウクライナ大統領に親ロシアのヤヌコビッチが当選
2011年 1月 モスクワ近郊の空港で爆破テロ  
(資料)東京新聞大図解「ソ連崩壊20年」2011年9月18日

【コラム】イングルハート価値空間における旧ソ連諸国の位置変化


 旧ソ連諸国のうちスラブ系のロシア、ウクライナ、ベラルーシ、及びラテン系のモルドバ、さらにバルト3国のエストニア、ラトビア、リトアニア、全部で7カ国の価値観の変化方向をイングルハート価値空間上に示した図を掲げた。

 イングルハート価値空間は、世界各国の国民の価値観を、伝統的か合理的かの軸(Y軸)と生存重視(言い換えると物的生活重視)か自己表現重視(言い換えると個性重視)かの軸(X軸)とで分析・整理した散布図であり、Y軸(伝統←→世俗・合理)は近代化の第一ステップ、すなわち農業社会から工業化社会への工業化プロセスに対応し、X軸(物質←→自己表現)は近代化の第二ステップ、すなわちサービス経済化による脱工業化プロセスに対応する価値軸として捉えられている(詳しくは図録9458参照)。

 ロシア自体、図の右側欄外に位置するヨーロッパに近づいたり離れたりと揺れているが、もともとロシアよりヨーロッパに近かったバルト3国やベラルーシも、どんどんヨーロッパに近づいているかというとそうでもなく、ロシアの方に近づいたり離れたりと価値観は揺れている。

 これに対して、モルドバとウクライナは比較的に一貫してロシアからヨーロッパに近づく傾向にある。特に、ウクライナは、かつて歴史的には西部がカトリック圏のポーランドに帰属していたこともあり、2005年にはかなり急速にヨーロッパに近づいている(ウクライナの位置とヨーロッパの位置との対比は図録9458参照)。

(2014年4月11日収録、図録8975からソ連崩壊20年年表、コラム「イングルハート価値空間における旧ソ連諸国の位置変化」を移管)


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