フランスでは公立学校でのイスラム教徒のスカーフ着用禁止(ユダヤ教の帽子やカトリックの十字架も禁止。2004年)、イスラム系を中心とした若者の暴動(2005年)やイスラム系住民との軋轢が生じている。また、2015年1月には、イスラム預言者の風刺画を掲載した週刊紙シャルリエブド編集部への銃撃やユダヤ人スーパー立てこもりを行ったイスラム過激派による連続テロ事件が発生した。これについては、フランスや欧米文化圏で「反イスラム」ではなく「表現の自由の擁護」を目指した「私はシャルリ」デモが大きく巻き起こった。

 ここでは、EU諸国のイスラム系住民(イスラム人口)と、少し古い数字であるが、フランスにおけるイスラム系住民の内訳についての図録を掲げた(山内昌之「民族問題入門」による)。

 西欧では、ドイツ、フランス、英国、イタリアにイスラム系住民(イスラム人口)が多いが、これらは旧植民地からの移民が多いためである。この4カ国では人口比で3.7〜7.5%となっており、多かった時期の日本の在日韓国・朝鮮人を60万人とすると人口比0.5%であるので、これらの国のイスラム系住民の存在感は、日本における在日韓国・朝鮮人の存在感を大きく上回っていると見られる。

フランス:マグレブ系移民
(マグレブは北アフリカ西部地域を指す)
ドイツ:トルコ系移民
英国:南アジア系移民

 フランスについては、少し古いデータであるが、第2の図で、出身地別のイスラム系住民のグラフを掲げた。チュニジア以西のマグレブ諸国、特にアルジェリア、モロッコからのイスラム系移民が多いことがうかがわれる。

 下にヨーロッパ主要国の国民の対イスラム感情をあらわした意識調査の結果を掲載した。反イスラム感情が強いのはギリシャ、イタリア、ポーランド、ハンガリーなどであり、フランスは、英国、ドイツと並んで、もっともイスラムに寛容であることがうかがえる。フランスにおける2015年1月のイスラム過激派テロの後の調査にもかかわらずである。もっとも移民の生徒はフランスでは学校でいごごちが特に悪いようであり(図録3942g)、フランス文化にある普遍主義が災いしている可能性もある。

 なお、いずれの国でも右派の反イスラム感情が強いことが分るが、フランスについて左派と右派とで反イスラムの割合の違いが特に大きい訳ではない。また、参考までに同じ調査のユダヤ人観データも掲げておいたが、ヨーロッパでは反ユダヤの感情より反イスラムの感情の方が大きいことが分る(2014年7〜8月のイスラエルのパレスチナ攻撃後でも状況は変わっていない)。これに理不尽な気持ちをイスラム系住民が抱いていたからイスラム過激派がユダヤ人スーパーを襲ったのかも知れない(図録9038参照)。


 北欧諸国ではイスラム系住民は少ないが、比率的には、最近増えている。

 東欧諸国のイスラム系住民も大いが、これはオスマン帝国時代の遺産である。EU外なので図には出ていないが、ピュー・リサーチ・センターのThe Future Global Muslim Population Projections for 2010-2030によれば、アルバニア260万人(人口比82.1%)、コソボ210万人(同91.7%)、ボスニア・ヘルツェゴビナ156万人(41.6%)が多い。図では、ブルガリア、ギリシアなど東欧のイスラム人口がこれに当る。アルバニアはアルバニア人、アラブ人、クルド人がイスラム系民族として住んでいる。

 なお、世界各国のイスラム人口については、図録9034、「欧米主要国の国籍別外国人労働者数」については、図録3835を参照。

 ここで、イスラム系住民住民数を掲げたEU諸国は、20カ国であり、図の左から、ドイツ、フランス、英国、イタリア、オランダ、スペイン、ベルギー、オーストリア、アイルランド、ポルトガル、ルクセンブルク、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ブルガリア、ギリシャ、キプロス、ルーマニア、スロベニア、クロアチアである。

(2007年2月13日収録、2015年1月26・27日更新、2016年7月14日対イスラム感情調査更新)


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