アフリカ諸国では一方多妻制という家族制度がひろく見られる。ここでは、有配偶女性のうち一夫多妻婚状態にある者の比率を図録に表示した。

 資料は、早瀬保子・大淵寛編著「世界主要国・地域の人口問題 (人口学ライブラリー 8)」原書房(2010年)及び エマニュエル・トッド、ユセフ・クルバージュ「文明の接近―「イスラームvs西洋」の虚構」藤原書店(原著2007)である。

 データの得られるアフリカ諸国の中で最大の比率を示しているのはブルキナファソの55%であり、同じく西アフリカのマリが44%で続いている。チャドの39%、タンザニアの29%など中央アフリカや東アフリカでも一夫多妻制の普及している国がある。モロッコ、イエメン、ヨルダンといったアラブ圏の中東・北アフリカでは5〜7%と一夫多妻の比率はそれほど高くない。

 アフリカの結婚制度の大きな特徴である一夫多妻婚について、早瀬保子・大淵寛編著(2010)はこう述べている。「国連アフリカ経済委員会(UNECA)の報告によると、アフリカの男性にとって一夫多妻婚の最大の魅力は、経済的誘引(数人の妻の労働力、広い土地と農業生産物の収量の増大により、富と高い地位を得る可能性)によるものである。(中略)各国人口保健調査より一夫多妻婚女性の特徴として、早婚、低学歴で農村居住であることが挙げられる。」

 なお、早瀬保子・大淵寛編著(2010)は一夫多妻婚の女性の出生率が単婚女性より1人出生数が少ないというケニヤやコートジボアールについての調査結果については、必ずしも一般化出来ないとしている。また、イスラム教徒の多い西アフリカで一夫多妻が多く、キリスト教の比重の高い東アフリカや南部アフリカで相対的に少ないことから「宗教も要因の1つと推察される」としている。

 一夫多妻制度に対するイスラム教の影響については簡単ではない。イスラム人口比率と一夫多妻婚比率の相関図を描いてみると、中東・北アフリカではイスラム人口比率が100%近いのに一夫多妻は少ない。ところが、モーリタニアを含めた中東・北アフリカの国を除くと、イスラム人口比率が高いほど一夫多妻婚比率も高くなるという相関関係が成立しているようにも見える。一夫多妻はもともとサハラ以南アフリカに従来から存在した家族制度であるが、イスラム教は、一夫一妻制に執着するキリスト教に対して、一夫多妻制に対して寛容であった。従って、イスラム人口比率の高い国はそれだけキリスト教あるいは西欧の影響度の低い国であるので上の相関が成立していると捉えることが可能であるようだ。

 この点をエマニュエル・トッドは1994年のコートジボアール(一夫多妻婚比率36.6%)の地域別の一夫多妻比率(図で使用したものより古いデータ)からこう説明している。「コートジボアールでは、北部のイスラーム教徒の一夫多妻率は44.5%で、それに対してキリスト教徒ではそれはわずか24.7%である。しかし伝統的なアニミズムの信徒における一夫多妻率は47.2%で、イスラーム教徒におけるよりもさらに高い。この現象は、アフリカの一夫多妻制がマホメットの寛容主義と想定されるものに、どれほど何も負っていないかを、よく示している。」(エマニュエル・トッド、ユセフ・クルバージュ「文明の接近」藤原書店、原著2007年、訳文修正)

 なお、一夫多妻制など伝統的家族制度への欧米人の一方的批判に対して、エマニュエル・トッドはこう反論している。「ヨーロッパ人の妄想の中で、複数の妻を持つというのは、支配者である。理論上はそうかもしれないが。しかし、現実には、一夫多妻世帯というのは、女とその子供たちからなる基礎的単位がいくつか集まったものに他ならず、このような複合的構造の中で、男はその中心にいるにはいるのだが、実際は女から女へと渡り歩くに過ぎない。そして女たちは大きな自律性を有している。男性への従属の外見を越えて、アフリカの女性は、イスラーム地域であろうとキリスト教地域であろうと、はたまたアニミズム地域であろうと、家に閉じこもることはないのである。」(同上書)こうした反論は、鯨食など非西洋の伝統的な食生活への西洋人の一方的批判への反論と通じるものがある。

 図で取り上げたのは、18カ国、すなわちブルキナファソ、マリ、セネガル、ナイジェリア、コートジボアール、ガーナ、モーリタニア、チャド、タンザニア、ウガンダ、ケニア、ザンビア、マラウイ、エチオピア、ジンバウエ、モロッコ、イエメン、ヨルダンである。

(2011年6月6日収録、6月7日若干のコメント修正)


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