世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査」が1981年から、また1990年からは5年ごとに行われている。各国毎に全国の18歳以上の男女1,000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査である。

 ここでは、自然観、社会観に関する2つの問の結果を掲げた。すなわち、「自然に対し、共存すべきか、支配すべきか」という問と「他者に対しては、理解が重要か、自己主張が重要か」という問である。

 自然との共存の回答率が高い国は、日本が第1位であり、スウェーデン、韓国がこれに続いている。低い国で目立っているのは、ベトナム、フィリピンである。

 他者に対しては、理解が重要という回答の比率の高い国は、ベトナムが第1位、日本が第2位、韓国が第3位となっている。低い国では、ベネズエラ、セルビア・モンテネグロが目立っている。

 このように、日本の自然観、あるいは社会観においては、「共存」の意識が特に強いことが、国際比較上も明らかである(付注参照)。公害問題が浮上する前の高度成長期後半には日本でも、一時期、「支配すべき」という自然観が多くなったことがある点について日本人の自然観を長期的に追った図録4250参照。

 また、自然観、社会観において、日本と韓国はほぼ同様の回答率を示しており、価値観を共有している点が目立っている。

 自然観と社会観は、必ずしも、パラレルではない。例えば、ベトナムは、社会観では、日本以上に共存を重視しているが、自然に対しては、共存というより支配すべきだとする意識が強い。また、スウェーデン、チリは自然との共存を重視するが、人間関係では、必ずしも、自己主張を軽視していない。

 米国は、自然観では中間的な意見であるが、社会観では、予想以上に、他者の考えの理解を重視している結果となっており、やや意外である。

 インドは、他国と異なり、「その他」の回答率が、両方の問とも結構あり、独特な自然観・社会観を有しているのではないかと憶測させる。

 なお、2つの問の対象国は、28カ国、ベトナム、日本、韓国、エジプト、インドネシア、米国、プエルトリコ、スペイン、スウェーデン、ナイジェリア、カナダ、南アフリカ、ジンバブエ、ウガンダ、タンザニア、中国、ペルー、インド、フィリピン、チリ、バングラデシュ、トルコ、アルゼンチン、イラン、メキシコ、ベネズエラ、セルビア・モンテネグロ、ヨルダンであり、欧米先進国、アジア、アフリカ、東欧、中南米諸国が混在している。自然観の問では、22カ国、社会観の問では27カ国が実際の対象となっている。

(付注)

 日本人の自然に対する感覚は、日本では人間が手を加える前の原始林を「鎮守の森」として残してきたことにもうかがわれる。これは中尾佐助によれば世界の中でもめずらしいことだという。

「日本人は信仰上、照葉樹林を神社林として現在まで残してきた...こんな自然保護はキリスト教にも回教にも、また本来の仏教にも、中国の道教にもなかったことである。もしこれらの宗教が日本の神道のように森を残していたならば、中国の黄河下流域のように原始林がほとんど一本残らず消失したり、ヨーロッパで自然植生に似た森林がほとんど消失してしまったようなことはおこらなかったであろう。この信仰上の理由で森林保護した日本文化は、自然保護として世界史上ユニークな成果を挙げてきたといえよう。」(中尾佐助「現代文明ふたつの源流―照葉樹林文化・硬葉樹林文化 」朝日選書、1978年)

 そして照葉樹林の中で例外的に見栄えのする花が咲く木が儀礼用の植物になっている点については図録3990参照。

(2006年10月16日収録、2010年3月13日付注追加)


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