福島第一原発の事故を受けてエネルギー政策の転換が課題となる中、従来の発電コストの見直しにも注目が集まっている。政府のエネルギー・環境会議での電源ごとの発電コストを計算している検証委員会(委員長・石田勝之副内閣相)によるコスト計算の結果(報告書案)が報道されたので、図にはこれをかかげた(毎日新聞2011.12.13)。

 報道は、今回の発電コストの見直しにより、風力、太陽光など再生可能エネルギーによる発電の高い可能性が示されたという論調である。見出しを掲げると、

毎日新聞2011.12.13「発電コスト風力8円、太陽光12円 原子力並み低下も - 2030年試算」
東京新聞2011.12.13「原発コスト8.8円 7割増、火力と大差なく」(毎日の8.9円と何故か異なる)

である。

 しかし、図を見れば分かる通り、原子力の相対的優位性は揺るがないという結果が示されている。これは、今回の試算によれば、原子力のコストに今回の事故費用を含めても、一方で、化石燃料の価格上昇、温室効果ガス削減費用による火力発電のコスト増ほどではなく、また一方で、風力や太陽光もコスト低下はこれからの見込まれるものの不確定な要素も多い(コストの最低と最高の幅が大きい)からである。

 あとは国民感情などコスト以外の要素を考え合わせて、政治決断するという格好なのであろう。

 実際は、化石燃料の価格が今後どう推移するか、また海外と比較して高い日本の化石燃料調達コストの低減は図れないのか、といった重要な要素に関する試算の前提条件が問題にされていないのが、問題であろう。今後、重要な役割を果たすと考えられるLNGの日本の輸入価格が欧米の2倍である点については図録4124参照。

 コスト等検証委員会の報告書案(12月13日)によれば、LNG火力については、以下の前提で計算が行われている。

・燃料費比率:77%(2010年)
・燃料費初年度価格:LNG全日本通関CIF価格の2010年度平均
・将来の燃料費価格:上にWEO2011の価格トレンドを適用

 なお、報道によれば、原子力に関する今回試算の前提条件は以下だったという。

@福島第一原発旧の事故対策費の想定5.7兆円を40年の稼働期間で積み立てる(0.5円分)
 ただし事故費用が20兆円に膨らむとコストは10.2円
A立地対策の補助金を含める(1.1円分)
B福島事故を受けた追加安全対策費(0.2円分)
C原発稼働率70%(近年の稼働実績より高い値、図録4050参照)
D除染や追加的な損害賠償は未定

(CDは東京新聞2011.12.13、それ以外は毎日新聞2011.12.13)

 なお、コストの一部の資本費の内訳は「減価償却費(建設費に減価償却率を乗じたもの)、固定資産税、水利使用料、設備の廃棄費用の合計」とされており、いわゆる建設のための資金調達コストにあたる資本コストは考慮の範囲外となっている。

「欧米において、原発がコスト面において劣った発電形態と見なされるのは、建設費が高く、反原発運動などの発生で工期の遅れが発生する原発が、よりリスクの高い投資であることから、資本コストを割高に評価されるのに対し、国策を遂行している電力会社が原発を建設する日本では、資本コストも国債並みに低く抑えられているので、結果的に原発がさほど割高な発電形態にならない」(竹森俊平「国策民営の罠―原子力政策に秘められた戦い 」日本経済新聞出版、2011年)

 2015年4月の同じ経産省の新試算については図録j020参照。

(2011年12月13日収録、14日LNG火力燃料費前提追加、2013年10月24日竹森引用追加)


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