比較文化史の試み 242


  多重化した世界と北極星

  下は石を素材としたもので、左が旧石器時代の石偶(せきぐう)、右が軽石に穴を穿
 ってつくられた人面像である。

大分県岩戸遺跡

鹿児島県栫ノ原遺跡

(日本の美術2 土偶 19p 原田昌幸著 至文堂)

  岩戸遺跡の石偶は、復元図などでは、目のような窪みがつけられているが、写真で
 みるかぎり確認できない。人物表現なのか、明確に断定することができない。丸い部
 分を頭部だとしても、胴体が棒状につくられ、手足が存在していないのは不自然だと思
 われる。ただ、棒が特殊な意味をもっていて、それと何かが合成されたものだろうこと
 は推測ができる。

  鹿児島県栫ノ原(かこいのはら)遺跡出土の人面像もはっきりしたことがわからな
 い。人間は丸がふたつあると顔としてパターン認識することがあり、作者が人面を意
 識してつくったかどうかは、別問題だからである。これも穴を穿つことでは、窩文と類似
 した行為であり、文化的なつながりがあることがわかる。

  さっぱりわからないのが、愛媛県上黒岩岩陰遺跡から出土した線刻礫(せんこくれき)

 で、男女の人物像だといわれるが、写真をみるかぎり確信をもてない。名前どおり、小
 石にほそい線が刻まれたもので、ところどころに窪みがつけられたものがある。扁平
 であることを除けば、7個の全体形状はバラバラで、無作為に選んだ感じさえする。

  線刻礫7個のうち3個に、横切る線で区切られた明確な区画が存在し、この点で神
 奈川上野遺跡出土の隆起線文土器に類似する。とはいうものの、隆起線文とは逆
 に、線が縦に刻まれており、これが何を意味するのかわからない。髪の毛と腰蓑(こし
 みの)を表現したものとする説があるが、違う感じがする。どうも、この時代の石偶ある
 いは石製品は、個人的な色調がつよく、公共性をあまりもっていないようだ。

  もどろう。

  旧石器時代に太陽を信仰するようになり、やがて反省から今度は星々を観察するよ
 うになる。当然、星は円環運動をすることに気づく。ところが、ひとつだけ動かない星を
 見つけるのにあまり時間を要さない。北極星の発見である。この発見によって、あたら
 しい世界観の構築が要請される。

  星々の運行が描く円は、多重化した世界観と重なりあい、変質させていく。

  多重化した世界は、それぞれ均一と理解されていたのに比べ、北極星を最上位にし
 た円盤の重なりとして理解されるようになっていく。いわば円筒形から円錐形への転換
 であり、同時に動態と静止の対構造への変化でもある。石のように動かないものの再
 発見であり、中心点の発見でもあった。

  これにより、太陽はさまざまな信仰対象のひとつにすぎなくなり、表舞台から消えて
 いくことになる。

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考古学からみた古代 (縄文時代編) その16


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最終更新日2007年5月16日