比較文化史の試み 243


  隆起線文土器の意味

  隆起線文土器は文様をつけるとき、九州地方では、底を上にして施行する。これを
 逆位の土器扱いと呼び、反対に東日本では口縁部を上にした状態、正位の土器扱い
 で施文する。もちろん、逆位で煮炊きすることはできないから、最終的にひっくり返して
 つかうことになる。このことは世界構造と地上世界の対比があることを示唆する。

逆位の土器扱い

  つまり世界構造そのままで施文する場合が、逆位の土器扱いとなり、

正位の土器扱い

 世界構造を一旦地上世界に反映させてから施文するのが、正位の土器扱いとなる。
 要するに、タイミングの違いだけなのである。その意味では、逆位の土器扱いの方が、
 オーソドックスなやり方ではあるだろう。

  九州を除く西日本では、1期では正位で、2期以降に逆位になり、4期については不
 明だという。どちらでもよさそうな気もするが、当時はそうでなかったらしい。こだわりが
 ある。地上世界を含めた世界(正位の土器扱い)なのか、世界構造と対になる地上世
 界(逆位の土器扱い)なのか、という問題であり、夜な夜な議論を戦わせたのかも知れ
 ない。この結論については、後述することになるだろう。なぜなら、文化の解析によっ
 て、古代の日本人が、どこに到達したかわかるはずだからである。

  ちなみに、写真の土器は、東日本の隆起線文土器であり、概念的にわかりやすくモ
 デル化させるために使用しているだけであり、逆位で扱われたということではない。注
 意してもらいたい。

  もうひとつ重要なことは、この時点でたくさん=Aすなわち無数という概念が成立し
 たと考えられることで、構造的には数えられるものと無数の双極となる。隆起線文が極
 端に増えるのは、多重化された世界を表現することから、無数に輝く星々を再発見し
 表現することに変わったのが原因だろう。ただし、無限や数えられないものという概念
 はないと思われる。この区別は土器の外形で行うしかない。丸底ないし平底の場合は
 世界の数であり、尖底土器では無数である。

 *

  北極星と周囲をめぐる星々の発見は、螺旋説にまとめられていた世界観に変質をも
 たらすことになる。世界はぐるぐる回りながら北極星に向かっていく。そのように理解さ
 れたようだ。

  これを上から見れば、渦巻きになる。さらに双極文様の片方になることも、容易にわ
 かるだろう。太陽から夜。夜から北極星と星々の運行。こういったことは世界のどこで
 も起こる。観察できる。だから、双極文様が世界中に分布していても決して不思議では
 ない。人間の考えることはどこでもおなじともいえるし、一毫(いちごう)の違いが千里の
 差を生むともいえる。普遍と特殊であり、文化には両方の側面があり、どちらか片方
 に偏れば予断をつくりだすだけでしかない。普遍だけで成立する文化など存在しない
 し、特殊だけで構築された文化など存在しようがない。地球以外の知的生命体との比
 較になれば、話は別だが。

双極文様

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考古学からみた古代 (縄文時代編) その17


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最終更新日2007年5月18日