撚糸文と押型文
撚糸文は撚紐(よりひも)を棒に巻き付けてから、回転押圧させて描きだす。また、土
器群としての器形は、丸底あるいは尖底を主とするが、時期があたらしくなるにつれて
尖底を極端に表現するものが出現する。これについては後述しよう。
 神奈川県大丸遺跡出土
撚糸文土器
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 新潟県卯ノ木遺跡出土
押型文土器
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(土器の造形 22p 東京国立博物館)
一方の押型文は、棒に山形や楕円形、あるいは格子目を彫刻し、これを回転押圧さ
せて文様をつくる。器形は、ほぼ尖底深鉢となる。
これらのことから撚糸文と押型文には、いくつかの相違があることがわかる。

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撚糸文
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押型文
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(同上)
写真では、撚糸文の識別はむずかしい
だろうが、よく見るとわずかに文様がある。

(縄文時代研究事典 40p 戸沢充編 東京堂出版)
施文具と文様の関係
上左・楕円押型文、上中・格子目押型文、上右・複合山形押型文
下左・山形押型文、下中・綾杉状押型文、下右・ネガティブな押型文模式図
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まず、棒をつかう。これはおなじである。つぎに撚糸文は紐を巻き付けるのに対し、
押型文は棒そのものを加工する。棒を主眼においた場合、撚糸文は凸を付属させる。
反対に押型文は彫刻するのだから、凹になることがわかる。撚糸文の波及を受けて、
押型文を成立させるプロセスが明白だろう。向こうが凸だから、自分たちは凹でいく。
そう理解して問題ない。
いずれにしろ棒がきわめて重要な役割を担っていることがわかる。もちろん、盟神探
湯から弓矢、さらに前隆起線文土器文化期の窩文を経て、撚糸文・押型文へとつなが
る系譜にあることは指摘するまでもない。余談になるかも知れないが、古事記にある
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)とは、この棒のことをいう。施文具といういい方
がつかわれるが、まず、道具という考え方が存在しない上に、どちらかといえば土器よ
り棒の方が大切だといっていい。棒が祭祀対象であり、棒をつかって文様をつけるの
は宗教的行為に他ならない。
それから回転押圧させ器面に文様をうみだすことも同様である。回転は時間の経過
を意味し、同時に施文具の凹凸が反転する。そして跡が残る。凸の施文具なら凹の跡
が残り、凹なら凸状になる。また、回転が時間の経過(といってもリアルタイムに体感
する時間だが)をもち、文様は土器として焼き上げられることにより保存される。これら
は静止した北極星と、運動する太陽・星々という構図のなかで再解釈される。棒が運
動であり、土器の文様は静止である。
違いの方は、押型文が棒を直接加工していることにある。もちろん棒を加工すること
自体が宗教的行為ではあるが、そのことを宗教的行為として捉えていた可能性はな
い。これは世俗的行為の対概念になるもので、聖俗の分離を前提にする。ただ、静止
と運動という概念は存在し、その枠組みのなかで理解されていた可能性はある。いわ
ば狩りが運動であり、土器製作を含めた祭祀が静止に位置づけられたと思われる。
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