睡眠と死の分離
この睡眠と死の分離は、太陽の運行や時間を連続体として捉える考え方から、派生
する。誕生から死までを一生というが、これは、ひとつのこととして連続していることを
前提にする。一生として再認識されるようになると、仮の死と死の違いが歴然としてく
る。なぜ人は眠るのか。現代科学は、この問いに的確に答えられるだろうか。
いずれにしろ死が断絶として考えられるようになるのは、古代文明化の洗礼を受け
てからで、話の前提が再生することになっていることに注意してもらいたい。イノシシに
しろ、シカにしろ、あるいはタケノコであっても、イノシシはイノシシであって、それ以上
は存在しない。イノシシとシカとタケノコはあきらかに違い、種として違うことはわかる。
このことは人間にとって動植物の個体識別がむずかしいことを意味する。今日食べた
タケノコと今日収穫されたタケノコは別々のものだが、そのことをいちいち意識しない。
タケノコで、終わりである。タケノコは去年も生え、来年も芽を出すだろう。イノシシやシ
カもおなじであり、春になると子供を産み、数年で死ぬ。だが、イノシシもシカも永遠に
存在する。個体の死によって、集団の生命を維持する。
これは同時に、死を知ってしまった人間の側の要請でもある。人の死は再生されな
ければならない。そして世界も死を超越して、再生されなければならない。
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留まりつづけるための竪穴と、上位に世界構造としての建物が合成されて家が成立
する。もうひとつ重要な点は、家の建築はその周辺施設とともに、意図的に自然界に
かかわり、景観を変えていくことにある。世界構造といっても人間の頭が考えだした一
種の仮定であり、この仮定を起点にして自然を加工していく。ただ、そういった意識
は、おそらく存在しないだろう。
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尖底土器そのものは隆起線文土器文化期に登場するが、この時代に特有なのは、
底部にあった突起が長大化することにある。もともと北極星は自ら光をはなつ恒星の
ひとつなのだが、当時はそのように考えられていなかった。旧石器時代編で考察した
ように、狩猟によって生じた毛皮にあいた穴の延長線上に捉えられていた。星は夜と
いう皮にあいた穴と考えられていた。世界は北極星という穴に向かって収束していく、
と理解されるようになるのには、星が穴という大前提が存在する。旧石器時代編の話
は、ここからの逆算で導きだしたものである。

(土器の造形 21p 東京国立博物館)
この穴が土器の側面にあり、概念的に一点に収束していくこととは違う様相をもって
いることは否めない。世界の多重性を表現である水平面の一部に注口があり、どちら
かといえば、中央の一点からぐるぐると渦巻きを描きながら、外に向かって広がってい
くという運動が存在する。それがやがてはみ出て注口に至るという図式であり、収束説
と反対の構造になっていることがわかる。
この時点で、さらにいくつかわかることがある。
ひとつは世界の多重性の発見に、土器に入れた水が関係していることが推測でき
る。水の量を増やせば、水面が上がり、減らせば水面がさがる。複数の土器に水を溜
めて並べれば、それぞれの水平面が異なることに気づくだろう。もちろん、この源流は
盟神探湯にあり、水を溜めた穴に焼けた石をいれることによって気化し、水量が減る
という現象がおきる。もともと、地面に掘った穴だから、浸透性が高く、通常であるなら
ば水は減っていく(場所によっては、水が湧くということもある)。これらから推察する
と、水が減るのは当然と理解し、かえって、水が漏れないようにするという発想がなか
ったように思われる。
もうひとつは減るということに関連しているのだが、数えるという考え方には、増える
だけでなく、減ることもある。当時、どうのように数えたのかわからないが、ひい・ふう・
みい……ならば、……みい・ふう・ひい、と減算しながら進めていく方法も確立している
と思われる。これは、土器をつかって煮るという行為が盟神探湯を逆走することによっ
て確立していることとおなじであり、これらの要素が相互に連関しながら、文化が形成
されていることを示す。
この構成要素を何にすべきかはモデル構築の上で重要な意味をもつが、現時点で
はあらかじめ設定することができない。現在の価値基準で選定すれば、失敗すること
が確実だからである。構築より精密に分析することの方が、優先されなければならな
い。それが当面の課題だろう。
ちなみに、この室谷下層式(むろやかそうしき)土器は、輪積み法ではなく、粘土を四
方から折り立てる箱作り手法でつくられている。この手法の成立経緯と思想は、今後
の研究課題だが、どうも対構造をふたつ組み合わせるといった指向があるように思え
る。もうひとつは、直線と曲線の対比構造があり、四角を丸く形成させるという工程も
含んでいる。
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