大木式
東北南部に分布する大木(だいぎ)式のいくつかには、口縁部にリングのようなもの
が貼りつけられていることがある。中心点にある窪みと、それを取りまく列を表現した
もので、だいたい2×2の四箇所につくられる。阿久遺跡などの構造とおなじであり、
共通理解があるものと考えることができるだろう。

(縄文時代研究事典 316p 戸沢充則編 東京堂出版 一部改変)
また、一部には渦巻き(蕨文とも)の装飾をもつものがあり、壺様の器形をもつもの
も現れる。

(同上 一部改変)
一方、関東・中部地方に分布する諸磯(もろいそ)a式では、上下二段に異なるものを
くみあわせる様式をもつ。

(同上 394p 一部改変)
ところがb式以降では、三段を意識した器形に変化する。もちろん羽状縄文が上下に
わけるという思想であり、上下だから二段になる。三段になるのは、1+2であり、三角
形でもあるが、いわば神聖という意味をもつものと解釈できる。

(同上 394p 一部改変)
大木式では、このような劇的な変化はおきていないが、右側の器形のように三段が
意識される。文様では、頸部と胴上部が対になっていて、二段も考慮されている。

三を器形で表現した、ひとつのありかたが、壺様の土器をうむ思想的背景になって
いて、道具としての様式美とは異なる価値基準をもって造形されている。構成要素とし
ては、ほぼおなじものを共有しながら、ウエイトをどこに置くかという違いによって型式
変化を起こしている。これは西日本の北白川下層式でも同様である。羽状縄文を基本
に、横走する爪形文を口縁部に三つもつもの、四本の爪形文を上下にもつものがある。

(同上 267p)
ちなみに側面図の右には、土器の内側を描くという約束事がある。切断面から土器
の厚みが変化する様子や形状がわかり、切断面から左が白の場合、無地であること
を示す。そこに文様が描かれていれば、表裏(ひょうり)縄文土器ということになる。羽
状縄文と前後するように、尖底土器文化期末ごろに出現し、前期初頭ごろに終わる。
羽状縄文が上下の双極であるならば、表裏縄文は名前どおり表と裏の世界が意識さ
れて登場する。
注意してもらいたいのは右中段にある土器で、渦巻きをふたつ向かい合わせにした
装飾がある。上下と裏表を合成させると、上の裏表、下の裏表という考え方が成り立
つ。上は直線で、ふたつに区切られ、下は曲線で三つに区切る。このことから、上が3
で下が2×2というのは、ひとつのありようだということがわかる。
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