比較文化史の試み 273


  循環思想と陰陽

  この装飾の構造は、羽状縄文とおなじようにあいだにある軸により分割され、向かい
 合わせに渦巻きを接続する。

(右を裏と仮定した場合)

  この考え方は、上下を発見するもとになった世界構造と矛盾する。上下の発見によ
 って、切断されてしまう。北極星のある上の世界と、墓のある下の世界にわかれ、それ
 ぞれが閉じた世界で再生を繰り返す、と理解されるに到る。

  このことは脇にある装飾でも表現される。世界そのものが昼と夜の繰り返しとして理
 解されてきたことは、すでに何度か説明したが、上下に分割するという思想によって時
 間の概念に変質をもたらすようになる。循環はおなじところを何度も繰り返すというこ
 とであり、閉じた世界のなかで無限性を内包する。これはもともとAとBの繰り返しとい
 う構造がもっていたものだが、空間の多重性の発見前では、空間自体が存在しないか
 ら、いわば開いた無限性となる。空間という囲いがなかったというべきか、無限の対概
 念である限定性、有限性をもっていない、とするべきか。

  右上にある土器の口縁部の装飾も、おなじ意図と考えられる。

  もうひとつ気になるのは、中央の下段にある土器と、右下の土器にある波を組み合
 わせた装飾で、ここでも大きな思想的転換がおきていることがわかる。

  縄文や貝殻文はAとBの繰り返しだが、裏と表、上下の発見により、転換していく。

  いわば表と裏が反転する世界観から、表と裏が同時に存在する世界へと変質する。
 表の現象と裏の本質のようなものだろうか。あたらしい思想によって背後に退く、あの
 考え方と結びついて登場する。

  陰陽道の陰陽と似た考え方だといっていい。陰陽道の構成要素は、日と月、木・火・
 土・金・水であり、日本では太陽と北極星、盟神探湯(くかたち)の火・木・石水・土とな
 る。月は植物(農耕)と関係が深く、また金属器の生産をしていないから金ではなく石と
 なる。もちろん、古代日本に陰陽道があったということではない。

  陰陽道として整理される要因には、戦争の悲惨な体験がある。陰陽道は、国家や個
 人の吉凶を占う。戦国時代に土<木<金<火<水の勝敗を決める相勝説と、木→火
 →土→金→水の生成配列をもつ相生説が誕生する。個人の命運が戦争の勝敗によ
 って決まり、国家さえも簡単に滅亡してしまう。すがるものを求めても不思議ではない
 だろう。だが問題は、そこではない。陰陽の上に太極を置く一元説の図案は、陰陽を
 円に組み込む。

太極(ちょっと違うが、こんな感じ)

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考古学からみた古代 (縄文時代編) その47


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最終更新日2007年7月17日