円筒下層式と宇宙樹(ユッグドラシル)
前期に、北海道西南部および東北北部で盛行していた円筒下層式は、円筒上層式
に移行する。円筒下層式と上層式の違いは、口縁部にしばしば四個の弁状突起があ
ることと、口頸部に明確な文様帯が存在することである。

(縄文時代研究事典 228p 戸沢充則編 東京堂出版 一部改変)

(同上 一部改変)
要素としては、丸や半円、三角形などを組み合わせる。これは前述の循環思想や陰
陽の木の葉などを継承したものと理解できる。文様帯は天の世界を表現したものであ
り、AのU字状のものは、上下世界を区分する水平線と双極文様を合成させたものら
しい。


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(同上 一部改変)
これもおなじ円筒上層式だが、中央の土器には木の葉をモチーフにした装飾がつく
られている。右側は、これを直線化しただけと考えていい。曲線の反対は直線だから

である。同時に、四角形は三角形の陰と陽を組み合わせたものでもある。口縁部にあ
る四個の弁状突起は、3より4の方がより神聖と理解されたということを示している。
中央の土器にある十字は、現在の世界と、裏の世界、天の世界をそれぞれ結ぶこと

を象徴させ、統合させたものである。平面での四角と、上下の四角が組み合わされ
ば、立体としての正方形になる。この時期の装飾が、過剰に立体装飾化されるのは、
この発見によるものと考えていい。

(同上 一部改変)

丸が木の葉ならば、十字が何と呼ばれたか。おそらく木あるいは幹だろう。あわせて
樹木というふうに理解され、木に仮託される。大きな樹木は世界を実現するものであ
り、世界構造そのものでもある。
この基本的な考えは、北欧神話にある宇宙樹(ユッグドラシル)とおなじと理解してい
い。ユッグドラシルの枝は天空をささえ、根は冥界へとつづく。もちろん北欧神話のよう
に整備されたものではなかったろうし、円筒上層式では葉が冥界に接続され、幹が天
空へとつづくという、いわば反転した構造をもつ。ユッグドラシルの神話は地下に冥界
があるという前提になっており、90度の回転を起こしている。神話として再構築された
のが、円筒上層式の時期よりあたらしいのだろう。別のいい方をすれば、人間、考える
ことが似通っている、ということであり、自然環境が似ていれば、似たようなところに到
達するということだろうか。
いずれにしろ、北海道南部・東北北部では、樹木は特殊な意味をもっている。そうい
っていい。ただし、円筒上層式がもつ装飾の一部であり、思想の主力でもないし、すべ
てでもない。木を祀るということでは、誰もが納得しただろうというだけである。
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